かぶきもの
海老蔵、海老蔵、まあ世の中ヒマなんですね。毎日毎日海老蔵の話題ばかり。犯人というか相手が逮捕されましたが、それをニュース速報でやる必要あるんでしょうかね。
学校では私が海老蔵です(笑)。髪形が似ています。最近寒いのでニット帽かぶってるし。そして、今なんだか左目が充血しているので、ますます海老蔵してます(笑)。
そうそう、こう言ったら生徒たち爆笑してましたね。「おい、海老蔵ってさあ、海老蔵だから海老蔵で許されるんだよな。もし、オレが海老蔵っていう名前だったら、お前ら笑うだろ、『エビゾーだって〜ww』って」。
ま、それはいいとして、なんですか、あの会見は。あれじゃあ「かぶきもの」として失格ですよ。「かぶく」という日本語にはもともと「稲穂が頭を垂れる」という意味がありました。あれじゃあ、まさに「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という感じで、まるで人格者、常識人じゃないですか。
謝るなら、「全て私が悪い!相手にはなんの非もない」と言うべきでした。それで相手に「いや、海老蔵はウソを言っている。私も手を出した」と言わせなければ。
「歌舞伎」は「傾き」ですからね。本来「歌舞伎役者」は「傾奇者」なんですよ。かぶいてなんぼ。本来「かぶきもの」は戦国時代から江戸時代初期に現れた乱暴な無法者のことですから。
江戸時代近くなると「かぶく」という言葉は、「かたむく」というイメージから、世間に対して「斜に構える」「ひねくれる」という意味を持つようになっていきました。そうした「傾奇者」たちが、のちの「ヤクザ」につながっていくわけですが、それが大衆文化の中で芸能化したのが、いわゆる「歌舞伎」ということになります。
つまり「歌舞伎役者」はルーツをたどれば無頼の輩であるのは当然であり、そこに刃傷沙汰はつきものだったのです。基本彼らは江戸時代を通じて被差別民だったわけですし、反社会的、反体制的になるのは当然と言えば当然ですね。
だいいち、初代市川團十郎(すなわち初代海老蔵…現山梨県市川三郷町の出身なんですよね)なんか、45歳の時に弟子に刺殺されています。殴られてほお骨が陥没するなんてレベルじゃありません。
それを泣いて詫びるなんて、情けない。もちろんこれは、大衆芸能を、国を代表する高尚な伝統文化に仕立て上げてしまった国というか、世間も悪いですよ。そして、こうして凡人みんなで強者をバッシングする、気味の悪い「偽善社会」はもっと悪い。虫酸が走ります。
リオン…じゃなくて梨園では「遊びも芸の肥やし」です。これから彼がマジで人間国宝を目指すならば、もっともっとかぶかねばなりません。行儀のいい「歌舞伎」なんてのは、もともと存在しえないのです。
…と、同じ海老蔵仲間として(?)、ホンモノの海老蔵さんを少し擁護しておきます(笑)。
ま、それより、こっちの方が本来の「カブキ」の伝統を継いでいるような気がしますね。これこそ「傾奇者」です!海老蔵よ、これを見習え!
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コメント
前略 薀恥庵御亭主 様
御亭主様の御意見に賛同です。
愚僧の尊敬する歌舞伎関連の
名優方は・・・
◎二代目中村雁治郎様
◎八代目市川雷蔵 様
◎二代目杵屋勝丸 様
(勝 新太郎)
◎中村錦之助 様
(萬屋錦之助)
皆様 幅広く活躍なさって
おられます。
愚僧が「尊敬」するのは・・・
その「御人柄」そのものです。
合唱おじさん 拝
投稿: 合唱おじさん | 2010.12.11 13:09
合唱おじさん様、いつもありがとうございます。
たしかに皆さん、いろいろな芸をお持ちでしたね。
ある意味狭い世界ですから、そこに落ち着いていてはいけません。
ハメをはずすくらいがちょうどいいのでしょう。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.12.17 18:45