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2010.06.18

パット・メセニー 『オーケストリオン』

20100620_94048 年1月に出た新譜、遅ればせながら聴いてみました。これはすごいですね、いろいろな意味で。「パット・メセニー」というジャンルがあるのだなあと実感。
 パット・メセニーは好きなミュージシャンの一人ではありますが、その天才性のゆえか、やや理解を超えた音楽であることもたしかでした。それがとうとうここまで来てしまったか。「天才」と「バカ」は紙一重。まさに「天才バカボン」です。
 オーケストリオン…機械仕掛けの自動演奏オーケストラ。それを自ら作り上げ、自らコントロールし、ものすごく魅力的な「音楽」を創造してしまった。
 なんかバッハみたいですよ。自分のこだわりを極致まで追求した結果、人間性を突破してある種の聖域、つまり「神の領域」にまで行ってしまった。まずは、この動画をご覧下さい。

 ううむ。このデジタル時代、このアナログ感はなんなんだ。これは時代に対するアンチテーゼですよ。コンピューターで制御しているけれども、発音はどこまでも自然楽器。
 つまり、自らもそうであったように、人間技を極めて、どんどん複雑化していく「現代音楽」と、逆に経済的な、あるいは時間的なチープさを極めていく「打ち込み音楽」に対する、天才(バカボン)らしい反撃ですよ。
 なんで、こういう発想になるんだ?彼自身が極めてきた「インタープレイ」はどこへ行った。いや、これこそが彼と彼自身の究極のインタープレイであり、インプロヴィゼーションなのか?
 機械仕掛けであるからこその、シンプルさ…たとえば、強弱一つとってもある意味デジタル的にならざるを得ない…の中で、彼のギターは相変わらず変幻自在で自由奔放に鳴り響きます。バックグラウンドが平坦であるために、逆に浮かび上がるパット・メセニーという人間。
 ある意味では「カラオケ」ですよねえ。究極の「空オーケストラ」です。それがこんなにカッコよくて、美しいのはなぜ?もう、完全に凡人の想像力を越えてしまっていますけれど、しかし結論は結論、結果は結果。認めざるを得ません。
 デジタルは「情報」という不変な「コト」世界です。アナログは「他者」という不随意な「モノ」世界です。パット・メセニーは、その「コト」世界と「モノ」世界を見事に融合して、そこに「ヒト」世界を現出してしまいました。それを「神業(神事・神技)」と言わずしてなんと言うのか。
 今、このオーケストリオンを率いて(?)ワールド・ツアーをしています。先日、日本にもやってきて、音楽&機械好きの日本人の度肝を抜きまくったそうです。こちらの記事でもその興奮の様子がうかがい知れますね。
 パット・メセニーはジャズ・ギタリストとして有名なわけですが、もうこれはジャズではないですね。ジャズは広範で柔軟なジャンルであります。しかし、これはもうそれさえもはみ出してしまった。やはり「パット・メセニー」というジャンルですね。「バッハ」というジャンルが孤高としてそびえ立っているのと同じです。
 賛否両論あるのはもちろん理解できます。神に対しては、凡人はひれ伏すか無視するかしかできませんから。
 しっかし、どうやって作ったんだろう。子どもみたいな気持ちがないと無理だよなあ。そう、これは究極のピタゴラスイッチです。

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コメント

前略    薀恥庵御亭主  様

「横山東六」御師匠様 御同様
やはり・・・
「天才」は「天才」ですね。笑

与える「影響」は計り知れません。

愚僧も「ヘンテコ楽器」を作って
早 40年。

あまりに・・・
「奥」が深すぎて「先」が見えなく
なってしまいました。 爆笑

ヘンテコおじさん      拝

投稿: 合唱おじさん | 2010.06.20 14:38

合唱おじさん様、こんばんは。
まったく天才は恐ろしく面白いです。
ぜひヘンテコおじさんのヘンテコ楽器を演奏させてほしいものです。
考えてみると、ヴァイオリンなんか、とってもヘンテコですよね(笑)。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.06.21 18:01

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