『お父さんの石けん箱−愛される事を忘れている人へ。』 田岡由伎 (角川文庫)
私の「親分」がしみじみ語っていました。「やめられるヤツはいいよな。本当に責任があるヤツはやめたくてもやめられないんだよ…」。
まったくそのとおりだと思います。4年で4人の総理が任期満了前に「引責辞任」するという異常な国、ニッポン。筋を通せない大人たちが、いったいこれからの未来を担う子どもたちに何を教えられるというのでしょう。
今日は、そんなニッポンとは正反対の、古き良き「日本」の大人のあり方を、この本からたっぷり学びました。本当に全ての大人に読んでいただきたい。父親にも母親にも読んでいただきたい。この本は「日本」のバイブルです。なぜ、私たちはこういう大切な「日本」を捨ててしまったのでしょうか。
著者は山口組三代目組長田岡一雄の娘。ですから、「お父さん」とは、もちろん田岡一雄のことです。父親にも母親にもとことん愛された娘から見た両親の姿が、これまた深い深い愛情をこめて記されています。
さらに驚くべきことは、みんな、こうした家族への愛情だけでなく、全くの他人に対しても、あるいは「組織」や「弱者」や「国」という抽象的なものに対しても、同様の愛情をもって接しているということです。なぜ、昔の日本人はこんなに「愛」をたくさん持っていたのでしょう。これが「仁」であり「義」であり「礼」なのでしょうか。
「愛される」ための、ただ一つの方法は「愛する」ことしかありません。今、私たちは、その「愛する」ことを忘れてしまったがために、「愛される」ことも忘れてしまっているのです。由伎さんは、それを憂えているのです。
その「愛」のレベルは、先ほど書いたように、まずは「他人」にも及ぶべきです。今、たとえば、「自分は自分の子どもをしっかり愛している」と主張する親は、自分の子どもしか愛していないことが多い。だから、極端に言えば、他人の子を「敵」にさえしてしまうのです。他人を敵視することが身内を愛することだと勘違いしている馬鹿さえいる。恥ずかしいことです。
そして、本当の「愛」は、より抽象的な、あるいは遠隔的な他者にも及ぶべきなのです。たとえば「国」。はたして、総理各人は、本当に「国」を愛していたのでしょうか。「国」を憂えていたのでしょうか。はなはだ疑問です。
本書の最後の方に「憂国ってどんなこと?」という章があります。そこにこのような記述があります。
「…一番怖いのは、国と国の“デイリ”ということになるやろなァ」
「力のない者が、なに言うてもたわ言になってしまうやろ? そやから、力競べしてしまうんや。それがどんどんエスカレートしていく…時が来な、ホンマの平和はむずかしいやろうなァ」。お父さんは、しみじみとそう言っていた。
…時は流れ、日本はお父さんの憂えていたとおりの道へ向かっている気がする。社会は「出来がわるい」というレッテルを無遠慮にはりつけて、枠に入れない者を切りすててゆく。のこっているのは淋しい日本人。力と力の戦いでイライラする人々。美しいものを感じる感性をなくし、当たり前のことができなくなる。お金と物に魂を奪われ、愛することを忘れ、姿が見えないけもの以下の人間…日本人は、どうなるのだろう…。
田岡一雄さんは、ある意味「みろくの世」を目指していたのかもしれませんね。
今の私の世代の大人たちは、田岡さんのことをどの程度知っているのでしょうか。暴力団のドン、悪の権化だと思っているのでしょうか。私はたまたま、自分の趣味(プロレスや歌謡曲、そして宗教など)や仕事(教育)から、この世界の研究をしてきましたので、ある意味特別にその世界を理解している人間かもしれません(ちなみに私の姓はこの組と同じでありますが、直接的な関係はありません。あしからず)。
いつも書いているように、「仁侠」が「カネ」に敗れ、つまり「和魂」が「洋才」に敗れ、「ヤクザ」や「侠客」が減り、「チンピラ」と「暴力団」ばかりになってしまってからというもの、この国は本当にどうかしてしまった。そこには家族も文化も芸術も教育も、本来の政治も経世済民も何もありません。
こういう時だからこそ、こうしたバイブルをみんなで読んで、大切な何かを思い出さねばならないでしょう。
ここに書かれていることはどうせ「きれいごと」ばかりだと言う方もいらっしゃるでしょう。でも、バイブルはそれでいいんです。聖書、聖典は皆、そういう性質のものです。そういう人間の「愛」だけを抽出して見せるからこそ、その意義があるのです。
しかし、はっきり申して、この本の内容はほとんど全てが「真実」でしょう。ただ私たちが知らされてこなかった、あるいは、逆に偽りによって洗脳されてきただけでしょうね。そこにいったいどういう力学が働いていたのでしょうか。今度はそこを勉強したいと思います。
さあ、私はこの本を読んで、なんの迷いもなくこう言いますよ。よけいなご心配は全く無用です。
田岡一雄さんのような「父親」に、「教育者」に、「親分」に、「大人」に、「男」に、そして「日本人」になりたい!
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コメント
苗字は同じですが(笑)、この方のこと知りませんでした。目からうろこです。
本当に庵主さんの予言、当たってしまいましたね。呆れてしまいますが、確かにそれを選んだのは私たち国民であって・・・
日本はどうなっていくんでしょう。
私ももうちょっと政治のこと勉強しなければと反省です。。
せめて自分は責任逃れしない人間でありたいです。
投稿: 毛糸 | 2010.06.04 12:41
毛糸さん、ぜひこの本読んでみてください。
我らが姓もなかなかのものですよ。
ちなみに、私はもともと二代目と全く同じ名前になる予定だったようです。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.06.04 18:21