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2010.01.21

フジファブリック 『熊の惑星』

54_20100121_00002 ほど、富士吉田市の「夕方5時のチャイム」が鳴りました。今日はまた特別に胸に響きますね。
 今日は東京の中野サンプラザにおいて、お別れの会「志村會」が執り行われています。私は仕事が立て込んでいてうかがうことができませんが、知り合いの数人が駆けつけて、現地の様子などを伝えてくれました。
 悲しみは絶えません。しかし、こうしてファンの人たちの気持ちを集める場が設けられたのは、志村正彦くんにとっても、また、メンバーにとっても、親族の皆さんにとっても、そしてなんと言ってもファンの人たちのために、とてもいいことだと思います。
 何ごとにも一つの区切りというか、前に進むきっかけというのは必要です。私も今日、また新しい気持ちで彼の曲を聴くことができそうです。皆さん、ありがとうございました。
 さて、今日はそんな大切な日にちなみまして、一つエピソードを紹介いたします。
 この前記事にしました名曲「若者のすべて」のカップリングに「熊の惑星」という可愛らしく愉快なナンバーがあります。まずは、お聴きください。

 作曲はベースの加藤くんです。中国風なイントロやリズムを伴ったなかなか楽しい曲ですね。もちろん志村くんの歌詞にインスパイアされての曲作りだったことでしょう。
 不思議な「詩」ですね。まさに「夢の対決」、夢で見た光景をそのまま言葉にしたような不思議な世界が広がっています。
 「熊の惑星」と言えば、私などアメリカのSF作家R・A・ラファティの「どろぼう熊の惑星」を思い出します。あの短編集、以前図書館かどこかでチラッと眺めたことがあります。けっこう残酷な雰囲気の童話だったと記憶しています。もしかして、志村くん、このあたりからヒントを得たとか。
 軽みもあって、実は残酷でシュールというラファティの味が、この歌詞と不思議に共通していると思います。
 さてさて、そんな熊(なぜか北欧の熊)に対するのは、アジア一のワザの使い手「ひげの太極拳野郎」です。
 この正義の味方の正体について、志村くんが何かインタビューなどで語っているかどうか私は知りません。ただ、この歌詞を聴いた時に、あることをピンと思い出したのです。志村くんの理想の男がこんなところに出てきていると。
 というのは、彼の中学時代の卒業文集に「太極拳男」が登場しているのです。あまり詳しくは書けませんが、彼の目指す「太極拳男」は「効率のいい男」だそうです。
 その文集の文にも、はっきり言って他の生徒たちとは全く一線を画した芸術性(?)があり、もうすでに天才詩人の片鱗がうかがわれます。ある意味ぶっとんでいるんですよね。
 そんな理想の男がひげをたくわえて再登場したと思ったのです。
 たまたまでしょうが、ラファティの熊は北欧どころか、宇宙からやってきた盗っ人エイリアンでして、それを志村くんの目指した理想の太極拳男がやっつける光景が目に浮かんだんですよね。
 旗を取り合っていますが、いったいこの「旗」とはなんなのでしょうか。彼がこの詩について何か語っているのを知っている方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えてください。
 繊細で抒情的な詩や、変態的で過激ともとれる詩の多かった志村くんの作品ですが、このような軽みのあるユーモアもまた彼の魅力の一つでしたね。そのへんの幅の広さも中原中也的であるとも言えそうです。
 「若者のすべて」「セレナーデ」「熊の惑星」…たしかに彼の少年時代の香りがする曲たちですね。
 今日はあえてこの曲を聴きながら、あらためてご冥福をお祈りしたいと思います。
 Rest In Peace …

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コメント

志村さんって、本当に知れば知るほど不思議な人ですね。

そういえば、今日はなんとなく・・・なんとなくですが

メンバーが献花しているときの写真をオリコンニュースで見た時に、志村さんが壇上に建って、歌っている姿が見えました。まぁ、、、大きなオーブなんですけれど。しかしながら、私にはその大きなオーブが歌ってるようにしか見えませんでした。

なんだか、こういう不思議な感覚は、、、志村さんの話の時は、とても強く感じてしまうのは何故なのでしょう。

精神が「考えるな!感じろ!」なんですよねぇ。

でも、志村さんは「死」を受け入れてるような気がします。

だって、自然の道理のまま生きてこられた方ですから。
だから、「死」も否定せずに、ありのまま受け入れたんだろうなぁと感じます。

本当に素直で綺麗な心の持ち主ですねぇ。

と・・・志村さんを知れば知るほど、私は、志村さんの生き方に感銘されていく一方です。

熊の惑星!

まだ聴いていない楽曲だったので!
聴かせていただきますね。

投稿: 里沙 | 2010.01.21 18:58

熊の惑星!

私がフジにはまるきっかけとなった曲でもあるので、
このような考察なんだか面白いです。
志村くんって、自分の夢(寝ながらみるほう)からも
ヒントを得て作詞してるんだっけ?

変態性繋がりということで、次回は「唇のソレ」をぜひ!

中学の卒アル(じゃないね、学年文集か)
ぜひ読みたい!下中にいけば、読めるのでしょうか。
無理かな。

どろぼう熊の惑星、気になるところです。

投稿: dame.watanabe | 2010.01.21 21:45

里沙さん、こんばんは。
はっきりオーブが映っていますね。
きっと志村くん、来てたんでしょう。
みんなに会いたかったのだと思います。
本当に神々しい方だったと、再確認した次第です。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.01.21 22:11

dame.watanabeさん、というかダメ人間よ、そうだったのか。
熊の惑星で入るとはやっぱりマニアックだな。
てか、おまえは後輩だもんなあ…。

少しは志村くんを見習えよ!ww
我が身を削って表現できるか!?

「唇のソレ」かあ…それについてはまた後日。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.01.21 22:15

こんばんは。
「熊の惑星」初めて聴きました!
「若者のすべて」のような曲もあれば、こういう曲もあるという振れ幅の広さがとっても魅力的ですよね~。

今日は「志村會」ということで、私は行けなかったんですけど、以前「フジファブリック『若者のすべて』~浜崎あゆみ『You were...』」の記事で書かれていたことに触発されたことを、私も2010年1月21日のこの日に綴りました。
なので、キッカケを下さったこの場所にもう一度ご挨拶をしなければと思ったら、蘊恥庵庵主さんも「志村會」のことを書かれていたので、こちらにコメントさせていただきました。
花による富士山とギター、素敵ですね。

ちなみに、「You were...」のプロモには、「熊」も「花火」も出てくるんですよねぇ。「熊」はすぐにわかりますが、「花火のようなもの」は浜崎あゆみさん本人が「花火シーンも見モノ…。」と書かれていたので「花火」なんだと。その「花火」がいつしか「雪」に変わっていき……。

「旗を取り合う」って「女性を取り合う」って感じがしちゃいました(笑)。

これからもブログ楽しみにしています!

投稿: pineapple | 2010.01.21 22:36

はじめまして。長文お許しください。

こちらを拝見させていただいておりましたが、初めてコメントさせていただきます。

先ほどまでipodでフジファブリックを聞いていましたが…電池切れで途中でプッツリ切れてしまいました(涙)それがまさに『熊の惑星』でした。その後でこちらにお邪魔してビックリしたので何だかこのことをお伝えしたくて。

今日、『志村會』に行ってきました。あたたかい、愛情にあふれるステキなお別れ会だなと感じました。志村さんの人柄がうかがえました。

私は、フジファブリックは『赤黄色の金木犀』から知っていて、PVでは志村さんの眼力に驚かされました。その後、何だか音楽を聞くことから遠ざかってしまって、志村さんの亡くなる数日前にふとフジファブリックを聞いて、またあらためてフジファブリックを聞こう!と決めた矢先の訃報でした。

これまでは曲を聞くだけだったので、フジファブリックの人間性についてはあまり興味を持っていませんでした(すみません…。)
ネットで調べていたらこちらを見つけましたがまたビックリしたのが、志村さんが富士吉田の出身だったこと(ほんとにすみません)。知りませんでした。

富士吉田は私にとって思い出深い土

投稿: タラ | 2010.01.22 01:11

私も志村會に行けなかったひとりです。
今朝の「めざましテレビ」で、会場の様子が少し流れてましたねー。
行きたかったけど・・行ってたら、逆に、また落ち込んでたかもしれないです。お花だけ、送りました。

「旗を取り合う」私の想像ですけど、国旗じゃないでしょうか??
勝った方が掲げられるっていう意味で。
中学時代の「太極拳野郎」気になります。

昨日の志村會では、中学時代の写真も飾られていたようですが、
どんな少年だったのか見たかったなぁー。。

投稿: ikuo | 2010.01.22 09:01

何度かお邪魔させていただきましたが、きちんとご挨拶をしていなかったので、また伺いました。
昨日の志村會、仕事の合間にネットで祭壇を見ていたたまれなくなり、倉庫でひっそりと泣き、見送りました。
一応、社会人として仕事をし、毎日生活しているけれども、心の底では、ずっと自己否定をしていました。
「僕は今まで傷を作ったな
 自分でさえも分からない
 歳をとっても変わらないんだな」
全く、いくつ年齢を重ねても相変わらずです。
自分がもっと若い10代や20代の頃ではなく、40代になって出会えたからこそ、志村君の詩は余計に深く、濃く、心に沁みるのかもしれないなと思います。
シングルのカップリングの曲は、どれも一筋縄ではいかない曲ばかりで、私も大好きです。
「折れちゃいそうな心だけど
 君からもらった心がある」
庵主さん、本当にありがとうございました。
金澤くんのコメントにもあったように、7月、富士急でメンバーや、ファンの皆さんにお会いできたら嬉しいですね。

投稿: おのみか | 2010.01.22 09:03

こんにちは。
先日メールさせていただいた広島在住の者です。

「志村會」に参列する予定でしたが、
娘のセンター試験の結果が微妙でして(古文の解説も
楽しく読ませていただきました笑)
この数日、少し不安げな娘と一緒に速報を見たり、
今後のことをいろいろ話し合ったりしていまして…
「志村くん、ごめんなさい。
『會』には出席できなくなりました」と手を合わせ、
白いお花を飾って、自宅で
志村くんのご冥福をお祈りしました。


『熊の惑星』イントロも楽しくて
かわいい歌で大好きです。
加藤さんの、茶目っ気たっぷりな笑顔が浮かびます。
歌詞も、最初聞いたとき、
「なんだかなー」とにやにやしてしまいました。
“真剣勝負なんだけど、なんだか笑っちゃう”
そんなふうに思ってしまう情景だったからです。

『旗』は「女の子」かな~と思っていました。
それじゃなかったら、「勇気のしるし」
いや、やっぱり「女の子」だなぁ。

いろんな色の、たくさんの引き出しがある
志村くんの世界。もっと、もっと、
たくさんの引きだしを開けてみたかった!

富士急で会おうね、志村くん!

投稿: kirari | 2010.01.22 22:56

皆さん、コメントありがとうございます。
皆さんの深い深い思いが心にしみます。
志村會も、とてもいい会だったようですね。

「旗」とはいったいなんなんでしょうね。
皆さんの意見もそれぞれもっともな感じです。

こういう想像力をかきたてるものこそ、「詩」ですね。
それにしてもなんで「太極拳男」なのかなあ…笑。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.01.23 20:38

はじめまして。
こちらのブログは「をかし=萌え」説で興味を持って以来ROMらせて頂いております。

『熊の惑星』ですが、たまった雑誌の整理をしていましたところ、『ROCKIN'ON JAPAN』2008年2月号において志村氏がこう語っている記事を見つけました。

「俺はもうほんとにこの人の深層心理をいろいろ考えてるんだけども、一見しょうもないことをしてしまう加藤慎一ってのを出すために、“熊の惑星”の作詞で表したわけだから」

「旗」や「太極拳男」の説明ではありませんが、もしかしたら解釈の役に立つかもしれないと思い、書き込ませて頂きました。
(余談ですが、私は他のアーティストのファンで、この雑誌はそちらの記事目当てに数ヶ月前に古書店で購入したものです。それをこのタイミングで整理のために引っ張り出して、たまたま開いたページに数日前にみかけたばかりの「熊の惑星」という文字があり、それがぱっと目に入ったことに不思議なものを感じています)

投稿: miya | 2010.01.25 02:46

miyaさん、おはようございます。
貴重な情報ありがとうございました!
本当に不思議ですね…。

加藤くんからイメージされたわけですか。
なるほど。
一見しょうもないことをしているようで、実は「できる男」なんでしょう、加藤くん。
「太極拳男」は「仕事ができる」そうなので…。
なんとなく分かりますね。

本当にありがとうございました!
「萌え」からこんなところにつながるとは…ご縁とは不思議なものですね(笑)。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.01.25 08:01

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