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2010.09.13

富士山メロディ・ポイント

 光客にとってはいい思い出になるでしょうけど、これを毎日聞かされる私は正直辛い(笑)。
 ご存知の方もいらっしゃると思いますが、富士山のスバルラインの料金所前の区間に、文部省唱歌「ふじの山」のメロディーが流れるところがあります。
 道路に絶妙な溝を施した舗装がしてあり、タイヤに伝わる振動というか共鳴が音楽として車内に響くというしくみです。
 一般の方は当然、まずは富士山への上り車線を行きますよね。そして、帰りに下り車線。ですから、富士山を行って帰って全曲聴くということになります。基本1回だけね。
 しかし!私はですね、富士山に住んでいて麓の街に通勤していますから、まずは下り車線を行くわけですよ。つまり、唱歌の後半「か〜みなりさ〜ま〜を…」から聴くことになる。
 さらに帰りはある交差点の混雑を避けるために、基本的に違う道を走りますので、結局前半は聴かずじまいになるわけです。
 へえ、そうなんだあ…とお思いの方、実はこれが案外辛いんですよ。もともと「ふじの山」なんて毎日朝から聴きたいとはあんまり思わないじゃないですか。それもいきなり後半というのが、どうにもいかんのですね。音楽的にも属和音から始まるというのがどうにも落ち着かない。妙な不完全燃焼感もありますね。
 ですから、ナイショですが、対向車がない時は右側の車線を走って「危険物」を避けます(前半と後半はそれぞれ違うところにあります。同じところにあるとたしかに音が交錯しちゃいますね)。いやあ、まじで精神にあまりよくないですよ。安全のための回避措置ですから、法律上も問題ないでしょう。
 そうそう、「天の歌」が聞こえてきた時にも、書いたじゃないですか。これって私のような人間にしてみると結構暴力的なんですよ。
 対向車がある時はしかたない、車線の左側ギリギリを走って、片輪はその特殊舗装の部分からはずして、音量を小さくします。そう、両輪の時より、たぶん共鳴が減るんでしょう、半分以下の音量になっている感じがします。
 ところで、これって非常にアナログな構造物ですので、まあ考えようによっちゃ実に懐かしい遊びもできるんですよね。基本、溝のデコボコの振動を増幅しているわけですから、アナログ・レコードと同じしくみじゃないですか。
 つまり、走行スピードがレコードの回転スピードにあたるので、それを変化させると発生音のピッチも変わるわけです。早く走れば、レコードやテープの早回しのように、テンポと音程が上がるわけです。
 いちおう、案内標識には「50キロで走行するとメロディーが鳴ります」的なこと書いてあるんですが、それは制限速度を守らせようとする、ある意味ウソでして、基本何キロで走っても鳴ります。正直50キロだと遅すぎる感じですね。
 当然、メロディーの途中でスピードを上げればピッチとテンポも上がり、スピードを下げれば、あの感じ、アナログ・レコード時代にはよく聴いた「脱力感」を味わうことができます。
 逆に言えば、あの上りや下りで一定のスピードを保つのが、案外難しいのですよね。上の動画も多少揺れがありますでしょ。

 私なんか、もうベテラン中のベテランですから、たとえばこの動画の「ふじの山」を聴いて、ああ「○長調」だから「○キロ」出してるなって分かっちゃいます(笑)。制限速度は守りましょう。
 あと、アナログ・レコードと言えば、やっぱり逆回転ってやつをやりたいじゃないですか。もちろん、それもできますよ。というかやりましたよ。バックしてもいいし、右側通行してもいい(ってめっちゃ危険じゃん…笑)。
 それからですね、この特殊舗装の工事、昨年の夏前にやってたんですけど、あれって、ある音から順に施工していくんですよ。たとえば最初は「ソ」の音だけとか。だから、最初はとびとびに「ソ」の音がするところから始まったんです。で、次に「ミ」とかね。
 「音の鳴る道路の工事をしています」と書いてあったから、何かメロディーが完成するのだろうとは思っていましたが、なにしろ最初のうちは何の曲か全然わからない。その頃は毎日通るのが楽しみでしたよ。クイズみたいなもので。後半で言えば、最初の「レ」なんかを早いうちに施工してくれれば、すぐに分かったんですけどね、実際はそういうわけではありませんでした。
 けっこう難しいクイズでしたよ。たぶん、4音くらい完成したところで、わかったんじゃないでしょうか。それを味わえたのは地元ならではでしょう。
 で、私、思うんですよ。まあたしかにたまに通るにはネタとして秀逸だと思いますから、どうせなら、右と左別々の音程で敷設してですね、2声の曲にしたらどうでしょう。ステレオ効果もあるし、なかなか面白いと思うんですが。左右で微妙に摩擦抵抗が違うと危険なのかなあ、そんな微妙なものじゃないよう気もしますが。
 さて最後に、このメロディ・ポイント、実は無音になることがあるんですよ。ある意味助かる時期がある。それは…雪が降った日とそれからしばらくの間です。雪が積もれば溝は埋まる。除雪をしても溝には氷が入り込んでいますからね、レコードをコーティングした状態になるんです。
 今年もそんな時が来るんでしょうか。こんな陽気だと、なんだか想像できませんね。

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