萌え寺(松栄山了法寺)
コンサートの練習のあと、帰り道に寄ってみました。いちおう、弁財天さんは音楽や芸能の神様ですからね。成功祈願。
今やあまりにも有名になってしまった八王子の了法寺。国道20号線沿いに位置することもあって、迷うことなく到着。入り口の有名な「萌え看板」は、想像していたよりも小ぶりで、不思議と寺の風景になじんでいました。
時間が遅かったにもかかわらず、何人かの参拝客(いかにもな若者たち)が数名いました。しかし、境内は落ち着いた雰囲気で、なんとなく安心したというか…。
なにしろ、今朝このお寺さんのホームページを見て、聞いて、さすがにちょっと引き気味だったので…笑。
いえいえ、私、こういうの完全擁護派なんですよ。なにしろ、世間では「萌え研究家」と言われてますから(実生活ではそういう趣味皆無なので不本意なのですが…)。
Wikipediaの「萌え」項に引用されている、ワタクシの「萌え=をかし論」。つまり、これって、「萌え」が現代に新しく生まれた価値観・感覚ではなくて、平安時代、いやそれ以前からある日本人に根源的なものであるという説です。
そして、「萌え=をかし」の対照概念として「もののあはれ」を持ち出しているところからも分かるとおり、この説の背景に「仏教」を意識しているのも確かです。
ものすごく簡単に言いますと、お釈迦様が悟った「苦諦=もののあはれ(不如意・無常という真理の発見)」に対する、現実的な対抗策として、インドから遠く離れた日本では様々な具体的方法が考案されたということです。その具体策のある一面が、「萌え=をかし」の根底にある「時間を微分して疑似的な永遠性を得る」という方法でした。すなわちワタクシの言う「モノのコト化」です。御利益信仰。
念仏唱えたり、躍ったり、仏像作ったり、禅で形式にこだわったり、いろいろやってみたわけですね。まあ、我々凡夫は結局ブッダにはなれませんから。いろんなごまかしをやってきたとも言えますな。
了法寺さんは日蓮宗です。日蓮なんか、私に言わせると最も過激な「コト化」を行なった人物ですね。いわゆる「原理主義」「絶対主義」。これは実はお釈迦様の教えの対極にあるものです。それを「言葉」という「コト化」の道具を使って徹底した。それはそれで、日本の宗教史や思想史において、たしかにすごいことでした。
日蓮、ある意味、ホンモノ中のホンモノのオタクだったとも言えますね。そう考えると、了法寺の萌え路線は、実は大商人様…ではなくて(笑)大聖人様のお考えに適っているのですよ。
それから、日蓮宗の了法寺さんに弁財天やお稲荷さんがあるのは、ちょっと変な気がしませんか。日蓮と言えば他宗を厳しく攻撃したことで有名ですよね。「真言亡国、禅天魔、念仏無間、律国賊」とか言って。
いや、実は日蓮は神道に関しては寛容だった、いやいや、寛容どころか伊勢参りもちゃんとしてるし、第一、富士山に対する信仰もあったんですよ。案外みんな忘れているところなんですが、実はそういう「日本」に対する愛情がとても深い方だったんです。だから、了法寺の神仏習合も「国風文化」たる「萌え」もOK(笑)。
また、了法寺さんが、ある種「煩悩」の象徴のような女性に対する「萌え」を布教活動に使っていること、これもまた一部の人には非難の対象になりかねません。しかし、日蓮は女性に対して特別な愛情…それは「萌え」だったのかも!?…を抱いていた方でした。法華経の中にある「女人成仏」の発想は、日蓮の女性観に大きな影響を与えています。日蓮は男女平等を説いたと言われますが、実際には日本最初のフェミニストだったかもしれないのです。女性にたくさん手紙書いてますしね。だから、了法寺の萌えはOK。
それにしても、昨年奉納されたという「とろ弁天像」、これはまさに仏像の本来の姿ですね。「仏像萌え」っていう言葉がありますけど、考えてみるとそれは反対でして、「萌え=をかし…現世的御利益信仰」の対象としてのフィギュア、イコン、アイドルが仏像なわけですよ。そこんとこ、勘違いしている日本人が多いと思います。仏像に限らず神社仏閣全体に、本来異様にきらびやかな原色的世界でしたから。わびさびじゃないんですよ、もともと。
昨年発表されたテーマソング「寺ズッキュン!愛の了法寺!」も、まあ踊り念仏の進化形だと思えば、全く自然であると言えましょう(笑)。「テラ」ズッキュン!
と、とにかく、私はこの「萌え寺」さんの活動を応援したいと思うのですよ。なぜなら、「萌え=をかし」を追求する現代の貴族、国風文化の継承者たる「オタク」の皆さんこそ、実は仏法に目覚める可能性があるからです。「コトを極めてモノに至る」…これが私の研究の一つの答えなのですから。
そしてそして、こういう、「宗教」を超えた「文化的」な信仰の形と言えば、出口王仁三郎ですよねえ。私はこういう「こだわった結果こだわりがなくなる」世界、大好きです!
今度はなにかイベントがある時に、ゆっくり訪ねてみようと思います。できれば、ご住職様とまじめなお話をしたいですね。
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コメント
初めまして、お邪魔致します。同業者もどきであり、奥様の関係の者(?)でございます。
了法寺さんには、私もつい先日お邪魔したばかりです。住職さんは来客中でお会いできませんでしたが、ボランティアでガイドをしているという男性に案内をして頂きました(お寺や日蓮宗の関係者ではなく、アニメファンとして関わるようになる中で、住職さんの話や仏教の話などに触れ、一層関わるようになった方とのこと)。「萌え寺」として面白おかしく取り上げられることも多いですが、ある意味こういった形もアリではないかな、と感じたところです。
投稿: スイミー | 2011.01.31 17:38