「念ずれば花ひらく」…冬から春へ
この写真は、昨日の朝のものです。開校式・入学式の朝、実は我が家の周辺は銀世界だったのです。ご覧のように、せっかく顔をのぞかせていた土筆たちも、すっかりこごえていました。
カミさんの実家のある東北地方などもそうですが、こうした厳しい冬を乗り越えた自然が、ためこんだエネルギーを爆発させる春は、これはまた格別のものがあります。
私の生まれた静岡などは、年中春か夏みたいなところですから、この春の爆発力は感じられませんね。つまり、ある意味「我慢」が足りないんですよ。いや、もちろん、だからこそあそこは「天国」なんですけどね。
私は山梨の郡内地方に住むようになって、この、春の爆発力を初めて知りました。じっと我慢の冬が終わって、ぱっと花開く春が来る。これは私たちの人生にも重なるところがあるんですよね。もしかして、静岡から大人物が生まれないのはそれが原因かもしれません(失礼)。
右の写真は、昨日富士山から下るスバルラインで撮影したものです。満開の桜ではありません。雪をかぶった木々です。しかし面白いもので、ここから数十メートル下ると、もう雪はありません。結果として、私の車だけが雪を積んで走っていて、ちょっと恥ずかしいことになります。あいつどこから来たんだ?的な視線を感じます。学校に着くとみんなに笑われます。
学校のある富士吉田市では、桜が三分咲きくらいになりました。昨年の記事を見ていましたら、10日に志村く〜ん!「市民会館」の桜、満開ですよ〜!と書いてましたから、今年は昨年よりはちょっと遅めなんでしょうかね。
いずれにしても、開校式・入学式に合わせてたくさんの花が開き始めてくれましたことに感謝します。今年は特に一生懸命咲こうとしている桜の輝きが強く心にしみましたね。そんな気持ちを込めまして、今日、クラブ紹介において、後輩の先生のチェロと私のヴァイオリンで、レミオロメンの「Sakura」を演奏いたしました。
昨日の記事にも「念ずれば花ひらく」と書きました。この言葉は、仏教詩人坂村真民の言葉として有名になりました。
彼の随筆集「念ずれば花ひらく」を読みますと、この「念ずる」という言葉は、単に「祈る」とか「願う」とか、そういう意味ではないような気がしますね。
皆さんも、高校の古文の時に習ったかと思いますが、古語の「念ず」は「たえしのぶ。じっとこらえる。我慢する」という意味ですね。「〜を念ず」、たとえば「阿弥陀仏を念ず」とか「法華経を念ず」という場合は、「祈願する。呪文を唱える」というような意味になりますけれど、現代のような「成就を願う」というような意味ではほとんど使われません。
自然の姿を見ていると、まさにそういう意味で「じっとたえしのんでいれば、必ず花が開く」ということを学べますね。我慢している時にこそ、「爆発力」が身についているわけです。
近代人は、「いかに我慢しないですむか」というテーマを掲げて、科学や工業や経済やその他もろもろの「コト」を作り出してきました。そういう中にどっぷりつかっていると、時折訪れる想定外の「モノ」に対して、じっと耐えたり、それをこらえながらやりすごすことができなくなってしまいます。
猫なんか、ちょっと体調が悪いと、とにかくじっとしていますからね。現代の人間のように大騒ぎしたりしません。昔の人は、動物や植物に学んでいたのか、いや、単にそういう智恵を忘れていなかったのか、いわゆる「物忌み」ができたんですけどね。
とにかく、私たちは、何かを生み出すために、あるいは花を開かせるために、もう一度「念ずる」ことを思い出さねばならないのでしょう。自分の快適だけを求めても、結局それが永続的に得られない苦しみを感じるだけに終わってしまうことがしばしばです。もっと、不快や想定外、ある種の痛みなどと、仲良くするというか、それらを単純に敵視して除外、疎外しようとするのではなく、「念ずる」ことによってそれを超克していく方法を学ばなければなりませんね。
新しい中学校では、それを日常の中で教えていきたいですね。
…なんて、まずは自分がそういう生活をしなくては。「念力」を身につけないと(笑)。
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コメント
こんばんは。
今まさにそんな状態に直面していたので、『念ずる』の意味を知って何かが開けそうな、そんな気がしてきました。
庵主さんの記事はいつもタイミングがよすぎてビックリしちゃいます!
なんでだろ???
投稿: タラ | 2010.04.11 02:32
まさに今の私です。
静寂の中に、自分の基礎をつくりあげているというか・・
自分の基盤を作る為には、何かの「我慢」も必要。
自分の基礎=生活習慣を規則正しいものとする。
今までの私は、そこが怠惰的だったんですよね・・・(^-^;
理論的な事を発言しても、その中身が空っぽなら、意味がない。それにとっても等しかったです。
今は、「我慢」の時期。
基礎を作って、自分が何かしらで、精一杯表現するための我慢だ!と感じて。
全ては何かしらに、繋がってますもんね!
私より、人生を長く生きていらっしゃる先輩達には、本当に、自分を「再確認」「再起動」させていただくきっかけをもらってます♪
山口先生も、知らず知らずのうちに、色んな人を導いてますね♪
私もそんな中の一人ですよ(o^-^o)
投稿: 里沙 | 2010.04.11 09:57
庵主さま、富士吉田の4月を初めて知りました。
「念ずれば花ひらく」我慢してこその爆発力。その通りですね。
この間、青森の話が出ましたよね?
雪の残る「青森」確かに寺山、太宰、棟方志巧もですよね、やっぱり“爆発力”あるなって(笑)。
本音を言うと、先生が赤シャツみたいになったらイヤだなって思っていて(発想が単純でしょ?)。
切実に“こういう人”こそ現場にいてほしいのにって。
でも、ブログを読んで、わかりました、あの先生のままでした!
新しい中学校でも、たくさん教えていって下さい。
最後に『エイプリル』。絶対に先生の言った4月ですよ。独特の富士吉田の春、歌詞も“君と僕”ではなく、10代の仲間を思わせる“僕ら”でした。
投稿: 千帆 | 2010.04.11 21:20
皆さん、コメントありがとうございました。
私自身、言うは易しでして、なかなか我慢できない人間なのですよ。
文章にすると偉そうな感じですが、私を知る人(特に生徒たち)は、またテキトーなこと言ってるって思うでしょう(笑)。
私もあんまりベラベラ口からでまかせ言わず、じっと静かに過ごしたいものです。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.04.13 16:26