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2010.06.14

『実録 神戸芸能社』 山平重樹 (双葉社)

山口組・田岡一雄 三代と戦後芸能界
57530172 本のドン「田岡一雄組長」、永遠の歌姫「美空ひばり」、そして国民のヒーロー「力道山」。
 昨日はプロレスラー三沢さんの命日でした。三沢さんが守り、発展させたプロレス界を作ったのは、言うまでもなく力道山です。その力道山を支え、彼をヒーローにまで育てたのは、山口組三代目組長田岡一雄でした。
 そして、昨日夜、先週に続きましてBS朝日で「旅立ちから20年『甦る!幻のスーパーライブ』」の第二夜として1976年の大晦日の「美空ひばり芸能生活30周年記念ライブ」が放映されました。ものすごいライヴでした。長らく録画が見つからず幻の映像となっていたものです。ひばりさん自身が録画したものが見つかり、それが昨年初めて放映されました。その再放送です。
 先週の記事にも書きましたとおり、彼女を育てたのも田岡さんですし、こうして大晦日にNHKに出られなかった遠因も田岡さんであると言えます。
 いずれにせよ、田岡さんが戦後日本、昭和日本に果たした役割の大きさはとてつもないものがありました。美空ひばり、力道山、この二人だけをあげても、いかに日本を、日本人を影から支えたかがわかります。正直、表舞台の政治家なんかよりも、ずっと国民のことを思い、実際に国民に力を与え続けました。
 そういう意味で、戦後日本を牽引した「神戸芸能社」とはどんな「会社」であったのか、最近大変に興味を持っています。私も昭和に育てられた人間ですが、実は神戸芸能社にすっかりお世話になっていながら、子どもの頃、若い頃には全く気づかず知らなかったんですよね。まさに裏から支えてもらっていたんでしょう。
 その神戸芸能社についての、なかなか素晴らしいルポルタージュであるこの本、その文学的な香りもあいまって、その古き良き時代の空気を実にうまく伝えていると感じました。昭和の裏側の、あの明るく暗い雰囲気、良きにつけ悪しきにつけパワフルだったあの頃の空気は、すでに懐かしい物語となってしまいましたね。私たち世代は、それをギリギリ体感できた幸運な世代だとも言えます。
 この本を読むとよく分かります。ちょうど私が生まれた昭和39年あたりを境に、日本は「日本」を捨て始めました。東京オリンピックが象徴するように、新しい国際国家としての「JAPAN」へと、時代は急行しました。それとともに消えていった古き良き日本。その一つが「ヤクザ文化」でした。
 ヤクザ的な物語世界、あえて言うなら「必要悪」という聖なる存在は、この日本を何千年にもわたって支配してきました。それが高度成長とともに一気に闇に葬り去られていきました。私はそういう時代の交代とともに生きてきたようなものです。だからこそ、最近、ある種の寂しさと不安を強く感じるのでしょうね。自分もそうした「モノノケ」退治に参画してきたからです。子どもとして、大人として、社会人として、常識人として、そして教育者として。
 そんな反省もあってからでしょうかね、最近異様に「歌謡曲」と「プロレス」の復興に燃えてしまうんですよ。意識はしていなかったのだけれども、気がついたらそうなっていた。面白いものです。
 そう考えてくると、資本主義や市場経済という「外来」のシステムの中で、古き良き「固有」の文化を継承、発展させた「神戸芸能社」という「会社」組織は、実に興味深い存在ですね。山口組の先取性、というか、田岡さんの才覚なくしては、こんな高度な芸当は無理だったと思います。
 そう、結局、そんな奇跡を可能にしたのは、田岡さんの「人柄」「愛」だったのです。非常に安っぽい表現になってしまいますけれど、つまりは「愛はカネに勝つ」ということですよ。たしかに一面では暴力的にカネを稼いだとも言えます。もちろんそれも認めますが、これだけの「才能(タレント)」を活かし、国民を楽しませ、喜ばせ、そして日本を元気にしたことは事実であって、その根底にはそれぞれのタレントに対する「愛情」、そして国民に対する「愛情」、国に対する「愛情」があったのは間違いありません。
 逆に言えば、今の興行主…音楽界をはじめとする芸能界、プロレスをはじめとする格闘技界も…には、正直「愛」を感じません。とりあえず、その「才能(タレント)」を理解しているとは思えません。単なるカネ稼ぎのための、その場しのぎの使い捨てのコマにしか思っていない。業界を育てようとか、人材を育てようとか、国民を元気にしようとか、そんなこと真剣に考えていませんよ。
 特に外国資本が入ってくると、もう本当にダメですね。残念です。
 まあ、いくら古き良き時代を回顧していても未来は始まりませんから、少なくとも自分はもっともっと「愛」を持てるように頑張っていかねばならないと思います。愚痴っていてばかりではダメです。もっと自分の「器」を大きくし、そして磨いていかねばならないと、真剣に思います。
 この本には、貴重な写真もたくさん掲載されています。田岡さんと、当時の超有名タレントたちとの、なんとも幸せそうな表情のスナップ。この表情こそ、当時の日本の元気の素だったのでしょう。
 政治家がいくら「日本に元気を!」と叫んでも、あの表情じゃあ無理ですよ。国民に元気を与えるのは、政治ではありません。ワールドカップで日本が得点すれば、もうこんなに元気になるじゃないですか。今の私たちに本当に必要なのは、スポーツや芸能や「はやぶさの帰還」などという「無駄なこと」を心から楽しむ力なのではないでしょうか。

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