吉田の火祭り2010
今年も火祭りの日がやってまいりました。昨年もなかなか神懸かり的な体験をした我が家族でありますが、今年はまたちょっと違った意味で、いろいろなことを感じて帰ってきました。
一般に言われるこの火祭りの意義については、昨年の記事などにある程度書いてありますね。しかし、実際には私にとってもっともっと多義的な要素を含んだ祭です。
まず、昨年末に惜しくも亡くなった、富士吉田出身、フジファブリックの志村正彦くんのことを書かねばなりません。
彼と、この火祭りの主役であるコノハナサクヤヒメとの関係については、以前下浅間の記事の中に書きました。
あの時は、いわば思いつきのレベルだったのですが、今はそれらは確信に変わっています。ただ、なんというか、コノハナサクヤヒメと特定するのではなく、富士山の女神とでも言いたいような、そんな気持ちもあります。
実を言うと、富士山の祭神がコノハナサクヤヒメだというのは、江戸時代くらいに定着した考え方なのです。では、それ以前はなんと言われていたのか。
なんと初期には「赫夜姫(かぐやひめ)」、そして「富士浅間大菩薩」などと呼ばれていたのです。それが江戸の富士講の隆盛とともにコノハナサクヤヒメに定着していったといういきさつがあるようです。
しかし、いずれにしても、その本質が「女」であることにはかわりありません。富士山は女性なのです。
志村くんはもちろん現実的には男性ですが、どこか女性的な魅力をたたえた青年でした。私も彼に見つめられた時には、正直「男として」ドキッとしたものです(笑)。
私の研究している出口王仁三郎(彼も富士の女神と深い関係を持っています)の発想の中に「変性女子」「変性男子」というものがあります。姿形は男性だけれども、魂のレベルでは女性、あるいはその逆という存在のことです。そうした超越的な「不二」観が、彼の特徴であると言えるでしょう(こちらのインタビュー参照)。
今日ゆっくり富士の神域を巡ってみて、私は実に身近に志村くんを感じることができました。やっぱり彼は今、富士の女神として私たちを見下ろしてくれているんだなと思いました。
生前彼も、この火祭りに何度も繰り出し、胸躍らせ、またちょっと切ない気持ちになり(吉田の夏、あるいは夏休みはたいがいこの火祭りで終わりますし)、富士山にいろいろな願いを託したことでしょう。あの人ごみの中に、彼の姿があったような気がしたのは、もしかすると私だけではなかったかもしれません。
さて、私たち家族は、今年もまた普通の方々とは違う形での祭への参加をしてまいりました。
もちろんメインは連なる屋台でも火焔見物でもありません。神々との交流です(アヤシイな)。
まずは冨士浅間神社(上浅間)の本殿横に車を停めまして、鳥居をくぐらずに神域に入ります。家族は御手洗で身を清め、ワタクシは恒例のお神酒をいただきまして(結局4杯飲んで娘に止められました…笑)、いよいよ本殿参拝です。
ここは、私たち夫婦が契りの証をした、つまり結婚式を挙げた場所です。私たちは富士の女神の前で誓い合ったのです。そんなちょっと懐かしい場所でもあるのです。一般には禁足の場所になっていますから、もうあそこへ上がることはないでしょうね。考えてみると、あの時私たちは一般の参拝客に拝まれる存在になっていたんですね。コノハナとニニギ、イザナミとイザナギのような感じかな(?)。
すっかりこうした神仏への参拝になれている私たち家族ですが、今日はさすがにちょっといつもと気持ちが違う感じしましたね。ドキドキしました。
しかし、私たちはすぐに横にある「売店」に気持ちが…。こうした聖俗綯い交ぜな感じが、日本の神様のいいところです。そこには巫女姿のカワイイ教え子がいたりして、ますます聖俗入り乱れます(笑)。
ちょっとした神様ショッピングを終えた私たちは、ある意味メインである神様巡りを開始しました。そう、この浅間神社には、とんでもない数の社があり、数十の神仏、あるいは人間が祀られているです。それを全部回るのが我々に課せられたミッションなのです。
地元の人はもちろん、観光客も、実はなかなかここまではしません。だいたい地元の人は本殿にすら参りませんからね。あまりに生活に根ざした祭なので、庭先で一晩中飲んで、時々屋台の方に繰り出すくらいでしょうか。
ほとんど人のいない真っ暗な中を一つ一つ祭神を確かめながらお参りする私たち家族って…かなりマニアックですな(笑)。しかし、面白いもので、霊感の全くないカミさんは別として、私と娘たちは、それぞれに特定の社で「何か」を感じるんですよね。そうした理屈を超えた体験というのは、子どもたちにとってもとても大切だと信じています。
ひととおりミッションが終わって、ようやく神社を下り、松明の燃え盛る本町通り、すなわち屋台の群れに向かいました。そこでしばし神農さんたちとの会話を楽しみ、私たちの火祭りは終了。今年は特にたくさんの神様と交流いたしましたね。素晴らしい体験でした。
皆さまもぜひ一度おいでください。もし、一般とは違うマニアックな楽しみ方をなさりたい方は、ワタクシに声をかけてくださればご案内します。
PS 富士の女神と交流したおかげか、夢で再び「天の歌」を聴くことができました!ヘヴィーなロックナンバー。なんか、高校時代に作った曲を掘り出してきて手を加えたとか言ってたような…。志村くんダミ声なんか出しちゃって、ちょっと新境地開いたみたいです。相変わらず曲作りに励んでいるようですね!
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コメント
初めまして。
志村くんをきっかけにいつも楽しく読ませて頂いております。
志村くん、今も曲を作り続けているんですね…。その事を聞けて本当に本当に嬉しいです。
その曲を聴くことが出来ないのは凄く残念ですが…。でも志村くんは今も前へ前へ進み続けているんですよね。
やっぱり凄いです。志村正彦は。
志村くんが生まれ育った街でパワーを頂ければと思い近々、三重県から富士吉田に向かいたいと思ってます。
その時には、浅間神社にお参りしてから帰ろうと思います。素敵なお話を聞かせて下さりありがとうございました。
突然のコメント失礼致しました。
投稿: みな | 2010.08.27 13:21
先生こんにちは(^-^*)/
昨日 少し遅い夏休み最終日のワタシはまたも三男を伴い志村くんのお墓参りをさせていただきました。みうらうどんさんで美味しい吉田うどんをいただいていると
相席の男性二人の会話に火祭りが…と。
ああ!そうか!いつかポスターで見た火祭りが!
鳥居の通りに出ると支度で活気づいていました。
先程の男性がワタシの地元の方言と似た喋りをしていて ふと思ったのです。
志村くんもこんなふうに地元の仲間と 方言交じりの会話を交わしながら火祭りの支度をしていたのかな
なんて思っていました。
夕方には長男の野球の練習があったので 昼過ぎには吉田をあとにしました。
貴重なお話しありがとうございました!
投稿: さお | 2010.08.27 13:36
こんにちは。夢のお話、どんな曲か、詳細も書いて下さっていてとても嬉しいです。有難うございます。また教えて下さいね。私も、図々しくも、夢の中で聞けるようにお願いしてみます。 先生のブログを読んで楽しみ、面白がりながら、自分の知らない世界を知れて、毎日の楽しみにしています。 富士浅間神社にはそんなにもたくさんの、神がいらっしゃって、そんなお参りの仕方がある!とか、富士山は女神、(志村さんの不思議な魅力はそんなところから来ているのか。。と納得しました)とか 一つ前の記事で、大人になっても中二病でいていいんだ。。!等目から鱗が落ちることがしばしばあります。 私も、富士浅間神社と富士山を拝めるのを、楽しみにしていようと思います。 ではまたコメントします!
投稿: ぽん太 | 2010.08.27 17:35
先生、こんにちは。
先日、拙いメールでフジファ、息子、プロレスの話を聞いていただきありがとうございました。
日々、フジファの曲を聴いている私ですが、
先生のブログを拝見していると、なんだかせつなくなり、志村さんにはもう会えないのだと思うとますます悲しくなってきます。ですが反面、先生の志村さんへの思いに、心がほっとするような、やさしい気持ちが膨らんできます。(変な言い方でおかしいですが)
志村さんのこと書いていただき嬉しいです。
さて、私の地元にも小さいながらも浅間神社があります。そして対のように山神神社もあります。
神様の系図をたどると親子か何かの関係があるようですね。
富士山を、模しているので、急勾配の石段を上っていくと本殿があります。富士山詣でのイメージなんですね。
境内は平地なのに社は小高い山の上なんです。
私も地元に生まれ育ちウン十年なのに、実はそのことをまだ最近知りました。
なんだか不思議なつながりですよね。
こっちのちっちゃな富士山にも、志村さん来てくれないかな~。
投稿: HIROMI | 2010.08.27 22:10
みなさん、コメントありがとうございました!
こうして志村くんのおかげで、富士山を中心にみんながつながっていることに感動をおぼえますね。
彼は毎日曲作りに励んでますよ。
やめられるはずないですよね、彼は。
念じていれば、きっとその曲を聴かせてくれると思います!
とりあえず私は未発表曲2曲聴いちゃいましたよ(笑)。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.08.29 09:48