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2010.03.16

『2012年の変化はすでに起きている』 船井幸雄 (徳間書店)

「百匹目の猿現象」が起こり、大難は小難になった
19862881 しい中学校が始まるにあたりまして、基本的な方針の確認作業をしています。
 公立中学校ではできないことをたくさん提供したいと思います。単に派手なイベントを催すとか、そういう次元でのことではありません。もっと基本的、根本的な人間教育の面においてです。
 その一つとして、大志を持った子どもたちを育てたいという大きな目標があります。私の考える大志とは、「社会に貢献する」「世界を良い方向に変化させる」という意志のことです。
 先日も、ベネッセの「あなたは40歳くらいになったとき、どんなことをしていると思いますか?」という調査結果がマスコミで報じられていましたね。なかなか面白い結果が出ていました。
Yd_student2 クリックしてご覧下さい。小中高全てにおいて、「親を大切にしている」「幸せになっている」「子どもを育てている」「自由にのんびり暮らしている」が圧倒的に多くなっていますね。
 これらは一つ一つを見れば、決して悪いことではありません。むしろ人間として正しいあり方と言ってもいいでしょう。
 しかし、違う見方をすれば、自分さえ良ければいい、自分の家族さえ幸せならいい、という考えであるとも言えなくもありません。その証拠に、「多くの人の役に立っている」の数値がずいぶんと低いですよね。これは正直びっくりしました。
 我が校はお寺の学校ですから、基本的に「利他」「他人の幸せこそ自分の幸せ」「情は人のためならず」「因果応報」などを教えていきたいと思っています。そういう意味では、この調査結果を見て、さらにその気持ちが強まったと言えますね。
 今の世の中が抱える問題、不安のほとんどは「利己」が原因です。もっとはっきり言えば、カネ(経済)と科学の行き過ぎというか、両者が「利己」の道具にされていることに全ての根源があるのです。
 今、小学校から大学まで、学校で教えられることは、いかにして「勝ち組」になるか、いや「負け組」にならないかということばかりです。もちろん全てがそうだとは言いませんが、多くの大人がそういう気持ちで生きているのは事実なので、結果として子どもたちにもそういう悪い波が伝わっているように思えます。
 ある意味その反動としての、「個人の(あるいは家族の)ささやかな幸せ」指向が強まっているとも言えますね。そこには一種の諦めが感じられます。
 それこそ「夢」がないということでしょう。別に金持ちになったり、有名スポーツ選手になったりすることが「夢」ではありません。もっと単純に、「自分のできることを精一杯やって、そしてそんなみんなが協力して、この世の中を正しい方向に変えていこう」というような「夢」、「大志」を持ってもらいたいのです。
 もちろん、子どもだけでなく大人にもです。
 そういう多くの人の気持ちが、実際に歴史や運命を変えて行くというのが「百匹目の猿現象」です。そういう方法での世の中の変革、幸福の追求の先頭に立っているのが、経営のカリスマ船井幸雄さんです。
 この本には、現在の船井さんの強い気持ちがしっかり刻み込まれています。カネや科学と伍するために、どうしても世界観が、宗教的、そしてある意味「トンデモ」的になりがちですが、私はこういう時代だからこそ、そうした「魂」や「祈り」というものを再評価すべき時だと思っています。日本や世界の歴史の中で、そうした「モノ」を排除して苦しんでいるのは、実はここ数十年の「現代」しかないのですから。
 公教育の現場では、やはりそうした「モノ」は排除されがちです。そういう話をするだけで問題にされてしまいます。ウチは私学ですしお寺の学校ですから、そういう点も必要があれば勉強させたいと思いますね。
 それ以前に、子どもたちには、船井さんの生き方に学んでもらいたいですね。「人の悪口は言わない」「誰に対しても平等に接する」「差別はしない」「人のいいところを見つける」「全てのことは必要・必然・ベストととらえる」「ポジティブに世の中を変える」…まさに、現代に必要な「智恵」でありましょう。
 私自身も、今年は「有意の人」になれるよう努力していこうと思っています。

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コメント

昨今、自分さえ良ければそれで良い。
人の揚げ足を取り、人の利益を自らの物とし、人の幸せを願わないで、人の不幸を嘲り笑う人の人口比率が多くなったなぁ…なんて思います。

きっと、そんな人生ならば、どこかで因果応報になると思います。

しかし…多いですよね。因果応報でも気付かないこと。
それが、輪に輪をかけて、大きくなって、まさか!日本全体に及ぶ因果応報で気付く出来事が起こった後じゃ、もう遅かった…ってならないように、私達、利他を重んじる心に気付いて生きている人達が、教えて行かなきゃ、本当の意味で生き残れない時代になっちゃった…と感じます。

だから、これからの日本、う~ん…全体的に、生き残れる人って

船井幸雄さんの教えを忠実に実行し、重んじている人だけだと感じます。

山口先生の文で、再度再確認しました。

じゃないと、自己チューな生き方にまみれてしまい、もしかすると、自分の感じている生き方が、間違っているような錯覚さえ覚えてしまいます。

それだけ、自己チュー汚染が酷い世の中になったんだなぁ…って感じます。

私は、まだまだなので、やはり汚染に押し潰されそうになりますが、自分の意思をしっかり心に根づくように、毎日をしっかり、着実に生きなきゃなぁって感じます。

投稿: 里沙 | 2010.03.17 16:55

里沙さん、こんにちは。
そうですね、最終的には正しい人間、正しい祈りを持った人間が生き残ってほしいものです。
私も精進します。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.03.18 17:44

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