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2010.03.21

フジファブリック 『タイムマシン』

 11年前の春に卒業させた教え子たちのクラス会に招待されました。卒業する時は、「このクラスは個性がバラバラだしクラス会やりそうにないね(笑)」と言って別れました。実際今日まで全然集まる機会がなく、今回が初めて。いったい誰が来るのか、どんな会になるのか心配でした(笑)。
 ところが、やっぱり集まってみれば盛り上がる盛り上がる。実に懐かしく楽しい会になりました。彼ら彼女らは今年30歳になる世代です。それぞれ結婚して子どもがいたり(ある男子なんか4人目が生まれたとか…)、いつのまにかバツイチになっていたり、仕事で活躍していたり、悩んでいたり…。
 高校当時はほとんど話をしなかった者どうしが、11年目に大いに意気投合したりして、やっぱりこういう会はいいものですね。今の話と、昔の話との間を行ったり来たり。まさにタイムマシンに乗っているような気持ちでした。
 タイムマシンと言えば、今日会った教え子たちは、フジファブリックの志村正彦くんと同学年になります(高校は違いますが)。小学校、中学校と一緒だった子、中学時代一緒に野球を頑張った子、遠い親戚にあたる子、昔ちょっとつきあったことがあった(!)という子。皆、それぞれに「まさひこ」「まーくん」の思い出を語りました。
 私や一般のファン、そして業界の人たちがイメージしている「天才」としての志村くんとは違い、下吉田のやんちゃな少年としての志村くんが、みんなの心の中に生きていました。
 小、中と何度か同じクラスになったことのある女の子たちが言っていました。「教室でいっつも机をドラムみたいに叩いてたね」。たぶん、頭の中に流れる音楽に合わせてリズムを取っていたんでしょうね。いったいどんな音楽が流れていたのでしょう。
 「いつも笑ってた印象がある」という子もいました。「戻れるかな タイムマシンのように 同じように 笑えるかい」…彼の残してくれた名作「タイムマシン」にそういうフレーズがあります。切なさに胸がしめつけられました。
 志村くんのお母様も、この曲が一番心に響くとおっしゃっていました。その心中を察するに……本当に言葉になりません。
 そう言えば、先日「3月9日」の記事のコメントの中で教えていただいたのですが、レミオロメンの藤巻くんが最近よく聴く曲のベスト10の中に、このフジファブリックの「タイムマシン」を挙げていました(雑誌「VERY」のインタビュー)。同郷、同世代のミュージシャンとして、ある意味最もそれらしい哀悼、敬意の表現だなと思いました。
 それぞれの人生。それぞれの思い。それに関われる幸福と切なさ。今日はいろいろな意味でこの「タイムマシン」が胸に響く1日となりました。
 7月17日のフジフジ富士Q、そうそうたるミュージシャンたちが集まります。志村くんの偉大さ、天才ぶりをこういう形で再確認することになるとは。ちょっと複雑な気持ちでもあります。
 今日のみんなも「行こう、行こう。地元の仲間も盛り上がろう!」と言っていました。本当にこういう少年がここにいたということを誇りに思いますし、彼の人生を絶対に忘れてはいけない、語り継いで行かなければならないと思うのでした。
 私もご縁をいただいた者として、できるかぎりのことをしていきたいと考えています。

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コメント

庵主様、初めてコメントさせていただきます。
昨年の志村さんの突然の出来事以降、いつも読んでいました。
でも、何故だか、丸腰?!ではコメントしてはならない気がしてずっとためらっていました。

過去のブログでも『FABFOX』の、ビートルズ、ELO、ユニコーン、フジファブリックのくだりもまさに全文同意でしたし
『クロニクル』『我が生活』の考察も嬉しかったです!
特に、富士五湖文化センターのライブからは、庵主様の志村さんへの思いが、父性愛のようなものになっていって、読みすすめる毎に、笑い、涙し、パソコンの前で拍手したりもしました。


この庵主様のブログは、志村正彦というミュージシャンと彼を生んだ山梨へと繋いでいってくれる“駅”のようなブログだと思います。
例えば、中原中也も、小林秀雄や大岡昇平が語りついでいったように。
あるいは、漱石を江藤淳が私達世代に語りついでいったように。

その人の本質を見抜き、全体重をかけて、愛し伝えていってくれたからこそ、広く広く届いたと思うのです。

この庵主様のブログには、そんな“力”があると私は思います!
うーん、私はずっとこれを伝えたかったのです!
丸腰で書いてしまった!

投稿: 千帆 | 2010.03.22 14:18

千帆さん、こんばんは。
丸腰でありがとうございます(笑)。
こちらもいつも丸腰ですからご遠慮なく。
というか、そんなにほめていただいて、まったく恐縮してしまいますよ。
私は自分の天命だと思うことをただ当たり前にやらせていただいているだけです。
これからもよろしくお願いしますね。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.03.22 21:38

庵主さま、こんばんは。
お返事ありがとうございます。丸腰でいいんですね(笑)
追記いいですかね?
昨日のコメントは褒めすぎでも何でもなく、率直に言っただけです。
本当に、昨年の訃報から、このブログに出会い、私の知らなかった志村さんや、富士吉田の景色を知る事が出来たんですね。
そして、何度も、その洞察力や、深い愛情に驚かされたんです。

志村さんを悼む幾多の文を読んだ時。
私は学生時代、先生に「もっと作者を知るために読みなさい」と
すすめられた『中原中也の思い出』と江藤さんの『夏目漱石』を思い出していたんです。

ここまで誰かが誰かを思い、言葉で伝わるものなんだと感動した
あの時が蘇えったんですね。

なので、これから、志村さんを知った人や、フジフジ富士Qで興味を持った人が、この庵主さまのブログにたどり着いてきてほしいなって心から思っています。

投稿: 千帆 | 2010.03.23 21:58

庵主様、こんばんは。
雑誌VERYの藤巻さん掲載されていたインタビューを紹介してくださってありがとうございました。

先日の記事は「マタイ受難曲」についてでしたね。私も大切に思っている曲です。

吹奏楽の分野でAlfred Reedという作曲家が、バッハのコラールをとてもいい感じに吹奏楽用に編曲したものが何曲かあり、マタイ受難曲のあの有名なコラールも編曲されています。私はテナーサックスを吹いていましたが、おいしい声部を吹きました。

また、私の大好きなポール・サイモンの中でも大好きな曲「American Tune」はこのコラールが元になっていますよね。そして一番お気に入りのバージョンがS&Gのセントラルパークのコンサートでのものです。すごくきれいなハモリです。いつ聴いても鳥肌が立ちます。お聴きになったことがあるでしょうか。そしてこのLDをおじさんからいただいたレミオロメンの前田少年は、とてもよく聴いていたとのことですよね。
なんだか繋がってくるんだなあって、この年になって思うことがよくあります。
長々とすみませんでした。
そして大切に思っているのにコラールの名前が出てきません。なさけないです。

投稿: 田中 | 2010.03.24 00:02

こんにちは~。
全国的に“春の嵐”ですね。

♪タイムマシン♪・・・この曲をこんな気持で
聴くことになるなんて。。。
「富士Q」は第二弾のアーティストの方々が
発表されましたね。
志村くんはやはりたくさんの方に愛されてたんですねぇ。
けれどかなり複雑な思いです・・・。
当日私は何を思い、何を感じ、どうなってしまうのか、
自分自身よくわかりません。
笑って、泣いて、飲んで・・・

投稿: kirari | 2010.03.24 06:56

30歳になってのクラス会は人生いろいろで楽しそうですね(そういう私は幹事なのに動かない・・・)
志村くんも皆さんに暴露され『あちゃー!』という感じでしょうか
今日は月命日ですね。
北海道はまだまだ桜は咲かないですが、今日は桜の花でも飾ろうと思います。
クロニクルが出た頃は聞き流していた『タイムマシン』(失礼!)
改めて歌詞を見直すと、心に響きますね
後悔だけはしないように頑張ります・・・

投稿: パッチ | 2010.03.24 12:47

千帆さん、やっぱりほめすぎですよ(笑)。
でも、自分なりにがんばります。
大切な物語の語り部になりたいと思っています。


田中さん、こちらこそありがとうございました!
「American Tune」、もちろん大好きですよ。
あのコラールは私も例のコラールコンサートで全曲弾きましたが、
半音ずつ下に転調していくんですよね。
そして、受難の直後だけすさまじい編曲になってます。
歌詞は全部違うので「受難のコラール」でいいのでしょう。
いちおう元歌は「血潮したたる主のみかしら」ですかね。
それにしても、前田くんがこの曲をそういうふうに聴いていたとは…
知りませんでした。
おじさんとはあの方かな?という感じです。
彼のまわりにはマニアックな方がたくさんおられるようで…笑。


kirariさん、私も同感です。
フジQ、いったいどういう気持ちになるのかなあ…。
毎日通る近所の場所でありながら、その日は特別な意味を持ちそうです。
やっぱり飲んじゃいますか!?ww


パッチさん、どうもです。
ここ富士北麓の気候は、札幌とほぼ一緒です。
今日も夜は雪になるとか。
ウチのあたりなんか、桜はゴールデンウィークです。
だから案外北海道とここは感覚的につながっているかもですよ。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.03.24 16:43

庵主さま、こんばんは。
追記は使ってしまったので、あとがきという名目で。
本当に最後にします。ごめんなさい。
大門のお墓参りの帰りから、志村曾に行った夜や、このブログの事を考えていて。
この喪失感はなんだろって。
私は中学で奥田民生『29』に出会って、その後ロック好きの兄に、ユニコーンやビートルズを教えてもらい、ELOやはっぴいえんどを知りました。
それまで本ばかり読んでいた私に民生さんが「書を捨てよ、ロックを聞こう」と言ったような衝撃でした。
中学でしたし、周りに共有できる人もおらず。

それからおとなになって、私が夢中になって聴いていたあの中学時代に、やっぱり山梨で、あの音楽を聴き、ギターを手にし、立ち上がっただろう志村さんが大好きなんですね。
彼の音楽にはただのそれらの“憧れ”ではない何かがあったと思う。
しかも、ロックの皮を破ると『在りし日の歌』の精神が“真ん中”にあった人の気がして。
こんな人、二度と出てこないなと、亡くしてから気付きました。
とても大切な青春時代を共有した友人と、才能あるミュージシャンを同時に失ったような不思議な気持ちです。
庵主さま、これからもずっと“大切な物語”を伝えていって下さい。
丸腰どころか裸のままで書きました。

投稿: 千帆 | 2010.03.24 21:25

千帆さん、最後なんて言わず、いつでも、裸じゃなくてもいいですから(笑)、いろいろ書き込んでください。
「書を捨てよ、ロックを聞こう」…いい言葉ですね。
「書」って実はライヴじゃないんですよね。
寺山もそういう意味で「町へ出よう」と言ったわけでしょう。
「ロック」は解放であり、ライヴなものの象徴です。
ところが、不思議なんですよねえ。
志村くんの音楽と言葉は、「書」でもあり、「ロック」でもあり、「町」でもあるんですよ、私にとって。
外に向き、内に向き、前に向き、後に向き…。
そこが魅力だと思いますし、歴史に残る偉業だと思うんです。
それも変に着飾っていない感じがする。
哲学的、文学的なロックは、今ある意味日本では流行りですが、他のバンドはなんとなく作り物のような気がするんです。
不思議ですね。
だからこそ、なかなか私のこの感覚を言葉にしにくくて、なんとなく歯がゆいのです。
なかなか、立派な語り部にはなれませんね。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.03.25 10:55

庵主さま、こんばんは。
実は土曜日に、お返事気付いたのですが、往復書簡はまずいなと。でも本当に、(何回目?)このコメント欄では最後にしますね。
そうなんです。兄はとにかくオールジャンル(映画、演劇、ロック、本)で詳しく、きっと寺山さんの影響だと当時から思っていて。何故か、そのフレーズが頭に浮かんで。
ロックは“解放”なんですね。
中学の時に感じたあの感覚はまさにそうでした!庵主さまの言っていた初恋の音楽。
きっと、志村さんも最後まで鮮烈に残っていた音楽体験だったと思うんです。“男の子は中学生のまま大人になる”ですよね?

彼の音楽と言葉には、内省、解放、「町」現実の世界、体験、いつか見つめてきた、忘れられなかったことまで。やっぱりソフト帽の青春の詩人なんですね。
それと先生、今は「ネットを捨てよ、町へ出よう」だと聞きました(笑)
また居心地の良い読者側に戻りますが、もちろん読んでいますしずっとこの随筆の“イチファン”です。
最後に。結婚記念日は忘れないでいて下さい!

投稿: 千帆 | 2010.03.29 20:07

千帆さん、おはようございます。
そう、男は初恋をずっと引きずって生きてるんです(笑)。
だから、今度の中学の仕事は楽しみなんですよねえ。
かといって、結婚記念日忘れちゃいけませんが…。

「ネットを捨てよ、町へ出よう」ですか!
たしかに、ひきこもるな!という意味だけでなく、
ネット社会は「ムラ社会」そのものですからね。
巨大な青森みたいなものですよ。
ある意味カオスな自然状態でもあるし。
その点、「ロック」は都会なんでしょう。
そうすると、究極は「ネットを捨てよ、ロックを聞こう」でしょうか。

往復書簡こそ私の理想ですから、気が向いた時、いつでもどこにも書き込んで下さい。
まさに、ライヴなロックを表現したいですし。
ノッてるかい!イェー!みたいな(笑)。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.03.30 07:38

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