坂本真綾 『うちゅうひこうしのうた』
昨日、フジファブリックの「まばたき」を紹介しながら、なぜか思い出されたのがこの曲です。
以前見せていただいた志村正彦くんのCDコレクションの中には、意外なアーティストの名前が散見されましたが、この坂本真綾さんの名前を見つけた時もまた、ちょっとびっくりというか、いや、なるほどというか、不思議な気持ちになりました。へえ〜、こういうのも聴いてたんだぁ。いや、なんとなく分かるような気もするぞ。
不思議な縁はあるもので、今月発売された坂本真綾さんのニューアルバム「You can't catch me」収録の「ミライ地図」に、山内総一郎くんがギタリストとして参加しているんですよね。
聞く話によると、実はマーヤもフジファブリックファンだったとか。つまり、実は両想いだったということでしょうか。志村くんも真綾さんも、学年は違えど同じ1980年生まれ。生まれ育ってきた時代を共有するという意味でも、共感できる世界観があったのかもしれませんね。
また、「まばたき」と、この「うちゅうひこうしのうた」、ちょっと不思議な音楽ということでは、共通するところがありますかね。そう、菅野よう子さんの楽曲って、ある種「人工的」なんですよね。昨日、山内くんの作曲作法として書いたのと同じ印象を受けます。「うまいな」という感じ。「職人だな」という感じ。志村くんの本能的な楽曲とはある意味で対極的な印象を与えます。
真綾さんの透明感があり、これもある種人工的な(声優さん的な?)声質、表現も、志村くんのボーカルとは対照的かもしれませんね。お互いに、そんな自分にない部分に惹かれ合っていたのかもしれません。
さて、この「うちゅうひこうしのうた」ですけれど、本当はこのブログを始めたころ、まだおススメの記事がとっても短かった頃(笑)、一度とりあげようと思いつつ、結局実現しなかったという因縁もあるんです。ごく私的な因縁ですけどね。それがこういうタイミングで思い出されたのは、また不思議な因縁を感じます。これもまたごく私的な因縁ですけれど。
この曲を初めて聴いたのは、2003年の年末の「みんなのうた」ででした。ああいい曲だな、いい声だなって思ったんです。それで、突然思い出して、私が久々にYouTubeで聴いていたら、カミさんが「あっ、この曲子どもの頃に聴いたことがある!」って言って歌い出しました。えっ?2003年から2004年にかけての曲だよ、と言ったら、「いや、子どもの頃に聴いた記憶がある」と言い張っていました(笑)。つまり、そういう不思議な曲なんでしょうね。子どもの頃の記憶につながるような。
この前の BUMP OF CHICKEN の「COSMONAUT」も、タイトルがまんま「宇宙飛行士」ですし、実際「宇宙飛行士への手紙」という曲も入っています。あれなんかも、まさに「少年の記憶」がベースとなったアルバムであり楽曲ですよね。
私もご多分にもれず宇宙飛行士を夢見た世代であります。しかし、この「うちゅうひこうしのうた」で驚いたのは、大人の女性の夢として「宇宙飛行士」が出てきているところですね。そして男は「農夫」。そのコントラストが絶妙。作詞の一倉宏さんもまた「うまい」。時代を読んだ言葉やイメージの選択。
一倉宏はあまりにも有名なコピーライターさんです。コピーライターの「選ぶ」言葉というのは、ある意味では商業的な感覚に支えられたものではありますが、これはこれでフィクショナルな詩的世界と言えなくもないですね。しかし、そこもまた、志村くんの詩とは対極的なのかもしれません。
私はこういう職人的な音楽もけっこう好きです。いわゆるクラシック音楽なんて全部そういう職人的、あるいはオタク的な音楽ですからね。「モノのね」ではなく「コトのね」ということですよ。音楽というのは、そういう両面のせめぎ合いがあるから魅力的なのであります。
昨日も書いたとおり、フジファブリックの楽曲の魅力は、そういう「モノ(もののけ)」的な要素と「コト(職人技術)」的な要素の絶妙なバランスの上に成り立っています。そこがビートルズに似た部分であり、また、ちょっと正直に言うと、奥田民生さんやELOとは違うところなんですよねえ。
と、この懐かしい曲を聴きながら、そんなことをいろいろと思ったのであります。さあて、坂本真綾さんのニューアルバムも聴いてみようかな。
Amazon You can't catch me
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コメント
こんばんは。
確かに奥田民生が作るものは奥田民生だ!という感じですね。でも好きです。
なんと言ってもユニコーンファンでしたから。
フジファブリックを知ったのも民生くんが、デビューしたての頃のフジファブリックを押していたからでした。
ユニコーンもメンバー全員が作詞作曲したり歌を歌ったり(これはちょっと…ですが)していて面白いですよ。
ただ、オフザケが過ぎてライブを見に行っているのか何なのか判らなくなることも…。
いつの間にか、フジファブリックの世界の方が好きになっていたわけで。志村くんも、ユニコーン復活劇を見れたわけですが、どう感じたんでしょうか?
私は、オッサンになってしまったけど、前よりかっこいい!と思いました。
フジファブリック、まだまだ若いし、これ位の年になったら…?と想いをはせるのでありましたが、いつの時代も未来は予測不可能なんですね。
投稿: かえで | 2011.01.26 18:40
はじめてコメント致します。
フジファブリックからこちらのブログに辿り着き、
毎日楽しく読ませていただいています。
蘊恥庵庵主さんは私や家族(夫)と好きなものが似ているなと
思う所があり、鳥肌がたつ事もしばしばあります(笑)
(一番の驚きは大田区つながりです!
私も実家が、大田区体育館の近くですので…)
これからも楽しみにしています!
投稿: digger | 2011.01.26 23:30
こんにちは*
とってもリンクする?んですが、ちょうど数日前に、知人の方にオススメ楽曲を録音したCDを送っていただいたのですが、それに坂本真綾さんの曲も1曲入っており、それを聴くか聴かないかのタイミングで、こちらの坂本さんの話題のブログを拝見したのでした。
ちなみに紹介してくれた方もフジが好きな方です。
偶然とか、傾向とか、不思議です。
わたしもちなみに松坂世代です。
あ、坂本真綾さんの曲、良かったです。 好き、と思いました♪
投稿: もんげ | 2011.01.28 01:25