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2010.05.19

改定常用漢字案

20100520_60818 日も言葉のお話を。
 改定常用漢字案が文化審議会の国語分科会で審議され了承されたとのこと。今年中に1981年、当用漢字が常用漢字に改められて以来の大改革が実施されることになりました。
 今回の加除は左の表のとおりです。クリックして見てみてください。まあ驚きの内容ですよねえ。えっ?この字って常用漢字じゃなかったの?というものばかり。
 だいたいですね、常用漢字というのはなんなのか、私も含めて皆さんあんまり正確に把握していませんよね。
「法令・公用文書・新聞・雑誌・放送等、一般の社会生活で用いる場合の、効率的で共通性の高い漢字を収め、分かりやすく通じやすい文章を書き表すための漢字使用の目安」
 これが現行常用漢字の答申の前文です。つまり「目安」であって、なんら「強制力」を持つものではありません。「強制力」がないのはもちろん、「権力」すらありませんから、別に私たちは無視してもいいんですよね。特に現代の打鍵自動変換時代においては。
 しかし、どうも常用漢字が気になるのは、これはどちらかというとその不便性のためでしょう。
 私たちにとって、なんとなく「権力」の象徴のように感じられ、ちょっと偉そうなイメージのある、新聞やテレビのニュースなどが、基本、常用漢字の「権力」の下でペコペコしていますよね。
 そう、ニュースの字幕などで「拉致」が「ら致」、「覚醒剤」が「覚せい剤」、「恣意的」が「し意的」、「訃報」が「ふ報」などと表記されているのを見て、違和感を抱いたことが、皆さんおありでしょう。
 もちろん、マスコミにはマスコミの基準がありますよ。現行常用漢字表の通りやっていたら、山梨県は「山なし県」、静岡県は「静おか県」と表記せねばならなくなってしまいます。ついでに、ここ富士山麓は「富士山ろく」です。
 こういうアホくさい事態(不便性)については、ずいぶんと前から多くの指摘がされてきました。ですから、このたび上記のものも含めて、常用漢字表に加えられる見込みになったのは朗報と言えましょう。
 今回の審議の中で面白かったのは、淫・呪・艶・賭は「学校現場に不適切」とされて、ちょっともめたことですね(笑)。何が不適切なのか、私には全くわかりませんが。というか、去年まで私が作っていた大学合格者の張り紙、「祝合格」と書くところを、わざと一つだけ「呪合格」とかして遊んでました(笑)。あっ、それはさすがに「不適切」か。でも、それは「呪」が不適切なのではなく、「私」が不適切なのでしょう。すんません。
 ま、とりあえず、それら「不適切」な漢字も今回は採り入れられるようになったからめでたしめでたしと。同様に審議が紛糾した「障がい者」の「碍」ですが、これはもともと「礙」という字であり、「さまたげる」「さえぎる」という意味です。「害」はたしかにイメージが悪いので、思いきって「碍」にしてしまうというのも手だと思いますがね。なんとなく「がい」だと、逆差別的な感じがします。いかにも日本的な隠蔽・隔離・偽善体質を象徴しているような…。
 そうそう、ちなみに常用の前の当用漢字の「当用」ですが、これって「さしあたって用いる」という意味だったんですよね。「とりあえず」がずっと「権力」を持っていたのですから、まあ面白いと言えば面白い。
 「常用」という言葉もちょっとセンスがないような気がします。「日常の使用に必要」という意味らしいのですが、「常用」というと「常に使う」という感じがしてしまいます。もうちょっと違うネーミングを審議した方がいいような気がするんですが。
 ま、いずれにせよ、今回の改正案は基本的に悪くない内容だと思いますよ。でも、やっぱり私はですね、マスコミに関しては「ルビ」をもっと多用してほしいと思います。今回の答申にもある「書けないけれど読める漢字」の存在は、非常に重要です。現代における漢字の役割を考えると、実際半分以上の漢字(もちろん常用漢字以外も含めての漢字)はそれでもいいとさえ思います。それを支えるのは「ルビ文化」だと思うんですよね。昔の新聞って全ルビだったじゃないですか。あれって勉強になったと思いますよ。
 今でも、マンガのルビで漢字の読み、さらに書きさえも覚えたという生徒たちがた〜くさんいます。実際、あんな悪徳漢字能力検定協会に乗せられて無機質な漢字学習させられるより、そっちの方がずっと、生きた、豊かな、文化的な漢字学習になりますよ。そうそう、漢検の悪徳ぶり、そろそろまじで暴露しますからね。最近また協会と喧嘩してるんですよ(笑)。「消えた14億円」とか、まあ衝撃的な事実がありますからね。漢検の悪徳ぶりというより、学校の先生の悪徳ぶりかな?ま、お楽しみに。
 なんだか、我々日本人って、ホント、いいにつけ悪いにつけ、「漢字」に振り回されてますな。

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コメント

前略  薀恥庵御亭主  様

1000000パーセント同意です。
百万パーセント・・・ですか。

冗談はさておき・・・
幼稚園・焼酎広大×

小・中・高・大
教育関係はすべて「漫画」に
すればよいのです。

教科書も「漫画」・・・
校則 も「漫画」・・・
試験も受験も漫画にします。
「吹き出し」の部分に
食う博覧×
空白欄を設け そこに奇術×
記述します。

「ふりがな」さえあれば 
中国語でもラテン語でも
ドイツ語でも韓国語でも
ルーマニア語でもなんでも
かんでも「発声」できます。

「漢字」と「ふりがな」と
そして「漫画教育」の実践。

そうすることによって・・・
日本人の痴膿紙数× 
「知能指数」は数段・・・
跳ね上がましょう。

漫画おじさん     背景 


投稿: 合唱おじさん | 2010.05.20 10:09

こんにちは!庵主様

私も合唱おじさん 同じく全面その通りだと思います。
朝の番組を見て知り、思わず広辞苑を調べましたです。
ずいぶん力がなくなってる自分に驚きました。重い!!
そして見えない!

淫・呪・艶・賭が学校で不適切でも行動というか字の持つ意味の行いなどがあるのですから、
漢字の責任ではないですよね。

漫画は漢字を覚えると聞きます。
よく読んだ娘はあまり読まなかった息子よりはるかに、そして私よりも漢字を知っています。
だからといってそうとは限りませんが。

漢字だけの国は解らなかったら諦めると聞いたことあります。
私たちは少なくともひらがな、カタカナで表現はできますがね。
最近ひらがなばかりになってきました(T_T)

でもこのマシーンは有難いです(^○^)

投稿: あんりまー | 2010.05.20 14:52

合唱おじさん様、あんりまー様、ご賛同ありがとうございます。
私はあんまり漫画を読んでこなかったので、今さらながらに後悔しております。
よって生徒たちには読書以上に漫画を推奨しております(笑)。
漫画と映画があれば、小説はいりません…なんて書くと怒られそうですな。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.05.22 14:48

前略    薀恥庵御亭主  様

昔の「製本」や「装訂」は・・・
本当に素晴らしいと感じています。

「挿絵入り」や 「ふりがな付き」
の昭和40年代の 「少年少女文学
全集」等は最高欠策×
最高傑作だと感心致しております。

現代の検定試験の有り方は
「漢字」なんてそんな「感じ」
でよいと考えています。笑

愚僧の愚考する「漫画漢検」では
空欄の「吹き出し」の解答などは
正解は幾つもある設定です。

【ちのうしすう】

「知能指数」・・・
「血膿死数」
「痴脳指吸」
「地農氏崇」
「恥脳私崇」

みんな・・・
絶妙・微妙に「正解」です。笑

「誤字脱字」込み込みで・・・
「漢字文化」の「護字達゛字」
を目指す。

愚僧も監字嫌低死件×
漢字検定試験の再考を
漢字てます。苦笑

漢字おじさん        拝

投稿: 合唱おじさん | 2010.05.22 20:50

【訂正】

「恥脳私崇」× 
ちのうしすう

「恥脳私祟」◎
ちのうしすい

謹んで訂正致します。

投稿: 合唱おじさん | 2010.05.23 00:00

合唱おじさん様、「誤字検定」ってとっても高度な教養を要求しますね。
「漫画検定」とともにぜひ実施してもらいたい!

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.05.23 09:36

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