第25回 都留音楽祭 最終日
宴も終了し、いよいよ音楽祭最終日。
午前中に皆さんの研鑽の結果を発表します。たった5日間ではありますが、密度の濃い、そして距離の近いレッスンを受けて、皆さんおそらくドラスティックな変化を遂げていることでしょう。
スタッフとして、皆さんの表情を拝見していると、それを感じることができるのです。みな、音楽から、そして仲間からたくさんの力をもらっている。
私もヴィオラで参加した全体アンサンブルの曲目は、ドゥランテのマニフィカートでした。全体にコンパクトながら、魅力的な旋律、和声展開が聴かれる佳曲でありました。弟子であるペルゴレージの作品として伝承されてきたとのこと。たしかに、ある種のコテコテ感がペルゴレージにつながっている感じがしました。ということは、ペルゴレージのコテコテ感は師匠ドゥランテ譲りということでしょうか。
おそらく本邦初演でしょう。このような機会に恵まれる私たちは、やはり幸せ者でしょう。ドゥランテ自身も、まさか300年後に極東の国ジパングで、自らの作品が演奏されるなんて夢にも思わなかったことでしょう。音楽はすごい。
さて、毎度音楽祭での私の大きな仕事の一つは、お昼のフリーコンサートの司会です。実はこれってかなりエネルギーを使います。ただ演奏者と曲目の紹介だけで終わっては面白くないので、その演奏を聴きながら話すことを考えなければならないからです。3分とか5分とかの間で、その場の空気に合った内容で、かつ多少は笑いを取れるようなことを考えなければならないので、まあ大変です。
これって、アドリブ力養成の訓練にはなりますね。私は仕事柄、毎日司会とお笑いのパフォーマンスをやっているようなものですから、こうした体験は相互にとてもいい影響を与えます。傾向として、どうしても「失礼」の方向に行ってしまうのが反省点でありますが(笑)。
つのだたかし先生なんか見ていますと、ステージ上での演奏だけでなく、いわゆるMCというかしゃべりですね、それから動き、あるいは「間」など、実にパフォーマンスがうまい。エンターテイナーとして、まさに理想的な姿だと思います。
音楽家も、ただ音楽を提供しているだけではダメです。ステージは総合芸術です。私はロックやジャズなどのライヴにもよく行きますので、そのあたりの重要性については特によく分かっているつもりです。古楽のみならず、いわゆるクラシック音楽界も、もっといろいろ工夫していかなければならないでしょうね。特に古楽の本質は近代的な「コンサート」ではないはずですから。
その点、最後のお別れフリーコンサートでのエマ・カークビーさん率いる声楽パフォーマンスは良かった。ああやって、会場を巻き込んでの音楽的一体感はとても大切です。さすがだと思いました。
ということで、皆さん本当にお疲れさまでした。私自身もいろいろな意味で楽しませていただきつつ勉強もさせていただきました。ありがとうございました。
来年からは、さらに次の四半世紀の歴史を重ねるべく、自然体で頑張っていきたいと思います。もちろん皆さんからいただいた貴重な意見を参考に、細部の改善はしていきますが、私は基本、この音楽祭はこのままの内容、このままの雰囲気で続いていってほしいと思っています。これからも「心のアンサンブル」の場でありつづけるよう、私も微力ながらお手伝いしてまいります。
とりあえず、また来年お会いしましょう!
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コメント
素敵な音楽祭ですね。
胸があたたかくなりました。
5日間お疲れ様でした。
先生が都留文科大学のご出身と知り、嬉しくなりました。
お世話になった恩師、先輩もこの大学の出身で、私も志望校のひとつでした。
勉強の出来ない私は不合格で、別の大学へ。
合格して、憧れの山梨県民になりたかったです(*^_^*)
私の人生、いろんなところで、山梨というキーワードに出会います。あと、民生さんも(*^_^*)
不思議です。
投稿: ひこうき雲 | 2010.08.24 14:38
ひこうき雲さん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
そうですか、都留文を御存知とは。
とっても地味な大学で、ちゃんと読んでもらえないほどの大学ですから。
私もひょんなことからこの大学に進学することになり、いろいろな面で人生が変わりました。
いろいろと不思議ですねえ。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.08.25 17:32