『幕末外交と開国』 加藤祐三 (ちくま新書)
昨日親善音楽会が行なわれた小学校で、今日は地域の教育フォーラムがあり私も参加しました。
幼稚園から大学まで、あらゆる教育機関が集まり互いの連携について研修を行なうというものです。何年か前に私も発表をした覚えがあります。何しゃべったんだっけなあ?
こういう機会は非常にいいものだと思います。私が参加した分科会は「連携の中で子どもたちを取り巻く情報環境を考える」というテーマでした。いろいろ勉強になりましたし、せっかくですから私もた〜くさん発言させていただきました。
さてさて、そんなフォーラムでしたが、オープニングの全体会で何人かの来賓の言葉がありました。その中で印象に残ったのが、この本の著者である加藤祐三さんの言葉でした。加藤さんは私の出身校でもある都留文科大学の現学長さんです。いろいろ大学の中でごたごたがあったのち、今年度から学長になられました。大変だと思います。私は8月の国文科50周年の時に初めてお会いしてお話させていただきました。
今日の挨拶の中でポイントとなったのは次の三つの言葉。ご自身に対する問いかけでもあるとのこと。
・足腰使え
・月一古典
・世界を見据え、持ち場で動かん
ふむふむ、なかなか分かりやすいし、現代に欠ける重要な点をついていますね。私もこれらをスローガンにしたいくらいです。
運動してないしなあ。自然の中に出て行くことも少ないし。心も枯れちゃいますよね。
「古典」というのは、別に文学などの古典作品だけを指すのではないとのこと。ちょっとした季節の変化に気づき感動したり、そういう「古典的な心」を持とうということだと理解しました。毎日ではないところがいいですね(笑)。
世界と持ち場ってとても大切な視点だと思います。有機的に結びついたグローバルとローカルですよ。どちらも大切です。いろいろな焦点距離を持つことは、私の目標でもあります。そして、自らの持ち場(天命)を全うすることで、その集積として全体が良くなるというのも真理だと思います。自分と世界がイコールで結ばれる、ローカルとグローバルが同義になる、禅的な境地がそこにあります。
私、ずいぶん前から、加藤さんに興味を持っていたんですよね。そう、以前この本を図書室で読んで、とっても感動したからです。感動というか、目からウロコが落ちたというか、心の中で燃えてきたというか(笑)。その時は、まさか母校の学長さんになられるとは夢にも思いませんでしたけど。
この本ではですね、いわゆる「開国」が、ペリーらの黒船来航による強制的、受動的なものではなく、案外に優れた外交政策の結果だったということが実証的に語られていました。
教科書で習う「開国」は、なんとなくカッコいいものではなかったと思います。しかし、この本を読んだら、それこそ「燃える」ほどカッコいいと感じたのです。
もちろん、一般的な印象に近い側面もあったと思いますが、とりあえず当時の日本は単なる腑抜けではなかったということがよく分かるのです。そしてその内容は、現代の外交、特に日米外交に対して、大きなヒントを与えてくれるのです。
やっぱり「志」「信念」「矜恃」のようなものがないとダメですね、何事にも。最近の民主党外交は特に情けなく感じられますよ。
今、幕末ブームですが、当時は幕府も親幕府派も反幕府勢力も命懸けで「志」「信念」「矜恃」を保とうとしたんですよね。
おそらく、そこで必要だったのは、加藤さんのおっしゃった三つの「行動」であったのだと思います。今こそそれを実践すべき時かもしれませんね。
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