だってなんだかだってだってなんだもん
だってなんだかだってだってなんだもん!
これは名言ですね。こう言われると、我々(特に男性は)なんにも言えません。やるな岩崎富士男さん。
この「だって〜もん」は、子どもや女性がよく使う「言い訳」「甘え」「許しを乞う」フレーズです。
たいがいは、「だって知らなかったんだもん」とか「だって姉ちゃんがいじめるんだもん(byウチの下の娘)」みたいな使い方をしますよね。つまり、「知らなかった」「姉ちゃんがいじめる」のような理由、特に自分にとって不本意なこと、あるいは他者に責任があるようなことを挿入して、「言い訳」「甘え」「許しを乞う」意味を相手に伝えます。
しかし、その肝心の部分をですね、「だって(なんだもん)」という、究極にナンセンスで、文法的にもイリーガルな言葉で埋めてしまっているのが、この名言なのです。
実は、私の「モノ・コト論」で考えますと、これは実に深い意味がある表現になるんです。そう、語尾の「もん」というのは「もの」の音便形なんです。たしかに、昭和の上品な女性なんかは「〜ですもの」とか言ってましたよね。
それで、私の説では「もの」は「外部・不随意」を表す言葉ですから、ここでも「自分にとって不本意」「思い通りにならない」「自分の外部(他者)の責任」というニュアンスが生きていることがわかりますでしょう。どうですか?
「だって(=だとて)」と言って、相手の言動に対して不承知であることを表明して、その次に「なんだか」という、まさに「モノ」的な心情(「物憂い」とか「ものさびしい」とか「ものぐるほし」のような接頭辞の「もの」もそういう感情以前の何かを表します)を表す言葉を持ってきて、そしてまた、「だって」を重ねながら、それ自体、つまり「不承知」「不本意」「不随意」自体を自己正当化の理由にしてしまっている。もう本当に(女性の)究極兵器であることがわかりますよね。ハニーの強さはこんなところにあります。
実はキューティーハニー以前にも、アニメの主題歌でこのようなフレーズが使われたことがあります。
こちらも皆さん御存知の「アタックNo.1」です。
こちらでは、「だって」はありません。「なんだ」もありません。「だけど、涙がでちゃう。女の子だもン」です。シンプルですが、「もの」の性質をよく表していますね。「女の子」に生まれたのは自分の意志ではないし、「涙」を制することができないのも、個人の問題ではないのです。あくまで、理由は「女の子」であることです。
その後もキューティーハニーと同時期に、麻丘めぐみさんの「女の子なんだもん」という曲がヒットしましたっけ。
しかし、やっぱり「だってなんだかだってだってなんだもん」にはかないませんよね。もちろん、ハニーの歌詞全体に「女の子」が主題になっているわけですが、その、男性諸氏にとってはすでに「もののけ」であるところの「女の子」、それさえを軽く超えた究極の「もの」的実在(存在ではなく実在)が表現されていると思うんですよね。これは究極です。極点です。
それにしても、最近の「女の子」はこういうフレーズを吐きませんねえ。男に媚びたりしません。最近の女子は、「男の子」に対して、「おい!てめえのせいだぞ!」みたいな口ききますから(苦笑)。
昔昭和の「女の子」だった一部のオバサンが、こういう究極フレーズを使って結婚詐欺をしたり、カネをしぼり取った上に殺しちゃったりするくらいですかね。
いったい「女の子」はどこに行ってしまったのでしょうか。
いや、ホント学校の生徒なんか見てると、「男の子」の方が「だって〜だもん」的なんですよ〜。すぐ「涙が出ちゃう」し。バレンタインのチョコを手作りする計画立ててるのも男の子だし…世も末じゃ(笑)。
「男」もどこに行っちゃったのかなぁ…。
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コメント
じゃあ 私はめっちゃ女の子でしたね!
こらえてても涙がでちゃう
だって受験がつらいんだもん★
て感じならよかったんでしょうか
投稿: まき | 2010.02.12 20:41
アタシこれめちゃ使ってるよ
女の武器使ってたのねー、アタシも。
投稿: カオル | 2010.02.13 22:38
世代の違う教え子二人、コメントありがとう。
二人は去年新宿で会ってるんだよ。
まきの涙はなんかむかつくんだよな(笑)。
そして、カヲルは女の武器っていうより、オヤジの武器だよ(笑)。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.02.14 20:51