7月10日…高部座の夜
昨日、「音楽と人」にちなみ、「日本のロックは文学である」と書きました。今日はそれを体感する一日となりました。そして、今日は「ロックとは命がけのメッセージである」とも言いたい。
今日7月10日は、昨年末残念ながら急逝した、フジファブリック志村正彦くんの30回目の誕生日。昨年の今日、『東京、音楽、ロックンロール』を紹介してから、もう1年経ったのですね。あの日、1年後の7月10日をこんなふうに迎えるとは夢にも思っていませんでした。私だけでなく、全ての人がそうだったことでしょう。もちろん、志村くん本人も…。
昨日までの雨が嘘のように、今日は朝からきれいな富士山が見えていました。いろいろなところから彼の誕生日を祝いにやってきた仲間たちを迎えるかのように。きっと志村くんも心から嬉しかったのでしょうね。
私たち夫婦は、夕方、志村くんに「お誕生日おめでとう」を言い、その足で都留へ向かいました。私たちにとってロックの日とも言っていい今日のこの日に、「伝説のロッカー」、そして「憧れのギタリスト」に会うことができるのです。これは志村くんからのプレゼントなのかもしれません。本当は私たちが彼にプレゼントをあげなければならないのに。
(以下、写真は「宴」の時のものです)その伝説のロッカーの名は小山卓治。ギタリストの名は河口修二。この二人の共演というだけでも、私からしますと、もう夢のまた夢のような事態です。そんなお二人と一緒に呑めるなんて…。
小山卓治さん、知る人ぞ知るミュージシャンですね。最近では、彼の「煙突のある街」を Bank Band がカバーしました(昨年のap bank fes'09での模様はこちら。原曲はこちら)。そう、彼らは志村くんの「若者のすべて」をカバーしましたから、小山卓治と志村正彦はBank Band(櫻井和寿)を通じてつながっていたのです。考えてみれば不思議なことです。
もう一歩進めて考えてみると、今回の「沿志奏逢 3」ではRADWIMPSの「有心論」もカバーされていますから、ラッドのサポートをしている河口さんも、実はつながっているとも言えるのです。というか、それ以前にミスチルのサポートで大活躍でしたからね、河口さん。
さて、今夜はどんなイベントだったのかと言いますと、都留市にある高部座(まあ「高部さんち」なんですが)で、小山、河口両氏によるライヴが行われたと、単純に言えばそういうことです。
でも、考えようによっては、山梨の都留の、そのまた山奥(失礼)のある民家の居間(仏間)で、この二人のライヴが行われるというのは実に不思議なことです。都留は私たち夫婦にとっては大学生活を送った青春の地でありますし、今でもいろいろな形で関わりの深い市です。
そこに、憧れのロッカーである小山さんと、ここ数年特に注目していたギタリストの河口さんが、わざわざやってきてくれるなんて…。
河口さんは、現在62本に及ぶレミオロメンの全国ツアーでサポート真っ最中です(先日の沖縄公演で一段落しましたが)。そう、ツアー二日目の山梨公演については、こちらに書きましたが、ほら、お読みになってわかるとおり、私なんかメンバーそっちのけで河口さんばかり観て聴いていたじゃないですか。まさか、その方と2ヶ月後、こうして一緒に呑めるなんて!そして、私たち夫婦のためだけに、目の前で…ううむ、我ながらすごい展開。
まず、申し上げておかねばならないのは、この「高部座」の主人、その名も高部さん(笑)の存在です。彼の旺盛な活動力が、こうした縁を生んでいるのです。彼自身もギターを弾き、歌を歌う人間なのですが、それ以上に、プロ中のプロの人をも惹きつける「人間力」の持ち主であるのです。私、たぶん今までにも何回か彼に会っていると思います。なぜなら、彼は山梨の「詩のボクシング」をスタートさせた張本人なのですから。
そしてそして、実は今日初めて知ったのですが、彼の奥様はなんと、一昨年の優勝者「くりこ」さんだったのです。私もこうして紹介している彼女です。ありゃりゃ、そういう展開になっていたのか…。
ちなみに今日のライヴでも、彼女の素晴らしい詩が朗読されました。相変わらずいいですねえ。帰りには詩集をいただいてきました。ありがとうございます。彼女の手作り料理もおいしかった!
そう、この民家ライヴ、とにかく、おもてなしが素晴らしい。おにぎり、おつまみ、つけもの、ビールなどがどんどん出てくる。畳と仏壇と座布団ときゅうりの漬け物とビールとロック!なんという幸福な空間なのでしょう。いや、正直、大会場で何万人動員とかいうライヴがなんなんだ!?という気持ちにさせられました。河口さんも、大きな会場でずっとやってこられたので、こういう空間に自分の音を響かせることにホッとされているように感じました。
ええと、それで、とにかくいろいろ語らねばならない邂逅があったわけですが、まずはメインの前に、山梨を代表するシンガーソングライター、岩崎けんいちさんのミニライヴが行われました。彼は、ミュージシャンとしても大変魅力ある方ですが、実は昨年の詩のボクシングの優勝者でもあります。そして、イラストレーターとしても大活躍しておられます。
なんといっても、彼の人間性溢れる音楽と言葉に、かなり打たれました。カンボジアでの歌を通じたボランティア活動も素晴らしいですし、披露された歌そのものにこめられた純粋なメッセージに、私たち夫婦はすっかり魅せられてしまいました。カミさんはもう最初から鼻をずるずるしていました(泣いていた)。
そして、いよいよロックの神様小山卓治が仏壇の前に登場です(笑)。うわっ!すごい目力。カミさんは、「土方巽ばりの眼力」と言っておりましたが、たしかにそうです。ロッカーの目だ。かっこいい。
そして、歌、演奏、言葉…もう、なんというか、私たちにとっての「ロックの日」にふさわしい、どうにも表現しがたいエネルギーを頂戴しました。
実は私、勉強不足というか、少し彼らとは違った音楽畑を歩んできたので、正直初めて聴く曲がほとんどだったのですが、一発目からどんどん心に食い込んでくる音と言葉には、思わずたじろいでしまうほど。ロック、ブルース、そしてメッセージ・フォーク、いろいろな風景が私の前に広がっていきます。
うむ、尾崎豊が熱心に小山さんのライヴに出かけていたというのもうなずけます。また、櫻井さん、小林さん、亀田さんはじめ bank band の皆さんが、小山さんをリスペクトしているのもよく理解できました。すごすぎ。
そして、途中から河口さんが参加。実にブルージーなギターソロを聴かせてくれました。河口さんとは打ち上げ(二次会?)でたっぷり話をさせていただきましたけれども、とにかく適度に力の抜けた、無駄のない音とパッセージが、私のツボにはまりまくるんですよね。うわぁ、ギターっていいなあ!ヴァイオリンは絶対かなわない!生まれ変わったらギター弾くぞ!と思わせるんです。
そうそう、ライヴ本番も素晴らしかったのですが、終演後高部家二階で行われた宴が、こりゃまたメチャクチャぜいたくな「ライヴ」でした。呑みながら食べながら、順繰りにギターを抱えて弾き語り大会!小山さん、河口さん、岩崎さん、そして彼らの抱えるギターを作ったハーパーズ・ミルの坂田さん…。そしてデュオ。延々と続く「宴=歌偈=打ち上げ」にもうメロメロにやられました。
しまいには、ウチのカミさんなんか、河口さんのギターで○○○○○○の「○○○」を歌っちゃったりして、まあ相変わらずのずうずうしさを発揮しておりました。なんというゼイタクな…。
ふむふむ、やっぱりレミオロメンのギター、つまり藤巻節は超難しいと。予想したとおりでした。というか、まさに予想通りだったのは、「修ちゃん」のお人柄ですね。本当にステキな方でした。音に人間性が表れるのです。楽器は面白い。
その他、いろいろな方と交流ができまして、やはり音楽というのは、それぞれの命の交流のためのメッセージであり、人と人をつなぎ、人を束ねる力であると再確認いたしました。
そして、日本のロックは「言葉」そのものである、文学はここに生き残っていると、強く感じた「ロックの日7月10日高部座の夜」でありました。
この世に音楽があることに感謝します。そして、その音楽を愛する全ての人たちに、ありがとう。
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コメント
庵主様、こんばんは。
素敵な夜のお話を書いてくださってありがとうございます。
私はまだ三重公演の感想もお伝えできてなくて、
読ませていただいてばかりで申し訳ありません。
そして河口さんともお話されたんですね。
そんな機会に恵まれるのは偶然ばかりではないとわかっていますが、
うらやましいなあ。
また、河口さんとのお話の中でのレミオロメンのギターについて、
思い出されたことがあれば教えてくださいね。
私は、今度こそ感想を書けるように考えをまとめておきます。
簡単に書けないということは、いろんなことを感じたからなんです。
三重公演、とてもいいコンサートでした。
藤巻さんの声も今まで聞いた中で一番調子がよかったのです。
今まででもそんなに調子が悪かったときにはあたっていなかったのですが。
表現の幅がとてもひろがっていてびっくりしました。
では、また後日。
素敵な夜だったことが本当にに伝わってきます。
音楽っていいですね。
おやすみなさい。
投稿: 田中 | 2010.07.12 01:11
はじめまして!たまに拝見させていただいております。
実は、10日に月江寺駅近くにあるカフェ月光に行きました。
私はそこから高速を使っても2時間近くかかる場所に住んでいる観光客です。
当日何となく思い立って河口湖にドライヴに行きました。まったくの思いつきノープランです!
月光はネット上だけで何度かお目にかかっていて、いつか訪れたいと記憶していたところでした。
そして河口湖まで来たから行ってみようということになり、カーナビにまかせてたどり着きました。
何とも言えない町並みに釘付けで、富士吉田は志村君の生まれ故郷ということもわかっていたので、フジファブリックの音が心に鳴っていました。
志村君は間違いなくこの町で育ったのだと確信できました。
でも、本当に思いつきでの行動だったので、行ってみたかった忠霊塔に立ち寄ることもせず、帰ってしまい、後々地図で調べてみたら、本当にすぐそばだったと知ってとても悔やみました。。。
そして、ネットで購入した「音楽と人」が今日届き、開いてみると、ダイちゃん加藤くんの背景に月光らしき建物が!!!(ぼんやりだけどそうですか?)
本当にびっくりして、何となくこのサイトを覗いたわけです。そうしたらさらにびっくりな記事で!!
10日が志村君のお誕生日だということをすっかり忘れていましたので。。。
本当に天気がよくて、気持ちが良い日でしたので、本当によかったです!!
志村君におめでとうをいい忘れてしまったのと、忠霊塔までいけなかったことがとても心残りなので、また必ず訪れたいと思います。
いろんな偶然が重なり、興奮して思わずコメントさせていただきましたが、下手な文章ですみません。。
これからもこっそり拝見させてください。
ありがとうございました!
投稿: panda | 2010.07.12 01:59
10日も素敵な夜だったのですねー!
近すぎてビックリ
私はお祭りで行けなくて残念でしたーp(´⌒`q)
チケット~………ワラ
投稿: ノリ | 2010.07.12 22:48
こんばんは、高部さんちの2次会の席で奥様の隣に座らせていただいた生粋の小山ファンです。
とても、素晴らしいライブレポートを拝見致しまして感動致しました。このような形で小山さんの歌が広がっていくのは、この上ない喜びです。私自身ももう何百回と小山さんのライブを観てきたのですが、今回のように田舎の民家でのライブ体験は初めてで、環境が変わるといつも聴き慣れていた曲も違った風に聴こえてとても新鮮でした。レポートにも書かれておられましたが、まるで宴会のようなライブでしたね。打ち上げは、まさに大宴会でしたけど。私は次の日も入間で小山さんのライブだったのですが、ついつい日付けが変わる頃まで飲んでしまいました。ライブが無ければ朝まで飲んでたでしょう。ちなみに、小山さんたちは朝の4時ごろ高部さんちを後にしたそうな・・・。でも、入間でのライブも最高でしたよ。ちょっと、お疲れ気味でしたけど。
また、高部さんちでライブがあるときには何が何でも参加したいと思います。
それではまた、いつかどこかでお会いしましょう!
鶴田!おー! 鶴田!おー! 鶴田!おー!
鶴田!おー! 鶴田!おー! 鶴田!おー!
鶴田!おー! 鶴田!おー! 鶴田!おー!
鶴田!おー! 鶴田!おー! 鶴田!おー!
鶴田!おー! 鶴田!おー! 鶴田!おー!
鶴田!おー! 鶴田!おー! 鶴田!おー!
永遠に続きます・・・・・・・・・・・・・
投稿: WEST RIVER BAND | 2010.07.13 03:09
いや〜〜。。。
すごい夜で御座いましたな。幸せ、感謝感謝。
>WEST RIVER BANDさま
どうも、どうも!
高部さんちの二次会で隣に座っておった庵主妻ですm(__)m
小山さん、、、オーラが凄かったです!
皆さんのようなファンが今まで居て下さったことで、もちろん
小山さんの才能はさることながら、この夜に
あの場所で、初めて、聴く機会に巡り会えたのかなあ、
とも、思います!
ありがとうございました。
また、会いましょうね〜!
鶴っ田! オーーー!!!∞∞・・・
投稿: 庵主セコンド | 2010.07.13 14:36
田中さん、こんにちは。
以前、河口さんに聞いてみます!と書いた時は、半分冗談だったんですけど、実現しちゃいました。
オフレコの話(?)もありますので、またのちほど。
pandaさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。
そう、あれはたしかに「月光」ですよ!
いろいろな偶然が重なりましたね。
いや、偶然でなく必然でしょう。
今後ともよろしくお願いします。
ノリよ、今日チケットもらいに行くよ。
また、ゆっくりね。
WEST RIVER BANDさん!どうも、どうも、お疲れさまでした!
ダンナの方です。
いやあ、本当に素晴らしい夜でしたね。
小山さんの偉大さを再確認しました。
そして鶴田の偉大さも(笑)。
まあ、どちらも我々凡人とは格が違いすぎますね。
また、ぜひお会いしましょう!
セコンドよ、まったく、ありがたい人生ですな。
調子に乗らないようにしなくちゃね。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.07.13 16:19
こんにちはっ
お久しぶりです。
困ったことに
お二人に出会ってから、
「奇跡」という言葉の意味が
よくわからなくなりました(笑
すべては繋がってるんですね。
ステキ。
投稿: くぅた | 2010.07.15 15:39
くぅたさん、お久しぶりです。
超遅くなってすみません。
妙に忙しかったもので。
いやいや、「奇跡」の意味を分からなくしてくださったのは、くぅたさんですよ!w
もう何が起きても驚きませんね、お互い。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.07.29 11:31
どうも! I LOVE RADWIMPS なガキです!!
いいですね~! 音楽でできた繋がりのステキさを教えてくれる記事ですね! いいなぁ~(笑)
僕も一生、音楽に携わっていたいですね。(趣味の範囲内でですけどねwww)
河口さんにも会ってみたいですね~。RADWIMPSの話なんかを聞いてみたいなぁ
羨ましいぃぃぃぃぃ\(*`∧´)/
投稿: 中二病の昌平 | 2010.11.02 18:35
昌平くん、とにかく楽器を、音楽を一生続けることだな。
オレだって30年以上かかってここまで来たんだよ。
中一はそのスタートだったね。
思えば遠くへ来たもんだ。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.11.06 12:27