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2010.12.01

『「普通がいい」という病』 泉谷閑示 (講談社現代新書)

「自分を取りもどす」10講
M_untitled1 晴らしい本。必読。ここ数年で読んだ本の中では間違いなくベスト3に入ります。
 全ての人に読んでいただきたいですね。医療、教育、福祉関係のお仕事をしている方にはもちろん、親としても大変有益ですし、なんといっても、今、この「不自然」な現代社会の中で、「違和感」を抱きながら何かと日々闘っている、つまり生きにくさに苦しんでいる人たち(実はほとんど全ての現代人がそれに当てはまるでしょう)に読んでいただきたい。
 そして、みんなで、本当の自分のあり方と、正しい世の中のあり方について、しっかり考え、そして手を取り合って、あきらめずに、自分を他者を世界を変えていきたいものです。
 ちょうどおとといディスレクシア(失読症)について書きましたね。いったい、何が「普通」で何が「正常」なのか。私たちが「普通」とか「正常」とか「健全」とか言っているもの、「異常」とか「〜症」とか「心の病」とか言っているものって、本当は…。
 細かい内容の紹介や一般的な評価については、ぜひ Amazon のレビューをご覧下さい。実際非常に評価が高く、またたしかにたくさんの方に読まれたようですね。
 ここでは、私は私なりの紹介のしかたをしたいと思います。かなり個人的な内容ですが。
 この本には、私が教師をやりながら、日々現実と格闘する生徒たちと共に学んできたこと、独自の日本語論、日本文化論である「モノ・コト論」を通じて考えてきたこと、出口王仁三郎の語る日本古来の「一霊四魂」や「霊主体従」、あるいは幽閉された「艮の金神」の復権などを通じて考えてきたこと、禅を通じて体感してきた「不二」「無我」「空」「他力」、音楽を通じて学び考えてきた世界観など、いろいろなものが全て見事に凝縮され、わかりやすく解説されていたように感じました。
 特に、ワタクシ流に言う「コト(脳で処理された世界)よりもモノ(脳で処理される以前の世界)」、「コトを窮めてモノに至る」という茫漠とした世界観、時代観が、ものすごく鮮明に(もちろん私とは全く違う表現ですが)描かれていたことに驚きました。
 ですから、勉強になったという感動よりも、「共感」「共鳴」「共振」の感動が大きかったのです。そして、泉谷さんの「智慧」、「徳」のようなものに感心させられました。
 私がワケも分からず、あるいは分かってもらおうともせずに、このブログに書き散らしてきたことが、こうして一般性、普遍性をもって示されるとは…悔しいよりも、とてもうれしいのです。
 平易簡明にして至り尽くした文体、見えないモノを見せる様々な図、そして豊かで的確な引用。本というのは、いやプレゼンテーション全ては、こうあるべきでしょうね。
 そう、この方はただ頭がいいだけではない。もちろん、この難しいこと、目に見えにくいことを、これだけわかりやすく語ることができるのは、彼の優れた認識力と表現力、豊かな学識と経験がベースとなっていることでしょう。
 しかし、それにとどまらず、人と人の心や魂と接する仕事をする者としての、本質的な魂のあり方、志の持ち方、そういうものが、そこに加わっていることが、この本の魅力を倍増させているのです。
 さてさて、ここで意外の事実を書きましょう。私がこの本と出会うきっかけとなったことです。全くいろいろ不思議なことが起きます。
 実は、私が泉谷さんに興味を持ったのは、ある音楽がきっかけだったのです。その曲を聴いた時、この作曲者(泉谷さん)はタダモノではない!と直感したのです。
 その曲とは、なんと「横手市民歌」です。秋田県の横手市が市町村合併で大きくなり、新横手市になったのを記念して、新しい「市民歌」を作ることになりました。その歌詞は公募されまして、応募総数230点の中から選ばれたのが、なんと、私のカミさんのお父さんの「詩」だったのです。
 義父は長くお隣の羽後町で暮らしていましたが、いろいろな事情から、数年前に新横手市に含まれた十文字町に引っ越しました。そこで、豊かな自然や産業、そして当地の温かい人たちに囲まれる中で、横手の四季を読み込んだ詩を作って応募したというわけです。それが見事最優秀になったと。これはこれですごいことです。
 そして、その詩に曲を付けたのが、十文字出身で、現在東京で精神科医として御活躍の泉谷閑示さんだったのです。
 いちおう音楽をずっとやってきた私としては、義父の詩にどんなメロディーが乗せられるのか、非常に興味がありました。そして出来上がった曲のCDを電話口で聴かせてもらった時、「おお!これはいい曲だ!」と思ったのです。ある意味、期待を裏切る、期待以上の、想定以上の音楽でした。
 その後秋田の両親がCDを送ってくれまして、またじっくり聴いてみましたが、やはりなかなか素晴らしい。いったいどんな経歴の持ち主なのだろう、音楽をどのように勉強した方だろうと思い、調べてみると…。
 そして、この本との出会いに至ったわけです。これはもう運命ですね。そうなるべくして、そうなったとしか思えません。このタイミングで、この本に出会えたのは、奇跡ではなく、運命、必然です。
 自分自身の自分なりの成熟度からしても、このタイミングしかなかったと思います。本当に不思議ですし、なんといっても、素晴らしい詩を書いてくれた義父に感謝したいと思います。
 ちなみに泉谷さんは、精神科医としての仕事を投げ打って、フランスの音楽院に留学した経歴をお持ちでした。この本を読んで、彼が単なる精神科医でも単なる音楽家でもない、とても聡明で豊かて「人」であることが確認できました。
 きっと、私は彼の音楽の中に、それを直感的に聴き取ったのでしょう。きっと、私の中の「本当の自分」が、泉谷さんの「本当の自分」とつながったのでしょうね。それがまた音楽の魅力でもあるわけです。
 私は間違っていなかったのだ…本の方からも、私の中の「本当の自分」は勇気づけられました。とにかく一読をおススメします。もう私がなにをか言わんや。いつかご本人にお会いしてお話してみたいものです。ちなみに義父らは、記念式典でお会いしたとのことです。

Amazon 「普通がいい」という病

楽天ブックス 「普通がいい」という病

横手市民歌のページ

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コメント

前略   薀恥庵御亭主  様

素晴らしい「御縁」ですね。

御亭主様の常日頃の御精進の
賜物です。

愚僧は「仏教」の知識は・・・
素人様以下です。笑

しかし もっとも大切な事は
「頭」(知識)では無く
「情」(感情)であります。

「花」や「小鳥のさえずり」に
こころ豊かになること。

「ひとが笑顔」になることへの
喜び。

愚僧も・・・
この御話を読んで「笑顔」に
なりました。
有り難う御座いました。

合唱おじさん       拝 

投稿: 合唱おじさん | 2010.12.02 18:19

初めまして。私も泉谷先生のファンの一人で、偶然こちらを拝見しました。私もブログの内容に全く同感です。このように思われている方が他にもいらっしゃると知りとても嬉しく思います。そこでお節介だとは思いましたが、来週東京で開かれる泉谷先生のトークセミナーをご紹介しようと思います。http://www.maruzen.co.jp/Blog/Blog/maruzen02/P/11622.aspx
もうご存知でしたらすみませんが、普段は診療でご多忙の先生のお話をクリニック外で聞ける貴重な機会だと思います。こんな機会は私も初めてですので、ご興味あられたら是非いらしてはいかがでしょうか。用件のみですが、季節柄ご自愛下さい。

投稿: 通りがかりの者ですが | 2010.12.03 10:17

こんばんは。
「縁」って本当に不思議で素敵なものですね・・・。

「横手市民歌」聴いてみたいです。
先生と先生の周りは色々な才能が
溢れていらっしゃるなあと
感じました。

そしてこちらの本 とても興味あります。
時間かかっても読みきりたいです。
私も自分で「病」だなと思ってましたけど(笑)
私の口癖なんです・・・。

でもわが子が「超個性的」と評価される事に
どこかで喜びを感じてしまう部分もあったりします。

やっぱり読んでみるしかないな と思いました。


投稿: さつき | 2010.12.04 00:52

合唱おじさん様、こちらこそありがたいお話ありがとうございます。
泉谷さんもおっしゃられていますが、人は自然という大地に根ざしてなんぼのものなんですよね。
私も自分の中の「自然」を大切にしたいと思います。


通りがかりのものですが様、貴重な情報ありがとうございます。
そして、「心」の共有をありがとうございます。
今回はうかがえるか微妙ですが、機会がありましたら、ぜひ一度泉谷先生にもお会いしてみたいものです。
ぜひよろしくお伝えくださいませ。


さつきさん、こんにちは。
ぜひこちらの本、読んでみてください。
生きることへの、そして「個性的」であることへの自信が湧いてきます。
そうそう、横手市民歌、リンク先で聴けませんよね。
1枚100円でCDを発売しているようですので、問い合わせてみてください。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.12.04 13:00

先生,素晴らしい本をご紹介いただき,ありがとうございました。
読み終わって,私の心の中はすっきりと晴れ渡っています。

私も幼い頃からずっと『本当の自分』を失っていたひとりです。
主人のおかげで少しずつ取り戻してきたのですが,長い年月,固く閉ざした扉はなかなか開ききってはくれませんでした。せっかく開きかけたのに,また自分で閉じてしまっていたのですね。ようやく気づきました。

この本を読んでいる間ずっと,頭の中でフジファブリックの『TAIFU』が回っていました。

  感情の赴いたままに どうなってしまってもいいさ
  飛び出せ レディーゴーで 踊ろうぜ だまらっしゃい

志村くんはインタビューで,「歌詞のことは何も考えてなくて,音みたいな感じで。内容とタイトルも何も通じてないし。」と言っていました。そうであれば,彼は本能でこんなにも深い歌詞を書いたことになります。 やはり天才ですね。

私は志村くんに,人間が本来持っている『弱さ』から逃げず,真正面から向き合い続ける『強さ』を教えてもらいました。そして,彼によって山口先生のところへ導かれ,さらに泉谷先生の本に出会うことができ,ようやく『本当の自分』として歩き出すことができそうです。

 『あるがままに』『我がままに』『感情の赴くままに・・・』

本当にいくら『ありがとう』を言っても足りません・・・。

投稿: 松原恵子 | 2010.12.07 14:00

松原さん、こちらこそありがとうございます。
こうしていろいろな人と人がつながって奇跡が起きることだけでも、生きている幸せだと思います。
私自身もこうして発信しつづけることで、「本当の自分」を探しているのかもしれません。
いや、結局皆さんのお力を借りたいのかもしれません。
他力ですね。
本当の自分は、実は自分の外にあるのかも…とりあえず、頭の外、つまり自然(外界)とつながっているところにあるのでしょう。
私もこの本から、たくさんの智慧を得ることができました。
多くの皆さんに読んでいただきたいですね。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.12.08 10:00

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