稲住温泉(@秋の宮温泉郷)
さあ、私たち家族は秋田にやってきました。昨日の晩餐のあと、一晩中車を走らせて朝の9時頃に横手市の十文字に到着。私はそこから数時間死んだように眠りまして、そして午後からさっそく活動(フィールドワーク)開始です。
昨夜の興奮冷めやらないまま、白井晟一作品を拝みに行きましょう。ついでに温泉につかって旅の疲れを癒します。向かうは秋ノ宮温泉郷にあります、老舗旅館「稲住温泉」です。
到着した私たちは、白井晟一デザインが残る玄関をくぐって、まずはお風呂へ。秋田と言えば温泉ですよねえ。私も秋田に縁ができてからというもの、いろいろな温泉に入らせていただきましたが、ここのお湯は今までで一番のお気に入りになりました。
写真を見てください。ここが昼間は男性用の露天風呂です。今日は時間の関係で、私はここだけ入浴。手前に比較的大きな湯船があり、その先、山と谷を望むちょっとした舞台に釜風呂二つと桶風呂があります。
私と入れ替わりに地元の方とおぼしきオジサマが一人上がりまして、結局このお風呂を独占させていただきました。ふむ、この薄めでぬるめの味噌汁のようなお湯がいいぞ。私、基本的にぬるめで濁ったお湯が好きだものでして。
大雨のあとのなんとも生命力にあふれた森に囲まれて湯につかり、私は完全にリフレッシュ。昨日からの流れもあって、ワクワクドキドキが止まりません。
お風呂だけでなく、館内のちょっとした部分に、古き良き昭和の味わいがにじみ出ています。白井晟一の個性をも呑み込む、いわゆる旅館風情でしょうか。
お風呂へ向かう道すがらの光景をちょっとご覧下さい。
↓客室の並ぶ廊下。
↓ミニ卓球台がある洗面所。
↓トイレの表示。
白井晟一は置いておきまして、ここ稲住温泉は武者小路実篤とも縁の深いところです。疎開先であった当地を大変気に入り、その後何回かここを訪れています。館内には武者小路直筆の書画や書簡などがた〜くさんあります。それだけでも、かなり貴重な宿と言えますよね。
↓人見るもよし人見ざるもよし我は咲く也
↓桃栗三年柿八年達磨は九年俺一生
さていよいよ白井晟一作品を鑑賞いたしましょう。というか、一番大きな白亜の洋館全体が白井の作品「浮雲」なんですよね。もちろん、その後の改装で全てが往時のままではありませんが、なんとなくその風情には彼らしい個性が残っています。
↓栗をぜいたくに使った柱や窓枠。漆喰は当時のままだとか。
↓1階の会議室。昔はダンスホールだったとか。
一番見たかった白井の傑作「離れ」は宿泊客がいらっしゃったため今日は断念。ちょっと高いけれども、ぜひ一度は泊まってみたいですね。
さて、もう一つこの宿の売りは「愛ちゃん」です。卓球の福原愛選手です。先代のおかみさんが愛ちゃんのおばさんに当たるのだとか。それだけでも結構すごいことですよね。
そして、その愛ちゃんの練習のための建物「友誼館」もまた重要な白井作品であります。旧秋の宮村役場を移築し、そして卓球場として改装したものです。
中は別として、外見は往時のままです。1951年、この山の中に、こんなモダンな建物があったとは…。しかし、意外にストンと腑に落ちる感じもする。やはり縄文は超近代的なのでしょうか。
そうそう、愛ちゃんと言えば、こんな物も展示してありました。愛ちゃん5歳の時の手形。そして、私はその隣の大きな手形に注目しました。「世界巨人 金富貴」…韓国の僧侶ですね。昭和12年に来日し、東京巨人倶楽部に入った時の手形のようです。どういう縁でここに…。
というわけで、本当に見どころ満載の温泉宿です。皆さんもぜひ行ってみてください。こんな秘境にこんなステキな宿があるなんて、なんだか不思議な気持ちになりますよ。
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