« 卒業式…そして、鹿刺し | トップページ | W.F. バッハ 『オルガン作品集』 (J. ブラウン) »

2010.02.28

『モデル失格〜幸せになるためのアティチュード』 押切もえ (小学館101新書 )

09825024 「師失格」…うぅむ、正直この「モデル失格」レベルの内容なら、私にも書けるかなあ。
 今日は日直という仕事で一日学校におりました。昨日の卒業式を終え、今日をはさんで明日からは中学の仕事に邁進します。というわけで、今日は正直まったり過ごしました。午前中に本を3冊読みました。そのうちの一冊がこれです。たまたま机の上にあったので。
 押切もえちゃん…いや、もうもえさんですかね…もえさんについては、えぇとですねえ、別にファンでもなんでもありませんし、だいいち、私の世界とはあまりにもかけ離れたところにいらっしゃる方じゃないですか。だから、この本を私が読んだということに関して、違和感を抱かれても仕方ありません。
 しかし、実は彼女に関するアイテム、情報の中でも、かなりマニアックな方に属すると思われるDVD「『愛ゆえの孤独 〜太宰治の世界〜』を買い、記事にしている私としては、やっぱりこのタイトルには期待しちゃいますよねえ。
 彼女はずいぶんとたくさんの太宰作品を読んでいらっしゃるようで、たぶんその数は私よりも多いことでしょう(私は案外読んでいないのです)。ですから、彼女が「人間失格」のタイトルを模してこの本を書いたとしたら、それはやはり太宰の「人間失格」の内容を模した内容になっているはずだと、まあ当然のように考えたのです。
 で、結論から言いますと、彼女自身、いや、おそらくそうではなくて、押切もえという商品の周辺の人たちにそれを許す勇気がなかったのでしょう。ある意味中途半端な作品になってしまいました。
 その中途半端とは、大きく二つの点においてです。それも「人間失格」に重ねて説明しましょう。
 まずは、その「さらけ出し度」が低すぎるという点です。私としては、かねてからウワサになっていた家庭環境のことや高校時代のこと、恋人の死や、最近の野球選手とのスキャンダル(?)などが、赤裸々に綴られていることを期待していたのです。なにしろ、「人間失格」を知りつくした人の「モデル失格」ですから。
B000njm35s09lzzzzzzz しかし、残念ながら、そこまでの「失格」要因は書かれていませんでした。まあ、ある意味「普通」の「欠点」ばかり。人見知りするとか、字が汚いとか。そんなのオレも一緒だよ(笑)。
 それでまあ肩透かしを喰らったような感じでしたよね。残念でした。彼女ももう30になり、モデルとしても全く違う領域に入っていかねばならないわけで、そのためにも、今までの「カリスマ」のイメージを払拭、いや捨て去るべく、人間「押切もえ」の「汚い」部分をあえて出してくれるのかなという、浅はかな期待を抱いたのが間違いだったのでしょうか。
 いや、私はですね、やはり「美」をあくことなく希求する「モデル」という仕事だからこそ、年齢を重ねてから生き残るためには、そのくらいの勇気が必要だと思ったのです。それが戦略的にも間違いでないと、ま、シロウトはそう思ったわけです。今までのファン層、場合によっては純粋な女性層までかなぐり捨てて、人間「押切もえ」の魅力、それも「負」の部分をも含めて共感を得るような魅力で行くのかなと。でも、それはプロの方々からすると、やっぱり間違いなのだということでしょうか。
 そして、もう一つの点。それは、私がいつも「人間失格」について言っていること、すなわち「人に助けてもらえる究極の魅力を持って生まれた(つまりはカッコイイあるいはカワイイ)」ことを基底とする「他律的な社会性自慢」という側面です。私は前述の「不幸自慢」と、その裏返したる「幸福自慢」に期待したのですよ。だって、「人間失格」ってそういう話ですから。
 そういう面でもちょっとパンチに欠けましたね。ま、この二点は裏表の関係ですから、当然と言えば当然ですけど。
 というわけで、基本、若い女の人たち、モデルに憧れている人たちとか、美しくありたいと思っている普通の女性たちの夢を壊さず、一方で希望を与える「ポジティヴ・シンキング」の一冊となっています。それはそれで芸能人本として十分に機能していると思いますが、やっぱりオヤジ的な興味からすると、ちょっと物足りなかったかな。
 ぜひ、あと8年くらいして、太宰の失格年齢になった頃に、「モデル失格」ではなくて「人間失格」を書いていただきたいですね。
 まずはご結婚されるとよろしい。この前、映画「人間失格」のトークショーかなんかで、「計算高い男には気をつけます」とおっしゃっていましたが、本当の「人間失格」を目指すなら、あえて「計算高い男」にだまされてみるか、あるいは自分が「計算高い女」になる必要がありますね。
 そう考えると、やっぱり山崎富栄はすごかったなあ…両方兼ね備えている感じがします。ぜひ、もえさんにも「恋の蛍」を読んでいただきたい。ある意味、同じく美を追求した女性だったわけで…。

Amazon モデル失格

楽天ブックス モデル失格

不二草紙に戻る

|

« 卒業式…そして、鹿刺し | トップページ | W.F. バッハ 『オルガン作品集』 (J. ブラウン) »

ファッション・アクセサリ」カテゴリの記事

芸能・アイドル」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

文学・言語」カテゴリの記事

コメント

前略    薀恥庵御亭主  様

「坊主失格」・・・
適任者であります。笑

「政治家失格」でいえば
「高速道路」の無料化。

「失格坊主」の愚僧が
いうのも「アレ」なんですが
「愚策」だと感じています。

この世に・・・
「タダ」ほど怖いものは
ありません。
キャッチセールスの
無料商品同様・・・「裏」
が必ずあります。苦笑

私の痔論× 持論は・・・
「高速料金は現行の三倍とし
トラック等の流通関連車輌は
無料とする。80歳以上の
高齢者は拘束× 高速道路の
使用を禁ずる」であります。

そうすれば絶対に刑期が×
景気がよくなります。

当選の為だけの・・・
「御機嫌伺い政治家」は
「立候補者失格」であります。笑

宰相おじさん        拝


投稿: 合唱おじさん | 2010.03.03 07:59

合唱おじさん様、おはようございます。
なんだかんだ言って、人間は一度「失格」しないとダメみたいですね。
失格してようやくステージに上がれるというか。
私もここまで立派に失格してきたので、そろそろ人生頑張ります(笑)。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.03.04 08:43

山口先生お久しぶりです。年度末は、なかなか忙しいです。

ダメダメな人生でダメダメな人間失格だった私は、ダメダメだったからこそ、今の私が在ると思っています。

だから、太宰治の人間失格の主人公はまんまな私なんですよね(笑)

しかし…彼は、本当の本質を知りながら、そのことを嘲りわらうもの達への答えとして、闇に自らを投じた。

だから、人間失格者は本当のこころを持っているんだって思うんです。

ダメダメ男だった主人公に惹かれた女達の気持ちも分かります。何故なら、私も世間から罵られるような人に惹かれ、罵られるような恋愛に陥り、狂った経験があるからです。その時は間違った道を歩いたかも だけど、平坦で、ただ単に上辺や人聞きのよい、あたかも人間失格者には、こころの中の泥々とした感情や、気持ちは分からないと思います。

真に理解してくれる人は、一度は、泥々とした人間失格者になった者だと私は思います。

だから、私は、あたかも人間失格者から、自分が罵られても、傷付いても、否定されたとしても、自分の闇は隠さないでいます。

話はずれますが
なんだろう。この話を書いている時に、ずっと、東京事変の新譜、スポーツの中の「生きる」がぐるぐるしてました。

やはり、東京事変には、当時の匂いを感じます。


そういや、スポーツのスペシャルthanksのところに志村さんの名前がありましたよ☆

投稿: 里沙 | 2010.03.04 20:46

拝啓   薀恥庵御庵主  様

いよいよ・・・
新しき「道」が始りますね。
益々の「御活躍」を祈念
致しております。

人間は「失敗」の土台の上に
人生が在る様に思われます。

長いこと「話芸」に関心を
もって暮らして参りましたが
なによりも・・・
大切なのは「おひとがら」。

落語の「柳田格之進」「芝浜」
「唐茄子屋政談」 「子別れ」
「文七元結」  「ねずみ穴」
・・・すべて一度「人生失格」
を味わった人の「しあわせ」を
描いております。

愚僧も  「人情厚き」人生を
送りたいと存じます。

合唱おじさん      合掌


 

投稿: 合唱おじさん | 2010.03.05 08:00

里沙さん、合唱おじさん様、コメントありがとうございます。
まったくですね。
やはり人間失格しなきゃダメですよ。
それがその人の味わいや優しさを生み出すと思います。
そういう意味では私も積極的に失格していきたいですね。
失敗して助けられた経験がないと、人情は生まれませんから。
志村くんの歌にも、昔のひとの話芸にも、そういう「弱さ」があって良かったなあ…。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.03.05 17:19

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『モデル失格〜幸せになるためのアティチュード』 押切もえ (小学館101新書 ):

« 卒業式…そして、鹿刺し | トップページ | W.F. バッハ 『オルガン作品集』 (J. ブラウン) »