『Twitter社会論 新たなリアルタイム・ウェブの潮流』 津田大介 (洋泉社新書)
オバマ大統領がTwitterに初投稿というニュースが。
私はいまだツイッターには参加していません。見るだけです。やってみればその面白さや可能性がわかるかもしれませんが、とりあえず旧メディアであるこの「古典的ブログ」という形式が自分には向いているような気がします。
基本的につぶやきを公開することにまだ抵抗があるんですね。ある意味まとめあがっていない思考の断片を披瀝する価値がいまいち分からないのです。
この本を読めば、それがどんなにクリエイティヴな世界であるか、だいたい想像できます。しかし、これは私の性格の問題だと思うのですが、しっかり構成、校正されていない「言葉」が、勝手に解釈されて、勝手に成長していくのが、ちょっと怖いような気もするのです。
似たようなものに、mixiのボイスというのがありますが、あれこそどうも苦手な世界です。日本人のつぶやきはどうしても「愚痴」になりがちで、それを読まされる方としては、正直不快になるだけです。
もちろん、そんな負のつぶやきばかりではありませんが、ああやって「文字」にして「言葉」にしてしまうことによって、ちょっとした不快の萌芽が実体化してしまうと思うんです。それって、ストレス解消になるんでしょうか。それとも誰かにかまってもらいたいだけなんでしょうか。いずれにしても、自分にとってもあんまりいいことではないような気がするのですが。
ちなみに今の時点の私のマイミクのボイスを見てみると、約9割がマイナスな感情の吐露になっております(苦笑)。これはSNSという「社会」、クローズドで基本実生活に根ざしたコミュニティーの、ある種の「気持ち悪さ」ですね。実に不毛な感じがします。さすがにツイッターはこんな感じじゃないだろうな。
まあそれでも、こうしたブログの記事や、mixiの日記みたいに、構成や校正をしなければならない場には、いろいろな「他者性=公共性」が介在するので、その人自身のリアルな露骨さというか、ある意味肉体性なんでしょうかね、そういうモノはたしかに希薄になります。
インターネットというのは、不特定多数の脳ミソの共有です。今まではそういう感じだったわけですが、いよいよツイッターのように「リアルタイム」性を獲得して、結果として「理性」以前の「感情」や「感覚(今何を見ているとか、食べているとか、どこにいるとかも含む)」を共有できるようになってきたわけです。これは究極の世界一体化ですよ。
そうすると、さっき懸念した、素材としての洗練されていない「言葉」が、勝手に誰かによって編集されていくことも、究極の他力だと思えば許せるような気がしてきますか。しかし、その結果がどうなるのかなんて、誰も考えていませんし、分かりませんよね。ただ、なんとなくですが、私はその先にあるのが、いいことばかりではないような気がします。予感として。
まあ、言語化する時点で「感情」や「感覚」の編集がなされているわけですし、考えようによっては、あの字数制限は編集を要求するものだとも言えますがね。ただ、その編集度の低さは否めないと思います。
そんなツイッターやボイスの持つ、リアルタイム性と無責任性(ゆるさ)と、それから文字数の制限がもたらすある種の韻文性からして、これを「和歌」や「短歌」や「俳句」の世界と比べる向きもあります。この本でも最後の勝間和代さんとの対談の中で、そんな話が出てきます。
ちょっとそれは違うような気もしますけれど、しかしたしかに、これらの「つぶやき」が、音声言語と文字言語の中間態であるというのは事実でしょうし、タイムライン上で流れるように消えていくが、しかし検索も可能という、今までにない言語メディアであるというのも興味深いところです。
書き言葉、特にネット上の言葉の面倒なところは、基本「永遠に残る」ということです。そこからBBSなどでは面倒なケンカが起きたりするわけですよね。文字によって、我々の思想や感情は時を超えて残ることになり、それが良い結果と悪い結果両方を産むことになっているわけです。音声言語であれば時の流れにまかせて洗い流すこともできたのが、書き言葉ではそれが難しくなる。
それを、上手に流していくところに、ツイッターの魅力があるのでしょうね。
というわけで、私は学校現場でこのツイッターをうまく利用できないか考えているのです。しかし、なかなかいいアイデアが浮かばない。ちょっと考えられるのは、まあ、基本閉鎖的な学校生活をゆるく実況中継することで、より公共性を持たせたり、あるいは単純に、保護者の方へリアルタイムでありながらかつプライバシーがある程度保護された情報を伝えるという使い方が考えられますね。
4月開校の中学で活用できないか、今後もいろいろと考えていきたいと思います。まずは自分がちゃんと参加してみないといけませんね。
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