卯月
昨日は「エイプリル」を紹介しました。「April」はもちろん4月のことですが、この英語、語源がはっきりしておりません。諸説あるようです。一説には「aperīre=開く」からとも言われています。つまり、「花が開く」季節という意味ですね。
日本では旧暦の四月のことを「卯月(うつき・うづき)」と言いました。実はこの語源もはっきりしていません。旧暦ですから、実際の季節感としてはもう少し後になります。初夏ですね。
そんな初夏の代表的な花、「卯の花(ウツギの花)」が咲く頃というのが一般的な説のようです。ある意味「エイプリル」と同じ語源。
しかし、考えてみると、「ウツギ」はもともと「空木」であって、「卯木」ではありません。茎が中空なので「うつ」な木と命名されたと思いますから、もともと「卯」とは関係なさそうです。つまり、因果関係が逆で、「卯月」に咲くから「卯の花」となったのでは。
古く日本では、「卯」はやはり十二支の「卯」、すなわち「うさぎ」というイメージが強かったようです。そうすると、「卯月」も「うさぎ」に関係するのでしょうか。花の方も白くてウサギみたいだったからということも考えられますね。
あと、食べ物の「おから」のことも「卯の花」と言いますね。ウチの娘たちの好物です(マニアックすぎる)。
これも語源を考えるといろいろと不思議なことが分かります。単純に豆腐の搾りかすが白くて「卯の花」に似ているともとれますが、先ほど書いたように、花の「卯の花」はもともとは「空木」ですから、「空(から)」と「おから」も相関関係にあることがわかりますね。搾りかすのこと自体、「(豆腐の)から」と言いますからね。「空」という語感を嫌って「卯の花」と言い換えたのかも知れません。また、「空っぽ」の反対語としての「得(う)」だという説もあります。
月の話に戻しますと、もう一つの語源説として「植月」だというのがあります。田植えの月だということでしょうか。これはちょっと無理がありそうですね。「植う」は下二段動詞。その語幹「う」だけで用いられることはありません。この説はおそらくもっともらしい後付けでしょう。
実はもっと面倒なことがありまして、「卯月」は「二月」の異名だったこともあるんですよ。こうなるともう何がなんだか分かりません。ちなみにAprilも「二番目の月」という意味があったとか。みなさんご存知のように、昔は10ヶ月制だったことがあって、英語の月名も2ヶ月分語源とずれていますよね。分かりやすいところでは、Septemberはseven(7)、Octoberはオクトパスとかオクタゴンのoctで8とか。なんだか面倒くさいことになってますが、いずれにせよ、「卯月」も「April」も両方とも「二月」だったというのが、なんとなく面白い偶然ではあります。
今、ふと思いついたのですが、もしかして、もっと単純に「卯月=四番目の月」だったりして。「卯」だから「(十二支で)四番目」というイメージが強かったじゃないですか。時間とか方角とかでも使っていましたから。実はこの新説が真説だったりして。
| 固定リンク
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 『首』 北野武 脚本・監督・編集作品(2023.12.05)
- バッハ『フーガの技法』を見る(2023.12.04)
- 濱田あや 『デュフリのガヴォットとシャコンヌ』(2023.11.30)
- 不動明王の愛の荒魂(2023.11.28)
- 日本酒だけで生きることは可能なのか?!(2023.11.26)
「文学・言語」カテゴリの記事
- ナイツ傑作漫才集(2023.11.20)
- 在原業平の墓(滋賀県高島市マキノ町在原)(2023.11.18)
- 十三(じゅうそう)(2023.11.17)
- ナイツ 『野球寿限無』(2023.11.15)
- 【読解力】社会人1万人以上見て分かった”文章読めない”人の特徴 (サトマイ)(2023.11.13)
コメント