フジファブリック 『Stockholm』
雪がようやく積もりまして、冬景色になったと思ったら、今日の夜から大雨の予報。やはり温暖化でしょうかね。本当にこの極寒地は住みやすくなりました。まったく温暖化万歳!であります(笑)。
しかし、こうして真っ白い街並みと「濃い白」をかぶった富士山を見ますと、なんとも特別な感情が湧いてくるものです。
痛いような、それこそ凍てついた空気や、人の歩みを妨げる雪が、人間的な温かさや活気をコーティングしてしまうからでしょうか。あるいは、人間の醜い部分や汚い部分をも覆い隠してくれるからでしょうか。どこかピュアな気持ちになるのも事実です。
フジファブリックの印象的なアルバム『CHRONICLE』は、北欧スウェーデンのストックホルムでレコーディングされました。
どのような理由があって、その地が選ばれたのか、詳しいことは分かりませんが、やはりこのアルバムにふさわしい場所であったと、今になると実感できます。
音楽家にとって演奏する「場」「土地」「空気」というのは、非常に重要なものです。録音においては、その意味はさらに大きくなるというのも事実でしょう。
このアルバムの独特の透明感に満ちた音は、間違いなくストックホルムの空気が作ったものであり、それは、ある意味ストレートすぎるほどの痛々しさに溢れた志村正彦くんの詩の世界と、絶妙にマッチしていたと言えるでしょう。
ストックホルムと富士吉田。実際に両者には深い部分での共通点があるように思えます。体は北欧にあっても、心は富士吉田に帰ってきていたのかもしれません。
彼の生まれ育った富士吉田の冬は、まさに彼の心の表面の部分を覆い、そして核心の部分をえぐり出すものだったのかもしれません。ここに住む者として、ここの冬の独特の厳しさと暗さ(実際には晴れて明るいのですが)と、不思議な純粋さについては、私も充分に理解しているつもりです。
ストックホルムで志村くんが作った、シンプルでピュアな詩と曲『Stockholm』。この曲を聴くたび、私は、ストックホルムの冬景色ではなく、ここ富士吉田の冬景色と空気と気持ちを追体験するのでした。
ニコ動に歌詞付きの動画がありましたので、どうぞ。
誰かが作った
雪だるまを見る
雪が積もる 街で今日も
君の事を想う
私はこの曲のタイトルを勝手に「Fujiyoshida」に変えさせてもらいます。あまりにすんなりこの風景に溶け込む詩と曲だからです。
そにれしてもですね、いちおう音楽や文学をやっている者として、このシンプルさは恐ろしくさえありますね。これをこのある種重厚なアルバムの最後に持ってくるあたりに、彼の究極の気持ち…それはたぶん「やりきれないほどの懐かしさ」であると思うのですが…を感じずにはいられません。
帰ってきたかったのかなあ…。
Amazon 志村正彦全詩集
| 固定リンク
「音楽」カテゴリの記事
- ラモー 『優雅なインドの国々より未開人の踊り』(2024.08.12)
- ロベルタ・マメーリ『ラウンドМ〜モンテヴェルディ・ミーツ・ジャズ』(2024.07.23)
- まなびの杜(富士河口湖町)(2024.07.21)
- リンダ・キャリエール 『リンダ・キャリエール』(2024.07.20)
- グラウプナーのシャコンヌニ長調(2024.07.19)
「心と体」カテゴリの記事
- 【戸塚宏】令和の今、体罰を語る(2024.08.20)
- 全日本プロレス祭 アリーナ立川立飛大会(2024.08.17)
- 模擬原爆パンプキン(2024.08.09)
- オリンピックは◯◯の◯◯である!?(2024.08.07)
- 柔道混合団体銀メダル(2024.08.03)
「旅行・地域」カテゴリの記事
- 九州人による爆笑九州談義(筑紫哲也、タモリ、武田鉄矢)(2024.08.18)
- 『もしも徳川家康が総理大臣になったら』 武内英樹 監督作品(2024.08.16)
- ラモー 『優雅なインドの国々より未開人の踊り』(2024.08.12)
- 『大鹿村騒動記』 阪本順治 監督作品(2024.08.11)
- 富士山と八ヶ岳のケンカ(2024.08.10)
「文学・言語」カテゴリの記事
- いかりや長介と立川談志の対話(2024.08.19)
- 九州人による爆笑九州談義(筑紫哲也、タモリ、武田鉄矢)(2024.08.18)
- 富士山と八ヶ岳のケンカ(2024.08.10)
- 上野三碑(こうずけさんぴ)(2024.08.06)
- 東北のネーミングセンス(2024.07.28)
コメント
クロニクルツア-は、意外に
この曲からスタ-トしてるんですよね。
DVD化してほしいなぁ~( ̄○ ̄;)
この曲を聴くたび、すごく気持ちが引き締まります。
投稿: なじゅ | 2011.02.18 14:44