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2010.08.27

火の洗礼と水の洗礼(火祭りと豪雨)

↓click!黒いゴミのようなのが巨大な雨粒です。
28_8_36_44 日の火祭りは天候にも恵まれ、素晴らしい鎮火の儀式になっていたと思います。以前も書いたように、鎮火を火をもってするというところが、日本的な発想の素晴らしさです。
 昨日書き忘れましたが、あの屹立する大松明は、もちろん(とは言っても誰も言っていませんけど)男性の象徴でもあります。女性神である富士山に対する一種の性的な慰めともなっているのは間違いありません。これも非常に重要なポイントです。
 さて、今日は昨日とうってかわって、富士吉田は夕方から大変な豪雨となりました。突然のゲリラ豪雨に難儀した方もたくさんおられたのでは。我が学校でもいろいろなところが洪水状態となっていました。
 実はですね、ものすごく変な話ですけれども、この豪雨には私も関与していたのです(笑)。
 というのは、今日学校にあるお客様がいらっしゃったのですが、その方と私、まさに火の洗礼と水の洗礼の話をしておりまして(ってどういう話してるんだ?w)、特に学校周辺の水のことやら、竜神様の話やらをしていた矢先に、ボツボツと超大粒の雨が落ち出しまして、そしてあのような大変な状況になっていったのです。
 その方は、自然との交流のできる方でして、いろいろなところでこのように天候を動かしてきた方です。そういうことがあるんですよね。昔の人は自然にそういうことをしていたのではないでしょうか。
 その方いわく、私もかなりそういうところがあるとのこと。昨日神様と交流したこともあってか、その方と私の波長かなんかが妙に合ってしまったらしく、こういうことになったようです(笑)。
 大豪雨になってもしばらしくは太陽も出ていましたし、富士山も見えていたんですよ。とってもピンポイントな大雨だったんです。ただ、ちょっと竜神様も興奮しすぎたのか、その後豪雨の範囲もずいぶん広がったようで、隣の隣の村であるウチの布団も濡れちゃったり、子どもたちもビシャビシャになって帰ってきたりしたようです。でも、ここのところ水不足で苦しんでいた我が村では恵みの雨となったとのこと。そう、ウチの村には河川が一本もないんですよ。天水だけが頼り。まさに竜神様にお祈りしていたところだったらしい。
 ちなみに、その方、傘を持ってきてなかったので、ご自分もびしょ濡れになってお帰りになりました(笑)。興奮した竜神様を鎮めるのは難しいらしい。
 ところで、この豪雨を眺めながら、ある文章を思い出しました。たしか以前も紹介したと思うのですが、太宰治の「服装に就いて」という小文の一部です。火祭りと豪雨の話です。
 やっぱり太宰治レベルともなれば、こうして自然と交流したり、神様を興奮させたりできたのでしょうね。
 ちなみに、この文章の中にある「駅」はおそらく月江寺駅、「料亭」は特定できませんが、西裏界隈でしょうか。そして「池」は月江寺の池、「池のほとりの大きな旅館」は旧杉林旅館だと思われます。その旅館の跡地に、今、我が中学校が建っています。なんか不思議な気がします。太宰が火祭りの日に逗留し、豪雨を眺めていたところで、今私は仕事をし、火祭りと豪雨に思いを馳せているわけですから。

  太宰治「服装に就いて」より

 銘仙の絣の単衣は、家内の亡父の遺品である。着て歩くと裾がさらさらして、いい気持だ。この着物を着て、遊びに出掛けると、不思議に必ず雨が降るのである。亡父の戒めかも知れない。洪水にさえ見舞われた。一度は、南伊豆。もう一度は、富士吉田で、私は大水に遭い多少の難儀をした。南伊豆は七月上旬の事で、私の泊っていた小さい温泉宿は、濁流に呑まれ、もう少しのところで、押し流されるところであった。富士吉田は、八月末の火祭りの日であった。その土地の友人から遊びに来いと言われ、私はいまは暑いからいやだ、もっと涼しくなってから参りますと返事したら、その友人から重ねて、吉田の火祭りは一年に一度しか無いのです、吉田は、もはや既に涼しい、来月になったら寒くなります、という手紙で、ひどく怒っているらしい様子だったので私は、あわてて吉田に出かけた。家を出る時、家内は、この着物を着ておいでになると、また洪水にお遭いになりますよ、といやな、けちを附けた。何だか不吉な予感を覚えた。八王子あたりまでは、よく晴れていたのだが、大月で、富士吉田行の電車に乗り換えてからは、もはや大豪雨であった。ぎっしり互いに身動きの出来ぬほどに乗り込んだ登山者あるいは遊覧の男女の客は、口々に、わあ、ひどい、これあ困ったと豪雨に対して不平を並べた。亡父の遺品の雨着物を着ている私は、この豪雨の張本人のような気がして、まことに、そら恐しい罪悪感を覚え、顔を挙げることが出来なかった。吉田に着いてからも篠つく雨は、いよいよさかんで、私は駅まで迎えに来てくれていた友人と共に、ころげこむようにして駅の近くの料亭に飛び込んだ。友人は私に対して気の毒がっていたが、私は、この豪雨の原因が、私の銘仙の着物に在るということを知っていたので、かえって友人にすまない気持で、けれどもそれは、あまりに恐ろしい罪なので、私は告白できなかった。火祭りも何も、滅茶滅茶になった様子であった。毎年、富士の山仕舞いの日に木花咲耶姫へお礼のために、家々の門口に、丈余の高さに薪を積み上げ、それに火を点じて、おのおの負けず劣らず火焔の猛烈を競うのだそうであるが、私は、未だ一度も見ていない。ことしは見れると思って来たのだが、この豪雨のためにお流れになってしまったらしいのである。私たちはその料亭で、いたずらに酒を飲んだりして、雨のはれるのを待った。夜になって、風さえ出て来た。給仕の女中さんが、雨戸を細めにあけて、「ああ、ぼんやり赤い」と呟いた。私たちは立っていって、外をのぞいて見たら、南の空が幽かに赤かった。この大暴風雨の中でも、せめて一つ、木花咲耶姫へのお礼の為に、誰かが苦心して、のろしを挙げているのであろう。私は、わびしくてならなかった。この憎い大暴風雨も、もとはと言えば、私の雨着物の為なのである。要らざる時に東京から、のこのこやって来て、この吉田の老若男女ひとしく指折り数えて待っていた楽しい夜を、滅茶滅茶にした雨男は、ここにいます、ということを、この女中さんにちょっとでも告白したならば、私は、たちまち吉田の町民に袋たたきにされるであろう。私は、やはり腹黒く、自分の罪をその友人にも女中さんにも、打ち明けることはしなかった。その夜おそく雨が小降りになったころ私たちはその料亭を出て、池のほとりの大きい旅館に一緒に泊り、翌る朝は、からりと晴れていたので、私は友人とわかれてバスに乗り御坂峠を越えて甲府へ行こうとしたが、バスは河口湖を過ぎて二十分くらい峠をのぼりはじめたと思うと、既に恐ろしい山崩れの個所に逢着し、乗客十五人が、おのおの尻端折りして、歩いて峠を越そうと覚悟をきめて三々五々、峠をのぼりはじめたが、行けども行けども甲府方面からの迎えのバスが来ていない。断念して、また引返し、むなしくもとのバスに再び乗って吉田町まで帰って来たわけであるが、すべては、私の魔の銘仙のせいである。こんど、どこか旱魃の土地の噂でも聞いた時には、私はこの着物を着てその土地に出掛け、ぶらぶら矢鱈に歩き廻って見ようと思っている。沛然と大雨になり、無力な私も、思わぬところで御奉公できるかも知れない。


 どうですか。太宰らしい軽妙な名文ですね。ところで、私たちも二人で各地を雨乞いして回ろうかしら(笑)。

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コメント

こんにちは。
レッスン室で御神輿(・・ってこの変換で合っていますか?)
を6歳の生徒(2人)や、お母さんと眺めていましたら
大雨!その内、視線の高さで(4Fの部屋でしたので)
雷が破裂したみたいに!
そのうち、優しい雨になり、二重の虹が!
人生、何回、虹が見れるかというのが私の中にあって、
興奮しながら、生徒たちと見て、
レッスン時間終わりました(苦笑)。

そうですか、自然との交流ですか。
私達はそれを「見る」事ができたんですね。
こんな素敵なレッスンはそうそう出来ないですね←慰め
(来週はきちんとレッスンしますよぅ)

火祭りは毎年、生徒達が演奏するので
自由にできないのですが、
少し家族と歩く事ができました。
若い人達を見ながら、夏の終わりだななんて思って。
すごい人混みのなか、私も志村くんを思いました。
なにも気付かないまま、彼とすれ違っていたかもしれない、
過去に、そして現在に。
それだけのことなんですけど、火祭りって不思議な感情を
もたせますね。
あんなに熱くて、賑やかなのに、切ない。

来月、Y社から「若者のすべて」のピアノ譜が出版されるんですが、(買います買います弾きます弾きます)
紹介広告のところのアーティスト名が「BANK BAND」って。(怒)
だから私は生徒の前で弾いて「フジファブリック」を改めて、推していきます(ちからこぶ)

相変わらず、支離滅裂。

投稿: YUZUKI | 2010.08.28 09:44

YUZUKI 先生、こんにちは。
そうですか、虹まで出ましたか。
まさに「街が生まれ変わってく」瞬間ですね!
火と水で私たちの心も清められるといいのですが(笑)。
それにしても、BANK BANDはないですよねえ。
ますますY社が嫌いになりました(笑)。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.08.29 09:57

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