ポール・ジャクソン スペシャル・ライヴ
またまたぜいたくな音楽体験をさせていただきました。1973年、ハービー・ハンコックが世にファンク宣言をした問題作「Headhunters」以来、彼を長きにわたって支え導いたベーシスト、ポール・ジャクソン氏の演奏を間近で観て聴くことができました。
これもまた生徒たちのおかげです。今日は本来、レストラン「シルバンズ」でのライヴがあったのですが、その前に急きょ我が校のジャズバンド部のためにこのようなスペシャルな場を設けて下さいました。
まずは、ポール・ジャクソンのカルテットが演奏し、続いてお返しといってはなんですが、我が校のジャズバンド部「ムーン・インレット・サウンズ・オーケストラ」が彼らの前で演奏しました。で、私はいちおう学校関係者ということで、ちゃっかりその様子を拝見したということであります。
ポール・ジャクソンと言えば、先ほど書いたように、まさにハービーにファンクの魂を注入した人。まあ、イエスを導いた父なる神みたいな人です。いや、ハービーだから日蓮を導いた仏陀か…いやいや大作ちゃんか(笑)。
いやあ、まず最初に書いておきたいのは、ポール・ジャクソンの手の大きさです。ちょうど入場の際、私の目の前を通過しましたので、すかさず握手をしてもらったのですが、その手の大きさ、厚さにびっくり。プロレスラーとの握手にはかなり慣れている方ですが、まさにプロレスラー並みの手の大きさ(体も大きいのですが)でした。こりゃあ、ベースの演奏も楽だろうなと。反面、ヴァイオリンは弾けそうもないな、とも思いましたが(笑)。
その手のみならず、体全体から生まれる黒人独特のグルーヴ感、そしてブルースのソウル、これまた日本人にはどうにも真似できない世界ですね。もうテクニックとか理屈そういう問題ではありません。もちろん、ジャズは幅広い世界なので、我々もいくらでも食い込めるのですが、しかし、やっぱり根底の部分はブラックにはかないませんねえ。
そう考えると、ハービーの「ヘッドハンターズ」が当時のジャズ界からずいぶんと非難されたというのは、ちょっと不思議な感じがします。まあ、モダン・ジャズが白人音楽(特にクラシック)に対抗すべく、変に高尚になってしまっていた時代だったのでしょうね。
ポール・ジャクソンは、ハービーのみならず、オスカー・ピーターソンやジャコ・パストリアス、ソニー・ロリンズ、ジョージ・ベンソン、スティーヴィー・ワンダーら大御所と共演してきた人です。そんな方の演奏というかグルーヴをこんなに身近に感じられるなんていうのは、本当に幸せなことです。
共演していた日本人お三人も素晴らしかった。
テナー・サックスの植松孝夫さんは、ある意味日本人らしい音とリズムのたたずまい。ポールのそれとの不思議な融合が実に面白かったなあ。生徒たちにとってもああいうサックスを聴くのはいい勉強になるでしょう。ベテランのプロレスの試合みたいな感じです。引き算の大切さというか…。
ギターの渡邉英一さんもかっこよかった。やっぱりギターっていいですね。ピアノももちろん同様の役割を果たし得るわけですが、やはり、あの独特のカッティングのアタックはいいですね。ソロも美しかったし。のちに渡邊さんが我がジャズバンド部にもギターをとおっしゃっていましたが、本当にほしいですね、ギター。表現の幅がぐんと広くなりますよ。
阿部知幸さんの安定したリズムとアイデアあふれるドラミングも良かった。上手なドラムスは本当によく歌いますね。旋律楽器のように聴こえるから不思議です。
全体の演奏としては、本番である夜の部のためのリハーサル的な感覚もあったかと思いますが、それでも超一流のアンサンブルの楽しさと緊張感、存分に堪能させていただきました。いやあ、セッションはいいですねえ。
それにしても、高校生諸君、本当に素晴らしい体験していますね。彼らの前で堂々と演奏して、そして、ほめられちゃうんですからね。昨年のMJQとも共演もそうですが、私からすれば本当に信じられないような体験をしています。彼ら、よく分かってないところがすごいんですけどね(笑)。
「続けて下さい」と皆さんに言われていました。私もそう思います。ジャズとプロレスと演歌は歳をとってからが勝負ですから(笑)。せっかく、こういう機会に出会っているのですから、ぜひ高校生には一生ジャズと、音楽と、楽器とつきあってほしいですね。
それにしても、うらやましい青春時代であります。
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コメント
前略 薀恥庵御亭主 様
学生の皆様方 本当に素晴らしい
経験をなさいましたね。
その道の「達人」との出会いは・・・
何事にも代え難い「宝」ですね。
愚僧など「jazz」の作品では
親日家の「アート・ブレイキー」
の代表作「モーニン」ぐらいしか
思い浮かびません。苦笑
ここ数日・・・
愚僧 「フジファブリック」様
のデビューアルバムCDを
拝聴致しておりましたが・・・
何となく「ドアーズ」の面影を
感じました。
愚僧の感覚ですから・・・
「当て」には全然なりません。笑
結局薬局放送局・・・
すべての音楽に「壁」は・・・
ありませんね。実に素晴らしい。
「音楽」は世界を繋げる唯一の
「道筋」ですね。
合唱おじさん 拝
投稿: 合唱おじさん | 2010.01.11 12:21
合唱おじさん様、フジファブリック=「ドアーズ」とはお見事な洞察です。
そのとおりです。
あの頃の洋楽、邦楽のにおいがプンプンしますでしょ。
本当に貴重な才能を失ってしまいました。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.01.12 17:14
この度は交流会にご参加ありがとうございました。
主催一員です。
詳細を書いて頂いた通り、素晴らしいライブになりました。流石!ポールジャクソンです。皆を引っ張っていくパワーが違います。とても62歳で先の10月に離婚したばかりの独身とは思えません。
ちなみにあのでかい手でバイオリンは無理かとの事ですが、自前iPhonの小さなアルファベット縦キーボードを老眼の目をこすりながらも器用に使いこなしていましたし、気遣いも半端なくビジネスマンでしたので皆ファンになるのもうなずけます。
そのPAULが終了後の打ち上げで、「next time]を連発していましたので、この地域でもファンが増えれば、又の機会も可能だと思います。
是非、来年にも又、開催できる様、ご理解ご協力いただけますれば幸いです。
(続ける事が何かを生み出すというのは どの仕事も一緒ですから.....)
投稿: 海王富士 | 2010.01.14 00:27
海王富士さん、ありがとうございました!
本当に素晴らしい体験をさせていただきました。
御本人たちのみならず、スタッフの方々のご尽力あってのことだと思います。
そうですね、ぜひぜひこれを機に高校生とも、また富士山とも交流を深めていただきたいと思います。
地元でもいろいろな企画をやっておりますので、また何か御一緒できればと思います。
担当に伝えておきます。
いやあ、それにしても、やっぱりポールの人柄が音楽ににじみ出ていましたね。
最後は人柄、人としての魅力ですね、音楽は。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.01.14 17:16
前略 薀恥庵御亭主 様
「追ってけ 追ってけ」って
曲が大好きです。大好きです。
これは・・・
伝説になる「名曲」です。
御亭主様が申されますように
「大天才」ですね。
「大滝詠一」 様
「井上陽水」 様
「泉谷しげる」様
「鮎川誠」 様
愚僧の「大天才列伝」に加わりました。
合唱おじさん 拝
投稿: 合唱おじさん | 2010.01.16 23:03
合唱おじさん様、どうもです。
志村くんもこの面々に列されてお喜びのことでしょう。
「追ってけ」の良さをお分かりになるとは、さすがお耳が高い!
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.01.18 06:34