東京大学入試問題(国語)より「プライバシー」
↓合格おめでとう!
昨年の「白」に続きまして…そう、まさにその続きのような問題。まあ、あいからわず東大はポスト・モダンなんだなと痛感。私の中ではとっくに終わってるんですが(笑)。第一問、阪本俊生さんの「ポスト・プライバシー」からの出題でした。
というわけで、今年もまた生徒と今年の東大の問題を解きながら、各予備校の模範解答を採点(!)しました。楽しかった。ちなみに最高得点はS台予備校さんでした。おめでとうございます。合格です。
第二問古文、第三問漢文は、いつもどおり平易な文章であり、問いもシンプル。満点狙わなければいけない問題です。第四問も文章自体は高校入試レベルです。小野十三郎さんの「想像力」、あまりに当たり前な内容に生徒たちも少しがっかり(笑)。もう少し発見のある文章だといいのですが…。
今日は第一問について、私の思ったことを書きましょう。短い文章ですからこちらでお読みください。
簡単に言えば、近代社会の成立とともに我々の内面が「プライバシー」として認識されたが、その後現代になり、情報化によって私たちの外に「プライバシー」が存在するようになったということですね。
去年の「白」のところでも書きましたとおり、ワタクシ流の解釈によると、近代化とは「コト」化です。その象徴が「ことば」すなわち「テキスト」です。いつも言うように、「コト」すなわち、我々の脳内の「概念」は、メディア(テキストなど)を通して「情報」となります。情報は一度生まれると絶対に変化しません。推敲や更新はされますが、それはまた別の「情報」が生まれているにすぎません。
そこが、自然たる「モノ」との大きな違いです。「モノ」は生々流転し、また死滅していきます。つまり「無常」なる存在なのですね。「もののあはれ」というのはそこに立脚した言葉です(皆さんそれに気付いていませんが)。
ですから、「コト」を残すことには勇気がいります。なにしろ永遠に残ってしまうのですから。特に現代においては、主にデジタル技術によって、「モノ」の無常性を乗り越えることが可能になりましたから大変です。劣化しませんし、完全なる複製があまりに簡単にできるからです。
それこそが、「白」における緊張感でありましたし、今回の「プライバシー」に関わる本質的部分なわけですね。お分かりになると思います。
近代化、すなわち「パブリック」が成立したのちに「プライベート」が対比的に生まれたというのも、いかにもアカデミックな単純思考ではありますが、まあとにかく当初の「プライバシー」は、たしかに個人の内面の問題でしたよね。つまり、自己の内面は、他者にとって常に「モノ(外部・不随意・不可知)」であったわけです(だから人を「モノ(者)」と呼ぶのだと、私は考えています)。
それが、主にテキスト(言葉)というメディアによって「コト」化されてしまって、どんどん蓄積され、さらに世界中に公開される可能性を付与されるわけですからね。それは緊張もしますし、プライバシーの侵害も憂慮されますよ。
ですから、この文章、まあ当たり前のことを難しく言っているだけとも言えます。それこそが「学問」のからくりであり、「東大」のからくりでもあるわけですが(特に文系…笑)。
昨日の話にも関わってきます。最近の若者の「空気を読む」人間関係ですね。それはそうですよ。今どきの若者がどうのこうのではなく、今どきの大人が用意してしまった「ネット社会」の中で、彼らは当然のごとく進化したわけですよ。なにしろ、彼らの人間関係はテキストに依存しまくっていますからね。
テキストという「コト」はとにかく残るんです。自分の意志に関係なく増殖するんです。だから、緊張するわけですよ。それが「空気を読む」ということです。そして、表面的で偽善的なテキストを並べるのは、それは「プライバシー」に留意しているからです。自分の本当の内面を「コト」として残さないように気をつけているのです。
私もこうして毎日とんでもない量のテキストを生み出し、そして世界に発信していますが、やはりそれなりの「緊張感」や「プライバシーへの配慮」があります。ある意味それとの闘いに疲弊しているとも言えます。いや、それとの戯れを楽しんでいるとも言える。
このブログ、なんだかメチャクチャ雑多な内容なわりに、1日1000以上のアクセスがあり、しかしその割にコメントがあまりつかず、もちろん炎上なんかもしないじゃないですか。これって、ある意味私の特殊なリテラシーによるものでもあるわけです(ホントか?)。
いわば「匙加減」とでもいうような、とっても人間的でアナログ的で、「モノ」的な要素で、機械的、デジタル的、「コト」的なネットの欠点を補完しているわけです(ホントか?)。
つまり、輪郭がはっきりしないように、あえてネタも雑多にし、意見も変幻自在で一貫性がないように努めている…。ですから、実際の私に会うと、みんなそのギャップに驚く…わけはなくて、実はこのブログのまんまの人間なんですよ(笑)。そういう意味では、私はネット社会向きの人間、つまり、「モノノケ」であるということしょうか。ハハハ。
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