太宰治短編小説集(iPhone・iPadアプリ)
「太宰治短編小説集 走れメロス」が映文連アワード2010準グランプリを受賞しました…とのニュースを見て、ああそうだ、「走れメロス」まだ観てなかったと思い出しまして、さっそくこのアプリを購入。
いやあ、良かった!素晴らしい。このシリーズ全て傑作ですね。今までこのブログでも5作品を紹介してきました。
女生徒
トカトントン
駆込み訴え
カチカチ山
グッド・バイ
そして、やっと観ることができた、第1シリーズ3作。再放送も全部見逃してきたので、このアプリは助かりましたね。
ただ、あまりに細切れなので、なかなか集中できません。まあストリーミングですから、いろいろと制約があるのは分かりますけれど、それにしてもちょっと細切れすぎでは。
それでもそれぞれの良さは充分に感じることができました。やはり、「走れメロス」が出色でしょうかね。森山未來くん、田中泯さん、モロ師岡さん、純さん、それぞれを活かし切った渋江修平監督のセンスと力量は驚嘆に値しますね。伝統をも凌駕する現代的才能とでも言いましょうか。こちらの批評心も、もうお手上げという感じですよ。
とにかくご覧になっていただきたいですね、これは。もちろん、ほかの作品も。
第1シリーズの他の2作品も、普通にお見事でした。しかし、まあ、やはりそれは原作の魅力による部分が大きかったと思いますよ。その点、「渋江メロス」は原作と伍する才能によってスパークしたという印象です。
ほら、私、太宰と仲いいじゃないですか(笑)。で、「走れメロス」についても、彼からナイショでこんなこと教えてもらっていたわけですよ。だから、そういう視点で、今回のメロスも観ていたんです。で、それについてもですね、渋江さんの実に「ウソ臭い」演出が功を奏していまして、違和感なく観ることができたのです。なるほど、太宰からは「文学の力」「小説の力」と聞いたけれども、こうして現代的に表現されてみますと、「芸術の力」「アートの力」「(広義の)モノガタリの力」とも言えそうですね。
私たちは常にそうしたフィクションによる予定調和や、逆に未定不調和を欲しているんですね。それがないと生きられない。現実の調和や不調和の方ばかりでは、私たちは疲れ切ってしまうのです。
「モノ」を「カタル」とは、ワタクシ流に言えば、「自然」を「脳で処理する」ということそのものを表します。人間が自然を再構成して、一瞬でもこの世を自分(たち)のものにしたという幻想を抱きたいのです。
だから、私たちは小説を読み、マンガを読み、アニメをや映画やドラマを見て、そして音楽を聴き、絵を鑑賞したり、茶の湯をたしなんだりするのでしょう。
モノたる自然世界に対して挑戦状を叩きつけ、別個の一世界、一宇宙、コト世界を創り上げることができるのは、実は人間だけなのでした。もちろんそれが度を過ぎると、モノからの逆襲を受けてしまうわけですが。その時、私たちが感じるのが「もののあはれ」なのです。
太宰はやはり、天才的な「語り部」でありました。ここまで堂々と「嘘」をつける人間はなかなかいません。ただし、その「ウソ」が彼自身の「マコト」から生まれていたというのが、彼の作品の力につながっているのです。
「ウソ」は脳内で創造される「コト世界」です。しかし、彼自身の人生、生きざま、命というものは、実は他律的な「モノ世界」です。つまり「真コト」の究極は「モノ」であるという、ま、お釈迦様がおっしゃったことがそこにあるんですよねえ。難しいですかね。
もちろん、それは太宰に限らず、歴史に残る全ての芸術家においても。あるいは、私たち凡人においても。
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