「いつもの丘」の春
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あんまり天気がいいので、お弁当の時間、中学校の生徒たちを連れて、忠霊塔に登りました。ぽっかぽかの太陽と満開の桜の下、そして雄大な富士山を仰ぎ、さらには眼下に我らが富士吉田を見下ろしながら食べるお弁当は格別。
昨日の私のウチのあたりは、最高気温2度(!)だったのですが、今日は20度越え。凍える真冬から一転して汗ばむ初夏の陽気。体もビックリしてしまいますね。
午前中は七分咲きかなあと思われた桜が、午後には一気に満開になりました。まさに念ずれば花ひらくですね。昨日の我慢が一気に爆発してすごいパワーを感じさせます。
そんな力を秘めた初々しい桜の花たちに負けない、新しい中学の新しい生徒たち。みんな元気にあの階段を上って、キャッキャキャッキャと楽しそうにお弁当を食べていました。
みんな、あの富士山を眺めながら、何を想い、何を心に誓ったのでしょうか。
そう、忠霊塔と言えば、フジファブリックの「浮雲」が思い出されますね。あの名曲の歌詞に出てくる「いつもの丘」とは、ここ新倉浅間神社公園のことです。地元の人たちは「忠霊塔」と呼び習わしています。
標高830メートルくらいですから、「丘」というより「山の中腹」ですね。徒歩で上るのにはそれなりの根性がいります(私は根性なしなので、今日は車で上っちゃいましたが)。志村くんは、地元に帰ってくると、いつもこの「丘」に上ったそうです。帰りの電車の時刻の1時間ほど前に家を出て、どこに行くのかと思えば、必ずこの「丘」に上り、そして我が街を一望し、富士山を仰ぎ、志を確かめ、気持ちを改めて行ったと言います。
それにしても素晴らしい歌詞ですね。まさに文学の香りがします。文学だけれども、事実に根ざした、リアルから吹き出した力がある言葉たちです。そこにあのメロディーですから…やっぱり天才でした。
この歌詞に出てくる「いつもの丘」は今日のような天気には恵まれていません。昨日の忠霊塔は、ちょうどこんな感じだったかもしれませんね。雨の忠霊塔もいいものです。富士山が見えない富士吉田の街は、なんとも寂しいものなのですが、しかし、富士山は見えなくともそこにあるのです。目標が見えなくなる日も来ますが、それでもそこにあると信じて歩いていくことが大切なのですね。そういう時にこそ「独りで行くと決めたのだろう」と確認すべきなのかもしれません。
上の写真にも改装中の「市民会館」が写っています。彼がこの丘から見下ろし、「ここでライヴをやるんだ」と決めたその夢は2年前の5月18日に叶いました。改装後のこけら落としもフジファブリックに、という話もあったと聞きます。いやぜひそうしてもらいたいですね。彼もきっとそれを望んでいるでしょう。
こうして考えていくと、この「浮雲」と、少し前に紹介した「エイプリル」は、深い関係にあるということが分かってきますね。4月はやはり出会いの月であるとともに、旅立ち、独り立ちの月なのです。生徒たちもある意味自立のスタート地点に立ったわけですね。
そんな大切な場所、天才が「独りで行くと決めた」場所に、これからまさに人生の岐路を迎えるであろう教え子たちを連れてくることができて良かったと思います。
今回は特にそういう話はしませんでしたが、いずれ時が来たら生徒たちにも、地元に志村正彦という、こういう青年がいて、こういう素晴らしい作品を残したんだということを伝えようと思っています。
それにしても、志村くんにこの桜を、富士山を見せたかったなあ…。いや、きっと彼は中学生と一緒に、ここにいたと思います。うん、きっといた。
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コメント
おはようございます。
富士山と櫻、本当に素晴らしい景色です!
「浮雲」・・・庵主さまがおっしゃるように
“文学の香り”がします。
特に最後の、
独りで行くと決めたのだろう
胸に静かに深くしみいります。
一昨年の富士吉田のライブの日、
残念ながら富士山の雄姿は見ることが
できませんでしたが、
「そこにある」んだなという存在は感じ得ました。
庵主さまの『目標が見えなくなる日も来ますが、それでもそこにあると信じて歩いていくことが大切なのですね。』
今の、うちの娘に話してあげたいと思います。
ありがとうございます!
今年の7月17日には雄姿と出合えるかなあ。
投稿: kirari | 2010.04.14 08:47
「いつもの丘」は本当に桜が満開でした。
今日も丘の上でフジファブリックを聴きながら思いをめぐらせました。
浮雲の歌詞は今の自分にとってとても心に響きます。
自分がいま強くなる途中にいると信じたい
また富士山からパワーをもらったような気がします。
辺りが暗くなってきてふと時計を見たら7時(゚д゚lll)。
さすがに凍えました...。
今日、舞い込んだ再始動のニュース。
志村くんが納得する作品になることを期待します。
いや、黙って見守ることなんかできずしっかり参加してますよね(笑)。
投稿: rollo | 2010.04.14 22:53
こんばんは。
ビッグニュースが届きましたね。
このことだったんですね。
うれしい気持ちより、感極まって泣いてしまいました。
今日のニュースで現実をやっと受け入れられました。
今年はこんな気候でこちらの桜は満開にもなれずもう弱弱しい若葉をつけ始めました。
今日テレビで見ましたが、富士の芝桜も咲かない、小田原の梅も大打撃のようですね。
そんな中、『いつもの丘』の桜は満開で
志村くん始めフジファブリックのメンバー、関係者の方々、そしてご家族の『念』を感じます。
そして今日花開いたのでしょうか。
いつも思うんですが、フジファブリックに関する出来事はほんとにタイミングがよすぎてビックリします。。。
この富士山と桜、それはそれは良い感性が育ちますよね!!
あの日に見た富士も吉田の街も幻想的でしたし、きっといつ忠霊塔に行っても幻想的なんでしょう。
そしてこの場所を『丘』とした志村くんには感服です。
何かを始める決意を感じる『浮雲』も『エイプリル』もこの土地、風景の中に育った志村くんだからこそ作れた作品なのですね。
才能は天に帰ってしまいましたが、その心はずっと残ります。ぜひ、生徒さんに伝えて素敵な才能を伸ばしてください。
生徒さんたち、期待してますよーーー!!
志村くんも一緒にお弁当食べてたかも(笑)
投稿: タラ | 2010.04.15 00:25
皆さん、コメントありがとうございました!
このタイミングには私もビックリです。
実はこの「いつもの丘」のあとにも、いろいろあったもので…。
きっと彼もここにいたのでしょう。
女子中学生とか好きそうだしなあ(笑)。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.04.16 09:10
忠霊塔からの景色、懐かしいです。
きれいですね
投稿: ナス | 2010.04.17 19:13
ナスよ、どうもどうも。
そう言えば都留軍団の清掃場所は忠霊塔だったよね。
懐かしいでしょ!
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.04.19 18:05