成長→成熟
今日のPRIME NEWSは『もうGDPで競うな!脱成長こそ日本の活路』というテーマでの討論でした。番組の最後、水野和雄三菱UFJ証券チーフエコノミストは「動かない」を提言しました。
たしかに、我々現代人は「動く」こと「移動する」ことを「成長」の証だと思い、「幸せ」を測る価値の一つだと思い、「美徳」であり「ステイタス」であるとさえ思ってきましたね。これはいわば西洋近代文明のスタンスでした。分かりやすく言ってしまうと、隣の国に攻め入るだけでは満足せず、海を渡って原住民を大量虐殺し、そしてその土地と自然と人とを支配下におさめるという「植民地政策」です。
これはある意味では「定住」の裏返しでもあります。より良い土地への「定住願望」がそのような「移動」を生んだとも言えます。逆に、たとえば縄文人なんかは、「ゆるい」定住と「ゆるい」移動を繰り返していました。自然豊かな島国日本の根本的な心性は、実はそんなところにあるような気もします。
だから、私も水野さんの意見に基本賛成したいですね。今や人間にとっても、物にとっても、無駄な「移動」こそが最もエネルギーを費やす要因となっています。動物や植物はそんな無駄な移動はしません。
ここからいろいろ話が飛びますが許してください。私の頭は無駄な「移動」が多いもので(笑)。
まず、やっぱり日本のオタク文化って正しいと思うんですよ。ひきこもり文化ですね。無駄なエネルギー使いませんから。もっとはっきり言ってしまえば、「ニートは世界を救う」と思うんです。労働することが当然で、労働しないのは悪のような風潮がありますが、たとえば、かの賢人お釈迦様なんか、立派なニートでしたよね。ある意味妄想して座っているだけ。そして、最低限の消費生活をし、最低限の布施を受けて、つまり余り物で生活をしていたわけですから、それはそれはとっても環境にやさしい生き方をなさったわけです。ま、前半生は王子としてこの世の栄華を極めていたわけですから、結果とんとんとも言えますが(笑)。
いつも言うように、日本のオタク文化って貴族文化なんですよ。貴族って基本「動かない」じゃないですか。それって究極のエコかもしれません。華美な生活で無駄遣いしていたようにも思えますが、実は大した経済活動してないんですよ。逆に公共事業を創出して世のためになっていたくらいです。
武士や商人の世の中になると、これはもう基本「戦い」ですからね。攻めるにも守るにも逃げるにも「移動」は欠かせません。そうするともうみんな命がけでエネルギーの無駄遣いに奔走するわけです。
だからですねえ、日本のオタク=貴族文化って、これからの世界標準になっていくような気もするんですよね。特にこういうネット社会になれば、移動しないでも、家の中にいてもけっこう楽しいですから。そういうカネのかからない、すなわち移動の必要がない、エコ(エコノミー&エコロジー)で、ちょっとエゴでエロでちょっとデコな世界観…それはすなわち自然界そのものなのですが…こそが世界を救うかもしれませんね。頑張れ草食系男子!っていう感じです(笑)。
そうそう、昨日のお酒じゃありませんが、やっぱり、じっと寝かせて「熟成」させた方がいいんですよ。なゆたの時を成熟に当てるんです。そういう価値観も思い出さねばならないでしょう。
前にも書きましたとおり、私は「経済成長」よりも「経済成熟」を求めてほしいんです。政府も国民も企業も、そういう方向にシフトチェンジすべきじゃないでしょうか。
今度はおとといの記事に飛びます。私もこういう歳になりましてね、もう自分が肉体的には「成長」なんかするはずもないことが分かっているわけですよ。そうしますと、何を求めるかと言えば、精神的な「成熟」であるわけです。それは皆さんも理解できるでしょう。
それと同じように、現代日本という国もですね、10代の高度経済成長を終え、20代の安定成長も経験し、ある意味働き盛りのバブル30代で暴れまくり、そうして「なんとなく落ち着いちゃったな」「ちょっと空しさも感じるかも」の40代を迎えているような気がするんですね。だから、そろそろ年甲斐もなく「成長」なんてことを言わないでですね、ぜひ「成熟」を目標としてほしいのです。そういう立派な首相が出てきませんかね。ブータンの「GNH(国民総幸福度)」みたいな新しい指標を作りましょうよ。
さて、また話が飛びます(移動します)。今日の番組のもう一人のゲストが、東大大学院の松原隆一郎さんでした。松原さんと言えば格闘技、プロレスマニアとしても有名。ちょっともったいなかったのが、せっかくキャスターの反町理さんが、「松原さん、格闘技において動かないというのは…」という実にシャレた質問をしたのに、松原さんその技を受けずに流してしまった点でした(笑)。いやあ、格闘技にとっては「無駄な動き」は絶対に許されませんよ。
ちょうど番組が始まる前に、IGFのGMである宮戸優光さんから電話が来ましてね、ここ10年くらいの日本のプロレス界の問題点について話したんですよ。その中にも出てきましたが、今のプロレスはどうしてもハイスパートで飛んだり跳ねたりのサーカス、あるいは学芸会になりがちです。昔のプロレスは「動かない」中にも迫力や緊張感や意味を感じました。今はとにかく「意味のない動き」ばかりになってしまっています。プロレス界もまた、成熟を目指す時期が来ているのではないでしょうか。そのために必要なのは、やはり「教育」であって、「目先のカネ」ではないと、私たちは確認したのでした。そして、これはプロレス界に限ったことでないと。宮戸さんの言うとおりだと思いました。
そういう意味では、私たち40代が、正しい日本の40代を創っていかねばならないわけですね。しっかり腰を落ち着けて、根をちゃんと張って、自他を見つめ直す必要がありますね。無駄な「動き」をせず、意味のある「動き」をしていきたいものです。
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コメント
前略 薀恥庵御亭主 様
「不動産」×
「不動」は大切ですね。
私の支障× 師匠は躾に大変
厳しゅう御座いました・・・
いつも「チョロチョロ」するなー
と怒鳴られてばかりでした。笑
やはり「魔×「間」が大切ですね。
師匠は 「間」の必要ないものは
この世に「二つ」だけじゃ・・・
「それは挨拶と御礼の手紙じゃ」と
申しておりました。
愚僧も「挨拶」と「手紙」だけは・・・
「間」を置かずに実践致しております。
誤寺脱寺だらけの間違いだらけでは
御座いますが。笑
合唱おじさん 拝
投稿: 合唱おじさん | 2010.04.30 19:49
合唱おじさん様、こんにちは。
お礼のお返事に「間」が空いてしまって申し訳ありません(笑)。
しかし、お師匠様のお言葉、いいですね。
「挨拶」と「手紙」ですか。
さっそく生徒たちに伝えさせていただきます。
たしかにその他はみんな「間」や不動が大事ですね。
きっと「間」は無意識ではなくて、内側に向かう意識のための時間なのでしょうね。
私もしっかり坐るところから始めたいと思います。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.05.01 11:42
>ひきこもり文化ですね。
>「ニートは世界を救う」と思うんです。
ちょっと遅いコメで恐縮ですけれど、拜読した時は感謝感激雨アラレ♪ でございました、半ニート(=全ニート志向)中年の愚生には。
現役の教頭先生のお言葉として、よろしいのでしょ~か~、と無粋なことは申すまい、快哉♪ です。
― が、かなり以前にこういう発言が風靡した折りもございましたねぇ‥‥ユックリズムとか、小さいことはいいことだ、とか。その後、不況続きの中でこういう思潮はあっけなくフッ飛び、中国の経済発展に周章狼狽し、村上 龍氏の“13歳のハローワーク”が異様なリアリティを帯びてきました。
非正規・無能の受験産業従事者としては、確固として「動かな」ず、「成長しな」くなったものは、“時給”だ、という実感を持っています。いや、今年は10円上がったのですが(泣笑~)、実際、運転士さんなどの世界で、同じ労働でも契約社員として、低賃金なだけでなく、昇給なしという待遇が増えているようです。
話題がフラつきますが、働くのはよいこと、となかなか言い難い部分を、以下のような点に感じます:
自分が働くことに忸怩の念を覚えるのは、たとえば生徒に助動詞の意味などを間違って教えた、と気づいた時で、まあコマごとにありますが、つくづく今の仕事をやめたほうがいい、と思います。
しかし、意外にうまく、正確に教えられたという時も、「これでいいのかな?」の念、黙しがたし。自分がやっている仕事ゆえ、文化が歪んで伝わるのでは、という懸念は消せません。
ある非常勤先で、お人柄も尊敬できる老先生とご一緒した折り、その先生は「文部省の連中が教育をダメにした」とばかりおっしゃっていました。こういう方、多いですし、自身の実感でしょうけれど、では“きちんとやりおおせた自分の仕事そのものが、害を成していないか”という自問を持つ方は、どうも極めて少なそうです。
>日本のオタク文化って…
あげ足を取るようですが、今のオタク文化って、「動き」の化身(権現さま=アヴァター^^;)のようです。オタ芸の動き…はまあ本質的なオタクではないとしても、‘アニメ’=‘動き’ではありませんか! 「動かない」オタク文化創出のカギは? 我田…ですが、オーディオなどはその象徴的なもののひとつでしたけれど、オタク文化に反比例して衰退…私自身もちょっと疲れてきました(は、どうでもいいですが)。
「成熟」、「不動」の意味は、大きいだけに、現実に活かすのは超-困難に思えます。私などは、貴族よりも、鴨 長明流の隠者をめざしても…云フ甲斐ナシ。
スピリチュアル、トランスパーソナルが地位を築いたこの10年こそ、自死者超激増の10年だったことも、見ないではすませないことです。
千鳥足乱文、深謝いたします。
投稿: へうたむ | 2010.05.10 03:56
へうたむさん、こんばんは!
ちょっと忙しくてレスが遅れました。
おっしゃることいちいち納得しました。
私は本当にこのブログでも学校でも(?)無責任に騙っています。
ま、それが私の良さなのでしょう(笑)。
案外生徒たちはメディア・リテラシーを持っていて、
私のような「語り部」の言葉は楽しんでますが、信用してないみたいですよ。
あんまり本当のことばかり教えるのもどうかということです。
私の文法の指導なんかすごいですよ(笑)。
もともと文法なんてフィクションですからね。
ところで、アニメはアニメーションとは違うような気がします。
日本のアニメは「いかに動かさないで動きを表現するか」ですよね。
オーディオって私も大好きですが、あれは「箱庭」の魅力だと思うんですよね。
ある意味「オタク文化」の代表ではないでしょうか。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.05.11 21:11
ご丁重なレス、ありがとう存じます。
>あんまり本当のことばかり教えるのもどうかということです。
>もともと文法なんてフィクションですからね。
安心しましたぁ~ \(^o^)/。これで明日から仕事がラクになります。
‥‥ おっと! フィクションだと、かえって現実(現実なるものが存するやは別にして)より扱うのに濃やかさが必要ですね。注意、注意^^;。
>アニメはアニメーションとは違うような気がします。
ははぁ、なるほど。
プロレスのお話にあった「動き」ですが、真偽はさておき、関根 勤さんが、後期のジャイアント馬場選手への客のヤジとしてだったと思いますが、「馬場! 動け!」と ― これ自体ネタだったわけですが ― 言っていたのを覚えています。
投稿: へうたむ | 2010.05.12 03:58
へうたむさん、こんばんは。
私の話もフィクションですから、ご注意を(笑)。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.05.13 18:45