『13歳へ〜よい親も、よい先生も、あなた次第』 アルボムッレ スマナサーラ (サンガ)
少し前にこちらでも紹介しました、初期仏教の長老であるアルボムッレ・スマナサーラ師が、兵庫県のある私立中学校で行なった講演の内容をもとに編集された本です。
私が中学生に言いたいことがたくさん書かれています。いや、大人こそが読むべき本ですね。人生全てに応用できます。
基本はサブタイトルにあるように、子どもが大人を育てなさいということです。そして、育てる方法は、「ほめる」こと、「感謝する」こと、「優しくする」こと、そして究極は「仲良くする」こと。
これは本当に私たち大人にとっても大切なことですね。特に「育てる」ことを仕事としている教師にとっては、常に意識していたいことです。
いやいや、それ以上にこの本から気づかされたのは、先生は「育てられる」職業だということです。「育てられる」というのは受身表現ですよ。育ててもらえる。
そう、13歳と言えば、いわゆる反抗期が始まる頃。自我に目覚め、社会に対して、大人に対して、権力に対して初めて違和感を抱く時期です。簡単に言えば、親や先生がうざったい存在になるということですね。
そんな時、単なる反抗をしたり、いがみあったりするのではなく、相手を教育してまえと。大人を「いい人」に向けて育ててしまえと。
なるほど、ということは、私なんかたくさんの子どもたちに日々育ててもらえるわけですよね。ラッキーなことです。
実際、今までの教師生活を復習してみますと、ほとんど生徒たちのおかげでなんとかやってきたという感じですね。本当にいろいろな生徒たちがいましたけれど、それはすなわち、いろいろな方法で私を育ててくれたということでしょう。ありがたいことです。
たしかに、相手をほめることは、究極の「方便」ですね。「方便」とは「利他の具体的方法」、すなわち「智慧」の実践方法のことです。そして、この世は「自他同然」「不二一如」ですから、結果としては「利他」は「利己」になる。「情けは人のためならず」ということですね。
私も、仏教に出会ってから、そう四半世紀くらいになりますけれど、それなりに頑張って、智慧と方便を身につけようとしてきました。もちろん、まだまだですけれど。
ただ、一つ、ワタクシ流の「方便」として、とても気に入っているのは、「自分にできないことを一つでもできる人は尊敬する」というものです。これを実践すると、結局、人や動物や植物や、物に至るまで全ての「他者」を尊敬することになって、とっても楽しい。
それがたとえ敵であっても、いや、敵であるということは、自分とはかなり違う思想とか技術とか歴史を持っているわけですからね、敵だからこそ尊敬できるとも言えます。
敵なんていうとおおげさですかね。たとえば、苦手な人、嫌いな人、腹立たしい人なんかで考えると分かりやすいかもしれません。ちょっと考えてみてください。
尊敬をすると、たくさんほめる部分があることに気づきます。そして、そんな相手が、実は大切なことを教えてくれたり、あるい敵対することによって私自身を確固たるものにしてくれたりすることに気づいて、感謝の気持ちもわいてきます。
なんだかんだ、そうしていると、結局「仲良く」なっていくわけですね。仏教が目指すところは、みんな仲良くです。そのための具体的な方法、すなわち「方便」をいろいろ考案してくれたのが、お釈迦様であり、その他の高僧たちです。
そう、仏教は、いちおう「教」と称されていますが、実際は宗教ではありません。ある意味哲学であり、ある意味科学です。
実際、この本でも、長老は「人と人との関わりにおいて、宗教はけっしていりません」と断言しています。逆に、「宗教は、人と人を別れさせるためにあるようなものです」と書いています。
まったくその通りですよね。仏教は戦争の原因になったことは一度もありませんが、他の宗教は…。
そう考えると、出口王仁三郎の「宗教がなくなる」ことを目指す基本姿勢は、仏教の影響を受けたものとも言えるかもしれませんね。「宗教をなくす」という究極の智慧を実現するために、宗教活動をするという究極の方便を実行したと。毒をもって毒を制す。なるほど。
話が少々それてしまいましたが、とにかく、私たちは相手の良いところを見て、いやいや、作り出してあげて、そうして尊敬し合い、ほめ合い、感謝し合い、やさしくし合い、仲良くしたいものですね。
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