『謝』
昨日のアントニオ猪木さん67歳の誕生日パーティーの引き出物の一つが、「本格米焼酎 燃える闘魂」でした。そのラベルが左の写真。
昨日のリング上でも「謝」という言葉について語っていた猪木さん。「感謝」という意味で、この文字を使っているとのこと。
たしかに、現代中国でも「シェーシェー(謝謝)」という言葉がありますね。私たちは、それは「ありがとう」「thank you」の意味であると思っています。それが微妙に違うらしいという話は、最後にとっておきます。
というわけで、今日はこの「謝」という中国の文字について考えてみようと思います。
実は、この「謝」という文字、漢文のテストにもよく出るんです。いろいろな意味で使われるので。そろそろ国立の二次試験ですから、受験生の皆さんはこの記事を読んでおくと得をするかもしれませんよ。
この「謝」という漢字、言偏に「射」と書きます。形声文字ではありますが、旁の「射」は単なる音符ではないでしょう。なんらかのイメージをもってこの字を使ったと思われます。では、「言葉を射る」とか「言葉において矢を射るようなこと」とはいったい何なのでしょう。
これはですね、本国の方でもあまりよく分かっていないようなんです。でも、今日はあえて私の考えを書かせていただきますね。たぶん当たらずとも遠からずだと思います。
古代中国では、大切なお客様を迎えた際、友好の気持ちを伝えるために、弓で矢を射る儀式を行なっていたようなのです。たしかに今でも、外交儀礼の中で礼砲が撃たれることがありますよね。一見なんだか物騒なような感じですが、相手とは違う方向に砲弾を放つことによって、交戦意志のないことを表すのだと思います。武士が刀を腰からはずすようなものでしょう。
礼砲には、祝砲とともに弔砲というのもあります。主に戦争で亡くなった兵士を弔うために撃つものですね。これも洋の東西を問わず行われています。
いずれにせよ、こうした礼砲には「相手に意を尽くす」という意味合いがあるのですね。その原形のようなものが中国にもあったわけです。弓矢を空に向けて射たと。
その礼射とも言うべき実際の行為の代わりに、「言葉」でそうした気持ちを伝えるのが「謝」なのではないかと考えたわけです。
実は「謝」という漢字には、「感謝(礼を言う)」とか「謝罪(わびる)」とかいう意味のほかにも、大切な意味があります。それは「代謝」の「謝」です。実は古くはこの用法の方が多かった。「代謝」の「謝」とは、「去る」とか「移り変わる」とか「死ぬ」とか「衰える」というような意味です。
これも先ほどの「弔砲」ならぬ「弔射」から来た意味ではないかと考えられます。人が最も「意を尽くす」のは、別れの時ですよね。だいたい、その時には、私たちは「ありがとう」か「ごめん」を言うものですし。
複雑な他民族環境にある大陸の国のご多分にもれず、中国の歴史はほとんどが戦争の歴史です。日本のような平和な島国の方がずっと特殊です。ですから、日本人の「ありがとう」と「謝」の意味は当然違ってきますね。
あえて言えば、「謝」の方が、ずっと「他者性」が強い言葉なんです。どちらかというと非日常的な言葉(文字)です。ですから、中国語の「謝謝(シェーシェー)」は、日本語の「ありがとう」とは完全イコールにはなりません。
中国から来た生徒に聞くと、「謝謝」の方がずっと堅苦しく感じられるらしい。他人行儀な感じ。たとえば、友だちどうしとか家族の中とかでは使われないと言います。まあ、「ありがとう」も肉親や親友どうしではちょっと使うのが気恥ずかしい言葉ですが。
中国の方はそんなに意識していないと思われますが、やっぱり儀礼的、「礼射」的な語源意識(無意識)が残っているんじゃないでしょうかね。そう考えた方が面白いですし。
というわけで、アントニオ猪木さんが「謝」と言いますと、やっぱりなんか重い感じがします。そして、なんとなく「弓を引くストレート(パンチ)」を想起させます(笑)。いや、冗談じゃなくて、猪木さんの「闘魂注入ビンタ」なんかも、多分に儀礼的、祝祭的な雰囲気を持っていますからね。
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