『東京、音楽、ロックンロール 完全版』 志村正彦 (ロッキングオン)
今日は中学生のスケート教室に帯同。場所は富士急コニファーフォレスト。つまり、昨年7月にフジフジ富士Qが行われたあの場所です。
あそこが実はスケートリンクだったということ、案外皆さん御存知ないのではないでしょうか。コニファーフォレスト SEIKO-OVAL…橋本聖子さんの偉業を記念して作られた競技用のリンクです。
富士急でスケートというと、ハイランド内のリンクの方を思い浮かべる方がほとんどでしょう。2009年の12月9日、フジファブリックの皆さんもハイランド内のスケートリンクでスケートを楽しんでいましたね。
その時のことも、この本の日記に書かれています。クスッと笑ってしまうような内容ですが、いかにも志村くんらしい「自覚の無さ」がステキです(笑)。
そして、もちろん、志村くんの原点であり、未来の夢の場所であるはずだったコニファーの方でも写真を撮っています。いったい彼はどんな気持ちでこの場に立ったのでしょう。
その翌日12月10日の日記を最後に、彼の夢は、この現世では叶わなくなってしまいました。
9日、久しぶりに地元富士吉田に帰ってきたのに、スケジュールの関係か、あるいは他のメンバーへの気づかいもあってか、彼は残念ながら実家には帰りませんでした。ただ、お正月には帰るという連絡はあったようで、そんな話をうかがっていた私は、こちらで彼と会う機会を作ってもらうべく、12月26日に御両親にお願いをしにいく予定でした。新設する中学校の校歌を、ぜひ彼に作ってもらいたかったのです。
訃報を聞いたのはその前日でした。
この本の元になった初版を紹介したのは、2009年の7月10日、彼の29歳の誕生日でした。こちらの記事です。あの時は、もちろんこんな日が来るとは思っていませんでしたから、私も無邪気に「20代より40代の方がずっと人生面白いですよ!マジで。自分の未来に期待していいですよ」なんて書いています。いや、あの時は、本気でそう彼に伝えたかったのです。それが、40代どころか30代さえも味わってもらえなくなってしまうなんて…。
私はこの本の「完全版」という言葉、正直好きではありません。いつまでも「不完全版」であってほしかった。「完全」って「完結」ってことなんでしょうか。この文字を見るたびに胸が苦しくなってしまいます。
もうすぐ発売される「全詩集」についてもそうですね。私はもっと彼の詩や歌に耳を傾けたかった。
もちろん、彼自身もあの瞬間まで、そんな「完結」を望んでいたはずもありませんし、逆に一つの転機を迎えて、新たなスタート地点に立っていたと思うのです。だからこそ、彼の無念さは、たとえば私たちファンの苦しみなどとは比較にならないほど苦しいものに違いありません。
しかし、現実は受け止めなければならない時が来ます。私たちも再スタートしなければなりません。
昨日の記事に書いたように、彼の魂の遺伝子はしっかり生きていますし、それを生かし成長させる魂の持ち主もちゃんといるわけです。そういう意味では、彼の命はやはり永遠なのだと思います。
私も頑張らねば。まだ辛いけれども。そして、私ができることを一所懸命やっていこう。
レミオロメンの藤巻くんは、母校が統合して新設される笛吹高校の校歌を作詞作曲したそうです。県内でも大きなニュースとして報道されていました。
もし、私の夢が実現していれば、ひと足早く新聞の記事になっていたかもしれません。ちょっと悔しいのも事実です。しかし、また違った方法で、私の夢や彼の遺志を実現していきたいとも思っています。彼の遺した名曲たちを、彼の生まれ育った、まさにその場所で生活している本校の中学生たちに歌い継いでいってもらいたい。既存の曲たちに、すでに私が表現してもらいたかった、地元への愛や、中学時代への思い入れや、人としての生きざまがたっぷり歌い込まれていますから。早く生徒たちが成長して、その日が来ることを心から願っています。
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コメント
恥ずかしながら
再発売してから初めて読んでいます。
音楽のことしか考えていないことなんて、前から分かっていたものの改めて本当に音楽人だったんだなぁと感じます。
月日が経つのがあまりにも早く、何だか夢をみてるようだなぁなんて思ってしまいますが前に進まなきゃなぁ~。
しんみりなコメントですいません(>_<)
投稿: なじゅ | 2011.02.05 02:06
こんにちは
僕も「完全版」と書いてあるのがとても嫌です…
それと帯に書いてある「全日記」っていうのも嫌です。
とても切なくなってしまいます。
あと、スケート場の写真ありがとうございます。
スケート場はあそこだったんですね。
ありがとうございます。
投稿: イシハル | 2011.02.05 09:21
こんばんは。
私も「完全版」というのは嫌です。
初版をもっていたのですが、それでもやはり買ってしまいました。
実は「FABBOOK」も、もちろん持っていますが、まだ全部読んでいません。
読んでしまうのが、もったいなくて…。
読んでしまうと、もう新しい記事は、情報はないんだと思うと、なかなか本を開くことができません…。
久々にまた先生のブログに泣かされてしまいましたが、いつまでもメソメソしてられませんね。
ただ、志村くんの作った校歌、聞きたかったです。
投稿: かえで | 2011.02.05 21:08
先生こんばんは。
木曜日、久々に吉田にうかがいました。
寒さの厳しかったことがお供えされていた花を見るとわかりましたが、木曜日は暖かでした。
富士浅間神社の豆まきにも参加でき、1月散々だったワタシは厄を落とせた、そんな感じです。
初めて伺いましたが総本宮とはまた違う荘厳さがありました。
本は初版を持っていたので完全版はいいかなあ・・・という感じでしたが、やはり予約してしまいました。
あの本、そしてROCKIN' ONの30000字インタビューはワタシにとって少々重い印象がありました。
ありのまま過ぎたというか。
興味深い内容には変わりないのですが、少なからず志村君に恋心(ダンナ、すまん)を抱いている人はちょっと切なくなってしまうところもあったと思います。
そして、音楽にとことんストイックに情熱を傾けた志村君の姿勢もこの本の中にありました。
良くも悪くも「全て」だった。
つくづく、惜しい、そんな想いです。
投稿: さお | 2011.02.06 00:05
先生、今晩和。
今日(正確には昨日ですが)、志村さんのお墓参りに行ってきました。
志村さんの名前を目にした時、何とも言えない感情が押し寄せてきて暫く立ちすくんでしまいました…。
本当に志村さんはあの場所に眠っているのですね。
供えられた沢山のコーラやコーヒー、お花…。
志村さんに会いに来ている人が沢山いらっしゃるんですね。
志村さんがいない事は、どんなに時間が過ぎようと悲しくて辛いですが、それでも会いに行けてよかったと思います。
志村さんは毎日あの場所から富士山を眺めてるんだなぁと思ったら、ちょっと羨ましくなりました。
それにしても日中の富士吉田は暖かくて、厚着していったら暑くて暑くて(笑)
忠霊塔に上ったら汗だくになりました。
明日熊本に帰るのですが、「夕方5時のチャイム」を撮り忘れてしまった事が唯一の心残りです。
でも雄大な富士山が見れて感動しました。
長文、失礼しました。
投稿: 青 | 2011.02.06 00:20
先生,こんにちは。
レミオロメンの『Your Song』,いい曲ですね。私は先日,テレビの音楽番組で初めて聴きました。いつもはレミオも普通に聴いていたのですが,その時はなぜか涙がこぼれて仕方がありませんでした。そういうことだったのですね。
私はフジファブリックの遅ればせファンなので,この初版本が全く手に入らず,やっとこちらの本で読むことができた次第です(時を同じくして初版本も手元にやって来ました)。 そうですね・・・「完全版」という響きはとても切ないですね。
先生をはじめ,志村くんのそばにいた方々や,ずっと以前からのファンの方々のことを思えば,私など比べものになりませんが,それでもとても悲しいし,さびしいです。その気持ちは隠しきれないのでそのままにして,大切なものを教えてくれた彼に感謝しながら進んで行こうと思います。
志村くん作詞、作曲の校歌が聴けなかったのはとても残念ですが,これから先生が彼の名曲たちを合唱曲にして下さるんですよね? 楽しみにしています。
投稿: 松原恵子 | 2011.02.06 14:23
こんばんは!
また遊びに伺いました。
志村さん、09 12/08のブログで書いていましたが、
私の地元、蒲田に来ていてすごく嬉しかったです。
大田区のとある図書館に「東京、音楽、ロックンロール」の初版本が
入っていて実家に戻った時に読んでます。
志村さんのおかげで実家に帰る楽しみが一つ増えました!
投稿: digger | 2011.02.06 19:19
彼を、観る機会も遭遇するチャンスも幾度かあったはずなのに尽く迂回してしまった自分に後悔しています。。
ご存知と思いますが、ここにもひとり(1バンド)彼との想いを抱え音楽に向き合ってるミュージシャンがおります。
http://staff-merenguereport.blogspot.com/2011/02/ep.html
次作を是非聴いて欲しくコメントさせていただきました。
富士吉田の土地話は志村君を想う時に欠かせないエッセンスです。
これからもちょいちょい覗かせて戴きます!
投稿: バウムクーヘン | 2011.02.09 07:51