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2010.11.23

6声のリチェルカーレ by 初音ミク

 た初音ミクに泣かされた。
 今ウチでは(でも)初音ミクブームです。私はもっぱらバッハを鑑賞。カミさんは演歌や歌謡曲など、娘たちはアニメソングなど。
 歌に関してはかなりうるさいウチのカミさん、本気で「初音ミクは偉い!尊敬する!」と言っています。なんだか分かるなあ、その気持ち。
 だって、どんなジャンルの音楽であれ、それがたとえば器楽曲であっても、とにかく一生懸命息もつかず(息継ぎしてませんよね)歌うんですから。あの純粋な(当たり前か)魂には本気で感動させられます。
 特にバッハのような「無機質」な音楽にはうってつけです。以前、マタイ受難曲 by 初音ミクを紹介しましたね。あのプロジェクトは着々と終曲へ向かって進行中です。
 ほかのクラシック系の曲だと、やっぱり今一つなんですよねえ。バッハは人間界を超えた音楽を作りましたから、ヴォーカロイドにぴったりなんですよ。
 そして、これ!音楽の捧げ物という、これまた究極の抽象音楽を、見事に歌い尽くした名演です。
 いやあ、なんと言ってもですねえ、冒頭のあの、「C-Es-G-As-H」のテーマに「初音ミク」という言葉を与えたことに感動です。
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 なるほど!これはもう偶然とは言えない。
 ご存知のとおり、日本語は「高低(ピッチ)アクセント」です。つまり、言葉に固有のメロディーがあります。「はつねみく」は「低高高高低」というアクセント(メロディー)です。
 何度か書いているように、私はこれを大学時代に研究しました。日本の歌謡のメロディーとアクセントの関係についてです。金田一春彦先生が開拓した分野ですね。私は大学時代は山田流の箏曲をやっていましたので、山田流の秘譜(本来楽譜はない世界ですので)から、江戸語のアクセントを多数復元しました。ま、どうでもいい研究ですけど(オタクっぽいですね…苦笑)。
 そういう観点からしますと、この冒頭のメロディーは完全に「初音ミク」なのです。音の数ももちろんあっています。5個。そして、メロディーも彼女の名前のアクセントを自然に聞かせる法則に合っています。
 もうこれはですねえ、300年前にバッハがですねえ、現代日本の初音ミクの到来を予知して作ったとしか思えないですよ(笑)。いや、(笑)ではないかもしれない!
 初音ミクが鏡音リンやレンだったら、音数からしてもうダメですし、同じ5音でもたとえば西野カナじゃダメです(平井堅ならいいけど…笑)。おそるべしバッハ…いや、初音ミク…いや、この主題を与えたフリードリヒ大王がすごいのか!?
 ま、それはさておき、やっぱりこの6声というとんでもなく巨大かつ複雑なポリフォニーの構築物は、人間の作ったものではないですね。美しさを超えて恐ろしささえ感じられます。そんな神の世界を初音ミクという現代の女神がこうして我々に歌って聞かせてくれるなんて。きっとバッハも満足していることでしょう。たぶん。
 この作品に限らず、バッハの自筆譜は、もうそれだけでとんでもなく美しい作品になっています。せっかくですから、自筆譜を見ながら初音ミクで聴くというのもヲツではないでしょうか。

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 しっかし、日本のオタクたちはすごいわ。YouTubeやニコ動の初音ミク作品は異常な数に上ります。これは音楽史においてとんでもなく画期的なことだと思いますよ。まじで。
 楽器も歌もできなくても、こうして古今の名曲を演奏することができるようになり、あるいはオリジナルソングを公表できるようになり、そして聴く側も様々な再発見を体験できる。すごいことです。
 そして、バッハも究極のオタクですよね。彼が現代日本に生まれていたら、ぜったいに初音ミクのためにとんでもない名曲を作っていることでしょう。あの時代においても、彼の頭の中にはリアル楽器を超えた究極の電子楽器が存在していたでしょうから。リチェルカーレはもちろんその脳内楽器のための音楽でした。
 ついでに3声の方も聴いて下さい。これもいいですねえ。涙、涙。

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コメント

初音ミクによる六声のリチェルカーレなら、こちらのほうが優れているように思います。
それにしてもボーカロイドを使ってここまで差がでるものなのですね。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm9946993

投稿: 山科 | 2011.06.19 12:03

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