病院 vs 権現さま
山梨県立中央病院に、下の娘とカミさんを迎えに行ってきました。下の娘が鼠径ヘルニアの手術で2泊3日の入院をしていたのです。
まあ、「脱腸」ってやつですね。女性の鼠径ヘルニア率は2〜3%だといいますが、上の娘も手術しましたし、私の姉もそうでしたから、けっこう我が家系の脱腸率は高い方だと思います。ちなみに男性の鼠径ヘルニア率はなんと25%以上だとのこと。4人に一人ですよ。知りませんでした。
ちょっとした設計ミスという程度ですから、手術と言っても軽く切って貼るようなものです。私も別に心配もしていませんでしたし、娘本人もママとのお泊まりということで、なんだか非常に楽しみにしていました。
手術はもちろん問題なく終わったのですが、麻酔で寝ていた娘は寝ぼけて、というか全然記憶がないらしく、術後「手術は?今から?」と言っていたそうです(笑)。
鼠径ヘルニアは病気というより、先ほども書いたように設計ミスのようなものですから、自然治癒はしません。ごくまれにそれが原因で面倒な病気になることもあるようなので、幼いうちに修繕しておいた方がいいですね。場所が場所ですから、大人になるとなんとなく躊躇されますし。
で、そんなことをカミさんのお母さんに報告したところ、驚くべき事実が判明いたしました(笑)。
以下、電話の内容を復元します(秋田弁のまま)。カ=カミさん 母=カミさんの母
カ「○○(娘の名)、しゅじゅつするがら、にゅういんさねねぐなった」
母「あら、なしてよ?」
カ「だっちょうだど。ひゃぐにんにふたりしかならねなだど」
母「あら、おれもだ」
カ「え〜しらねがった、いづしゅじゅつしたなよ」
母「しゅじゅつなさねえ。べってじぎ、ばあちゃんどもんぜんのごんげんさまさおがんできた…」
カ「え〜、しゅじゅつさねぱ、ぜったいなおらねんだど」
母「あや、おれなばえおの。おしてやればひっこむがら…」
お分かりになりますか?簡単に言えば、実は義母も鼠径ヘルニアであったと。そして、病院には行かず、村の権現様に拝みに行った。今でも出っ張ったら押して引っ込めているということです(笑)。
いやあ、「権現様」ですか!?こっちは最新のホテルのような病院で至れり尽くせりの入院、最新医療の手術をしました(上の娘は静岡のこども病院でした)。それに対して、なんと古典的な対処法でしょう。素晴らしい!
考えてみれば、昔の日本にはそんな手術はありませんでした。出たら手で引っ込めるしかなかったわけですよね。あとは、神仏にお願いするしかありません。みんなそうやっていたはずです。
もう少し前なら、病気やケガは「物の怪」のしわざでしたから、それこそ祈るしかありません。貴族なら、医者を呼ぶかわりに坊さんや修験者を呼んで加持祈祷したわけです。庶民は村の社や祠に行って拝むしかありません。
たしかに、今でも、あの神社は「目の神様」、あの地藏さんは「皮膚病の神様」などと、分業の痕跡が残っています。大きな寺や神社ですと、総合病院よろしくいろいろな「科」が集められていたりしますね。
カミさんの実家があったあたりは、本当に時代を超えた田舎、絵にかいたような日本の原風景が広がるところです。いまだに「もののけ姫」の世界ですから。
しかし、なんでも、科学や医療で片づける(すなわちお金で解決する)のではなく、そういう神仏に自分の運命を託す気持ちというのも大切なような気がします。我々現代人はすっかりそれを忘れてしまっていますね。子どもたちもそうです。「想像」や「妄想」、「祈り」、そして「畏怖」というモノから遠ざかっているのが、よくわかります。その結果、ウチの娘たちも「感謝」の気持ちが不足しているように感じます。
「コト(自己・内部・情報・随意・不変)」と「モノ(他者・外部・現象・不随意・無常)」のバランスが崩れているんですよね。特に、デジタル化による「コト」化の行き過ぎは、たとえば病気やケガに対する人間の抵抗力、あるいは自然治癒力を奪っているように思えてなりません。今こそ、「権現さま」パワーを見直す時なのかもしれません。
この笑い話は、実は深刻な問題をはらんでいるのでした。
| 固定リンク
「育児」カテゴリの記事
- 追悼 のっぽさん(2023.05.11)
- 柳沢正文 vs 落合陽一 『睡眠の謎』(2023.04.26)
- 「や〜だ」はどこから来るのか(2023.02.24)
- 田嶋陽子が説く人権・男女(2022.09.26)
- ひろゆき&成田悠輔 in東大…ヤバすぎる日本の教育(2022.09.05)
「心と体」カテゴリの記事
- BossB 『全てのビジネスは”宇宙思考”に学べ』(2023.05.25)
- 木内鶴彦さんとナオキマンの対談(2023.05.22)
- Style2030 賢者が映す未来〜竹倉史人 (BS-TBS)(2023.05.14)
- 『ビューティフル・マインド』 ロン・ハワード監督作品(2023.05.02)
- 『プルーフ・オブ・マイ・ライフ』 ジョン・マッデン監督作品(2023.05.01)
「旅行・地域」カテゴリの記事
- 英語の語源が身につくラジオ(堀田隆一)(2023.05.17)
- 物件ファン(2023.05.16)
- ベイスターズ 劇的サヨナラ勝ち!(2023.04.27)
- 柳沢正文 vs 落合陽一 『睡眠の謎』(2023.04.26)
- 若者との対話 in 石和・甲府(2023.04.25)
「自然・科学」カテゴリの記事
- BossB 『全てのビジネスは”宇宙思考”に学べ』(2023.05.25)
- 『基礎科学としての情報〜エントロピーと生命、超次元複雑性と生成AIの未来と私達』 Dr.苫米地(2023.05.24)
- 木内鶴彦さんとナオキマンの対談(2023.05.22)
- 紙ストロー?(2023.05.20)
- Style2030 賢者が映す未来〜竹倉史人 (BS-TBS)(2023.05.14)
「歴史・宗教」カテゴリの記事
- 『基礎科学としての情報〜エントロピーと生命、超次元複雑性と生成AIの未来と私達』 Dr.苫米地(2023.05.24)
- 木内鶴彦さんとナオキマンの対談(2023.05.22)
- 英語の語源が身につくラジオ(堀田隆一)(2023.05.17)
- Style2030 賢者が映す未来〜竹倉史人 (BS-TBS)(2023.05.14)
- 『オスカー・ピーターソン ジャズ界の革命児』 バリー・アヴリッチ監督作品(2023.05.07)
「モノ・コト論」カテゴリの記事
- 『基礎科学としての情報〜エントロピーと生命、超次元複雑性と生成AIの未来と私達』 Dr.苫米地(2023.05.24)
- Style2030 賢者が映す未来〜竹倉史人 (BS-TBS)(2023.05.14)
- 『東京画』 ヴィム・ヴェンダース監督作品(2023.02.10)
- 『光を追いかけて』 成田洋一監督作品(2023.01.05)
- 女性配偶者を人前でなんと呼ぶか(2022.12.06)
コメント
おはようございます。
これで謎がとけました!
父がなんだか不可解な行動をトイレでとってると、家族で噂になりました。(はるか昔の話ですが)
そうだったんだ!
自力でひっこめていたなんて!
そんな神業的なことができるのですね(^○^)
ありがとうござりまする。
>デジタル化による「コト」化の行き過ぎは、たとえば病気やケガに対する人間の抵抗力、あるいは自然治癒力を奪っているように思えてなりません。
おっしゃる通りですね!
特に日本人はきれい好きだし、さらに心配ですよね。
昔からの病は治っても、次から次へ知らない病が・・・
例えば自力で思い出さなくても、PC検索でどんぴしゃ!
これでは「灰色の小さな脳細胞」はどんどん貧相になっていくのでしょうか。
昨日息子が"IKEA"へ連れってくれました。
一度行ってる(電車)息子ですが、車では初めて。
勿論ナビがありますから、特に心配なく出かけましたが、ナビの通りってなんだか変でした。少し古いため?
以前なら車にに乗る男性(特に)は初めての場所もチョチョイのチョイと感じてました。
本人はそうでもなかったのかしら?(笑)
ナビに頼りだしたら、これなしではあかんと言ってる知り合いが多い昨今です。
たくさんの問題を含んでいるデジタル化ですね。
真面目にもジョーク的にもね(>_<)
私のような機械オンチでも今もパソコンの前にいますものね(^^)
IHのレンジなんて操縦不可能です。(笑)
最後になりましたが、娘さんお大事にです!
投稿: あんりまー | 2010.02.07 10:19
あんりまーさん、こんばんは。
そうでしたか、お父様。
知らない方が良かったかも…笑。
最近はデジタル機器が「コト」をどんどん為していきますので、男子の「シゴト」がなくなっちゃってるんですよね。
女性も、男性よりもパソコンやケータイの方を頼りにしてますよね。
唯一女性に優越していた部分を失って、我々男はすっかり元気なくなってます(笑)。
私はライバルGoogleに負けないよう頑張ります!ww
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.02.07 21:39
秋田スゲイ!
素晴らしく読みづらかった( ̄○ ̄;)
先生の通訳流石です!
娘さん小さいのに偉い。
よく頑張ったなぁ。
お大事にして下さいね。
投稿: ノリ | 2010.02.08 09:49
中央病院にいらしたんですねー。
病院は違いますが、うちの父親も胃のポリープを除去するため2泊3日の入院をしていて、6日に退院でした。
ちょうど同じ時期でしたね。
といっても内視鏡でチョチョッと(かどうか判りませんが)取っちゃうだけなので、大した事なかったのですが。
週末は風が冷たくて、甲府市内もかなり寒かったですよね。強風の中の退院お疲れ様でした。
秋田弁の会話、黙読しただけでは〝?〟だったので、声に出してみました。
私意外に上手いかも!!(笑)
なるほどー。権現様ですか。押して引っ込めてましたか(笑) 逞しい!!
人間は本来、逞しく健やかに過ごせるものなんですね。
神仏に自分の運命を託す気持ち・・・大切かもしれませんね。
確かに現代に生きる私達は過保護なのかもしれませんが、恵まれている証拠なんだと思いますが。
権現様パワー、ちょっと考えさせられました。
娘さん、お大事になさってくださいね。
投稿: yuki | 2010.02.08 13:40
ノリ、yukiさん、ありがとうございます。
娘はもう全然平気です。
いや、全然秋田弁わからないんですよねえ。
これを書くにも、とにかくゆっくり言ってもらって、それでもずいぶんと聞き間違いがあるというか、50音では表せない音ばっかりで…。
東北はまだまだモノノケがたくさん息づいています。
遊びに行くのが楽しみなところですよ。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.02.08 20:34
こんばんは。
お嬢さん大変でしたね。
脱腸って男の人がよくかかるのは知っていましたが、女の人もかかるんですね~。
昔勤めていた会社のおじさんが、顔を赤らめながら説明してくれたのを思い出しました。(部位とかしまい方だのいろいろと)
奥様は秋田のご出身ですか!はーびっくり。
秋田は夏にとあるご縁で行ってきました。
そうですね、まさしく日本の原風景。行ったのは海沿いの町なんですが、これまた幻想的でした。わかりやすく話してくれるうちはいいんですが、慣れてくると秋田弁の通訳してもらわないとわからないです。
素敵なところです。こちらも神がかり的な雰囲気ありますよね。超人ネイガー!秋田ばんざい!
投稿: タラ | 2010.02.09 21:52
タラさん、コメントありがとうございます。
いやはや、秋田はいろいろな意味で外国ですよ。
しかし、一方で妙に懐かしい「日本」が息づいています。
私は本当に大好きです。
特に、カミさんが生まれ育った羽後町はいろいろな意味ですごすぎです(笑)。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.02.10 17:56