『近頃の若者はなぜダメなのか 携帯世代と「新村社会」』 原田曜平 (光文社新書)
昨日の番組でも、結局一番冷静においしい立ち位置を確保していた原田さん。彼は30代前半。20代以下の草食系と40代以上の肉食系にはさまれた微妙な30代。「食」という本能的な部分での存在感を示すことが難しいからでしょうか、彼らは「理性」や「知性」を売りにすることが多いですね。
ま、そのおかげで、原田さん、昨日のプロレスの試合の中では、実に面白くないレスラーにもなってしまっていたわけですが…。全然燃えないどころか、全体をクールダウンしてしまっていました(笑)。
彼は仕事柄もあるとは思いますが、常にデータという武器を駆使します。つまり、草食も肉食も「自分」を語っていたのに対し、彼らは「他人」を語っていたわけです。だからこそ、リング上では面白くないわけです。
それどころか、なんとなく20代より50代より自分は大人ですよ的オーラが出ていて、ちょっと「ずるいな」とも思いましたよ。ある意味上から目線。
いや、この前のPRIME NEWSとかだったらいいんですよ。客観的であるべきニュース番組ですから。
もちろんこの本は、彼のワンマンショーですから全然OKです。しかし、やっぱり最後は「理性」をもって冷静に「若者」を分析し、そして「ダメ」と言われる彼らをしっかり擁護して、「いい人」になりきっています。うまいと言えばうまい。
ま、彼も広告マンですから、そういうテクに長けていて当然なわけですがね。それで食ってるわけですから、やめろとは言えません。
原田さんが唱える「新村社会」や「既視感」というのは、これはある程度事実でしょう。ネーミングもうまいと思います。生徒たちを見ていると、たしかにそういう生き方をしているように見えます。
でも、それって彼ら自身の性質ではなくて、その上の世代が作り上げたメディアや商品、そしてまさに原田さんたちが作り出した「言葉」によって変化した社会に、最適化しただけですよね。
「つながっていたい」というのも、別に今に始まったことではありません。ただ、つながるための道具がケータイやパソコンになり、場がSNSやTwitterになっただけです。オヤジたちも、あるいは平安時代の人たちでさえ、もしそういう環境にいれば「近頃の若者」になっていたことでしょう。
つまり、こういう「今どきの若者」論というのは、たいがい前世代が(好むと好まざるにかかわらず)作り上げた社会環境の総括になるんですよね。そういう意味では、どの時代も、自分たちが用意したものではなく、前世代のオヤジたちが作り上げた「結果」ということになるわけです。
で、昨日も書いたとおり、その、自分たちが作り出してしまった「結果」に対して、「近頃の若者はダメだ」とか言っちゃうわけですから、結果としてオヤジ自身の自己否定、自らの人生の全否定になってしまっているわけですよ。
ああ、そう言えば、だいぶ前に私も「最近の若者は…」なんて記事書いていました。そこにも書いたとおりですよ。
そこを「上から目線」で、冷静に語る中間世代なんですよね、原田さんは。ある意味「神の視点」。多少の憂いはあれど、基本的に慈愛をもって許す、認めるという姿勢ですね。だから、ずるいとも言えますが。
おそらく、こうしてですね、どの時代も隔世的に「自己否定(しかし、表面的には若者否定)」をすることによって懺悔を繰り返してきたんでしょうね。そして、そのたびに、中間世代の神が慈愛の微笑みをもって、「まあまあ皆さん仲良く。皆さんはそれぞれ立派ですよ」と諭し慰めてきたんではないでしょうか。
私はある意味、原田さんよりだと思います。微妙に中間世代です。だから、案外「自分」を語らないじゃないですか。今日だって、原田さんら中間世代さえも、冷静(そう)に(エセ)知性をもって諭しているわけでして、ありゃりゃ、これじゃ私が究極の「上から目線」、究極神ということになってしまう…笑。
ま、結論、原田さんも私も、なんだか本能的に争うことのできない、そういう意味ではあんまり人とつながれない寂しい世代なのかもしれませんね。ふむ、実際私なんか、上から「今どきの…」とか言われたことないし、下に対しても「今どきの…」なんて言ったこともないような気がします。肉食にも草食にもなりきれない中途半端世代なのかもしれませんね。ちょっとしたジェラシーを抱えた孤独な神だったりして。
Amazon 近頃の若者はなぜダメなのか
楽天ブックス 近頃の若者はなぜダメなのか
| 固定リンク
「パソコン・インターネット」カテゴリの記事
- AGIが世界を変える(2023.02.15)
- エアロバイク一体型デスク(2023.01.07)
- 湯木慧 『心解く』(2023.01.04)
- ポメラ DM250 (キングジム)(2022.11.17)
- コヤッキースタジオが「不二阿祖山太神宮」訪問!(2022.11.05)
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 『TENET』 クリストファー・ノーラン脚本・監督作品(2023.03.07)
- 仲小路彰 『昭和史の批判史』より「二・二六事件の本質」(後半)(2023.02.28)
- 仲小路彰 『昭和史の批判史』より「二・二六事件の本質」(前半)(2023.02.27)
- 仲小路彰 『昭和史の批判史』より「二・二六事件」(2023.02.26)
- ヤマグチ社(2023.02.19)
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 『禅語を生きる』 山川宗玄 (春秋社)(2023.03.01)
- 仲小路彰 『昭和史の批判史』より「二・二六事件の本質」(後半)(2023.02.28)
- 仲小路彰 『昭和史の批判史』より「二・二六事件の本質」(前半)(2023.02.27)
- 仲小路彰 『昭和史の批判史』より「二・二六事件」(2023.02.26)
- 臨時特別号「日刊ニャンダイ2023」(2023.02.22)
「心と体」カテゴリの記事
- 劇的サヨナラ!WBC準決勝(2023.03.21)
- ダルビッシュに学ぶ「温故知新」(2023.03.17)
- 「温故知新」再び(2023.03.16)
- 高橋信次先生講演 『心の原点』(1976年)(2023.03.06)
- ○八代亜紀 vs ひろゆき&成田悠輔×(2023.03.05)
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 劇的サヨナラ!WBC準決勝(2023.03.21)
- 上野公園にて花見(2023.03.20)
- 「温故知新」再び(2023.03.16)
- 『RRR』再び!(2023.03.14)
- 中西圭三 『Choo Choo TRAIN』(2023.03.09)
コメント
こんにちは~(^^)
「いまどきの若い者は」の言葉はすごく興味あります。
私たちも若かりし頃は言われましたね。
団塊世代の方など、さぞ大人を困らせたのではないでしょうか(^○^)
「今の若者は・・・」は何故かきになります(^○^)
これは人間ぐるぐる回って、きっと今の若者もきっと親父世代になれば言うと思います。
すでに20代で10代の子に向かって今の若い子って・・・聞いたことあります(^○^)
ビートルズに夢中だった人たち、ギターを持つことは不良と言われた方々はすかり常識人(^○^)
私は前から紀元前から「いまどきの若い者は」は言ってると思っています(笑)
でもこれは事実みたいです。石に彫って書いてあるものが現実見つかっているそうですから。
私はこのセリフは使いませんよ~
まだ親から苦言がくるから(笑)
結果、大人が作ってきた社会なのにね。
子育ての頃ファミコンを子供にさせるかどうかで学校の懇談会で必ず話題になっていました。
大人が作ったもので子供も翻弄されてます。
今ではPCや携帯電話。これを子供にどう使わすか!
息子が高校の頃は学校から携帯禁止の連絡はしょっちゅう来てました。私は買って与えませんでした。
娘が高校入ったころは、すでに学校許可。
いろいろ矛盾は感じますが。
蘊恥庵庵主さまの学校では、携帯はOKですか?
少し前ほどのこともなく、子供たちも使いかたに慣れてるから学校での失敗はないのでしょね。
投稿: あんりまー | 2010.05.08 12:25
あんりまーさん、こんにちは。
そうですねえ、「今どきの若者は」ではなくて、「いつの世の大人も」困ったものです。
そんな大人になってしまった自分も困ったちゃんですが(笑)。
ウチの学校ではケータイは朝預けて帰りに持っていくという感じですが、全部チェックしきれないので、結局授業中に鳴らしてしまう者もいます。
それは没収して1週間預かりとかになります。
今は送り迎えの連絡とか、登下校時の安全のためとか言って、結局学校としても持たせる指導になるんですよね。
昔はなきゃないでやってたのに。
そんなものでしょう、いつの世も。
そのうち、iPhoneやらiPadやらはどうするか…みたいなことになるのでしょう。
ウチなんか、というか私も新し物好きなので、逆に教材にしてしまった方が楽とも思ってしまいます。
そうそう、ウチの中学って、授業や放課後の様子なんかをTwitterで保護者に実況中継してるんですよ。
もちろん私が仕掛け人です(笑)。
どうせなら楽しく活用しちゃおうと。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.05.09 10:37
いいですね~その発想の転換!さすが!!
子供の興味に乗っかる!これが大事かもですね。(^O^)/
いや~授業参観させていただきたいですよ!
ネットで公開授業なんちゃって(^○^)
投稿: あんりまー | 2010.05.10 12:03
あんりまーさん、こんばんは。
もう「今どきの…」とか文句言っててもしょうがないですからね。
逆手にとって楽しんじゃいます。
いろいろな問題や困難を、アイデア(はったり?)で乗りきっていくのが、私の趣味、いや仕事ですので(笑)。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.05.11 21:19