『世界遺産アンコールワット展-アジアの大地に咲いた神々の宇宙-』 (山梨県立博物館)
今日は笛吹市(旧御坂町)に出張。思ったより早く到着してしまったので、お隣の山梨県立博物館で「アンコールワット展」を拝観してまいりました。
「アンコールワット展」が開催されているのも忘れていたくらいですから、神々との偶然の出会いでした。しかし、偶然は必然。言葉にはしにくいけれども、いろいろなモノを感じることができました。
写真は、三島由紀夫の戯曲「癩王のテラス」のモチーフとして有名な「閻魔大王(マヤ天)」です。こんな、カンボジア国宝級の神像を、こんなに近くで見られるとは…。そう、今回とにかくびっくりしたのはですね、展示方法なんです。
世界のマスターピースたちが、我々人間に混ざって、普通にそこに「いる」のです。ほとんどの展示物(と言うにはもったいない)が、なんの囲いもなく、我々と隔絶されることなく「いる」のには、正直びっくりしました。全く想定していなかった図です。
いやあ、大都市ではこれは無理でしょうね。だって、どれにも簡単に触れられるんですから。もちろん、横や後に回ることもできます。
ある意味、これは本国での展示や、それ以前の信仰の対象としての存在の仕方を大きく超えていますよね。私はちょっと、いらぬ心配までしてしまいましたよ。いろいろな意味で。
そして、どうしても触れてみたい欲求が…笑。もちろん、自重しましたが。
なにしろ、それぞれの神像や仏像が色っぽいものですから。三島の気持ちがちょっと分かる。
特に背中ですね。今回は背中に魅せられましたよ。砂岩が作る滑らかな曲線と滑らかな皮膚。あと、背中の立つ角度ですね。これは神と仏(ブッダ)でそれぞれ違うので面白かった。なるほど、ヒンドゥー教と仏教の構えの違いか。
それから、なんか今さらという感じですが、日本にもずいぶんとヒンドゥーが入ってきていることを知りました。というか、山梨にもです。そのあたりを「山梨県立博物館」らしく注目してくれるとさらに良かったのになあ。
ざっと見ただけでも、山梨にも多く見られる民間信仰とのつながりがいくつもありましたよ。双体道祖神や馬頭観音、牛頭天王、もちろん閻魔様も。考えてみれば、山梨は石像物の宝庫ですからね。日本でも有数の「石」文化圏です。私が学芸員だったら、そういう視点も扱ったと思いますよ。もったいない。網野善彦さんも、きっと最初にそういう発想をするでしょう(たぶん)。
ところで、今日のこの偶然の出会いですが、やっぱり昨日からの流れからすると必然ですよね。私のそういう「眼」がしっかり開かれていたからです。昨日の「霊界物語」講演会の中にも、こうしたヒンドゥーと仏教の神仏が登場していたと言えば登場していました。
とりあえず、そういう「霊脈」にアクセス中だったわけですから、今日図らずもこの生黄泉の国で出会ったアンコールワットの神仏たちが、これまた一つのデバイス、インターフェイスのように働き、私をあちらの世界に誘ってくれました。
そうそう、山梨と言えば、「宮下文書(富士古文献)」とクメール文化との関係も考えなくてはなりませんね。それ以前に、両者におけるラーマーヤナの影響も見落としてはいけません。ま、さすがにそういう視点で展示はできませんか(笑)。さすがの網野さんも、それはちょっと…とおっしゃるでしょう。中沢新一さんなら喜ぶかもしれませんが。
いずれにせよ、この生黄泉の甲斐の国に、こうした異国の神仏が集合して習合している様子は、実に壮観でありました。意外に彼ら、居心地が良さそうでした。とりあえず東京なんかよりは、いいでしょ?
この想定外の出会いのおかげで、そのあとに控えていた現世的な本業(つまり出張先の仕事)が、なんとも暴力的に瞑想を誘うものとなりました。アンコールワットの神仏たち、案外「閉眼」が多かった。その影響もあってか、私もまた「閉眼」してしまったのでした(笑)。あの難解さ、不可解さ、そしてある種の脱力感は、まあ、「霊界物語」とも言えないことはありませんが…。
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