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2010.08.06

野口聡一さん講義 in「創造性の育成塾」

20100806_5_noguchi01 島原爆の日、宇宙飛行士野口聡一さんの講義を聴きに行ってきました。
 ここ富士吉田市で行われている「創造性の育成塾」の講義の一つです。まずは、いろいろ説明する前に、今年のこの塾の時間割を見てみましょう。こちらです。
 これはすごすぎますね。いきなりノーベル物理学賞二人に塩じいか…。
 この中の一つが野口さんの講義ということです。対象は全国から選ばれた中学2年生48人。いわば全国レベルの「理科好き」、未来の日本を担う「理系くん」「理系ちゃん」ですね。
 そこに私が参加させていただいたのは、富士吉田市内の中学に勤めているという地の利のおかげです。ウチの生徒も4人特別に入れてもらいました。
 たぶん集まっている中学生の偏差値は平均88くらいだから、まあ多めに見ても55くらいのオレたちが5人入ると、えっと偏差値が3くらい下がるな…などと、いちおう理系っぽい(?)話をしながら会場入りした私たちを待っていたのは、たしかにこれは88だなと思わせる「メガネっ子」軍団。メガネ率70%弱。
 たぶん、中学一年生の頃の私は、こういう感じだったと思います。自他ともに私は理系だと思っていましたし、まあ中一まではけっこう頭が良かったと思いますので(笑)。どこで人生間違ったのかな…。
 そう、もし中二の時、この塾に参加していたら、きっと私は本気で理系に進んでいたことでしょう。それほど、この塾は充実しています。講師との出会いだけでなく、全国から集まるよきライバルたちとの出会いが、人生を変える大きな刺激となることでしょう。ちょっとうらやましい。
 ま、そういう出会いがなかったのも、私にとっては運命だったのかもしれませんね。その代わりと言ってはなんですが、中一の時に教育の神様大村はま先生に出会ったわけですから。
 さて、野口さんの講演というか講義、非常に面白く勉強になりました。特に後半、塾生ほとんど全員による質問コーナーには感動。まず、中二の塾生たちの質問がすごい。だいたい、ああやって違う質問が数十出てくること自体がエリート集団ですね。日本語力もなかなかのもの。ウチの生徒たちは呆気にとられています。世界が違う…。
 それに対して実に的確に、そして端的に、ユーモアも含めながらていねいに答えていく野口さんが、またすごい!この人は本当に頭がいいんだなあ…宇宙飛行士として、地球人を代表して宇宙に行くには、いわゆる偏差値の高さを超えた「頭の良さ」「賢さ」が必要なんだなあと実感。人徳を感じましたね。
 特に印象に残ったのは、「野口さんにとって『創造性』とはなんですか?」という塾生の質問に対する答え。
 「創造性というのは、method ではなくて view 」「方法論ではなく着眼点を変えること」「やり方を変えるだけでは創造性ではない」
 これには、思わずうなずかされました。そうそう、その通り!
 講義を聴きながら、ずっと考えていたことがありました。創造性って、自然科学だけに必要なものではありませんよね。人文科学や社会科学の分野でも、こういう育成塾をやりたいな、そして最終的には両者を融合させたいな。
 原爆の日ということもあったんでしょうかね。「科学」は常に善や美であるとは限らないことにも思いを馳せました。アインシュタインの生んだ「自然科学」が、彼の意思を超えて暴走した結果が原爆であるとも言えます。当然この塾ではそういう勉強もしていることでしょう。しかし、たとえば戦争という歴史を検証するのに、自然科学よりも社会科学や人文科学が有効であるように、やはりそれぞれのバランスが大切だと思うんです。
 そういう意味では、今の私はですね、自然科学の上位に社会科学を、さらにその上位に人文科学を置きたいと考えているんです。基本は人間の心ですから。
 このブログらしい言い方をすれば、「コト」より「モノ」だということです。自然科学は実は人間の脳内の産物であり、典型的な「コト」世界です。実際の「自然」は、実は私たちの埒外である「モノ」なのです。そういう意味で、超近代的な「モノの復権」、私たち人間の脳内で「コトワケ(分析)」されたものたちを、再び総合、統合、和合させるのが、それぞれの科学の先にあるべき「何か」であると思っています。
 この塾は、ある意味最先端ですが、ある意味最後尾でもあるなと、そんなちょっと意地悪な(コンプレックスの裏返しか?)感想を持ったのも事実でした。
 さあ、来年は我が校の生徒にも応募させようかな。とりあえずウチの娘にすすめたら、「行かな〜い」だって(苦笑)。

創造性の育成塾 公式

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コメント

庵主様、こんばんは。
野口さんの講演、すごくおもしろそうですね。
つい最近、野口さんは藤巻さんと対談されたそうです。
どんな内容だったんでしょうね。
いずれはわかるとは思いますが。
目をきらきらさせている藤巻さんの顔が容易に想像できますね。

投稿: 田中 | 2010.08.07 19:27

先生、今晩は。

突然ですが私は写真を撮る仕事をしています。

被写体は私にとっては鏡のような存在です。
モデルのコンディションにもよるのですが、こちらの心の在り方、接し
方で表情は変わるものだと思っています。

先生の言われた通り、基本は人間の心なんだと改めて感じました。

でも私は中身が空っぽに近い状態なので、「頭の良さ」「賢さ」を持った人に憧れます。
心はもちろんですが、色んなものを見たり聴いたり、本を読んだり、体験したりして(マイペースにですが)、自分を磨けていけたらと思います。

P.S.
何だか決意表明みたいでスミマセン。


投稿: aramoruto | 2010.08.08 19:34

田中さん、こんにちは。
そう!そうでしたね。
藤巻くんはいまだに少年の心を失っていない感じですよね。
ちょっと宇宙的な発想の詩を書きますし。
そこが魅力なのでしょう。

aramorutoさん、こんにちは。
決意表明、大いに結構じゃないですか(笑)。
心、そしてその奥にある不動の魂こそ大切だと思います。
特に芸術にはそれがはっきり表れますよね。
だからこそ、志村くんも苦しんだのでしょうし。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.08.09 14:17

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