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2010.01.09

「自然」は「不自然」?

P10406063 ッポン(ラバーカップ)を知らないカミさんが生まれ育った地域の風景です(「知らない」というより「必要ない」か…)。
 まさに日本の原風景。美しい棚田と里山、そして茅葺き屋根…ですが、今日は(も)カミさんに対して、少しいじわるな内容になるかな?
 今日、今年4月開校する中学校の初めての入試が行われました。準備をしてきた者として、実に感無量な一日でした。私たちの教育方針を理解していただき、予想より多くの子どもたちが入学を希望してくれたことに、まずは正直安心しましたし、さあこれからだという身の引きしまるような気持ちもありました。
 今までずいぶんと長く教員生活を送ってまいりましたが、このような充実感と緊張感(+疲労感?)を感じたのは初めてです。いずれにせよ、本当にありがたいことですし、私は特別な幸せ者だと思います。一つの学校の創立に関われるのですから。受験してくれた皆さん、そして親御さん、また学校スタッフの皆さん、本当にありがとうございました。
 以前、こちらにも書きましたように、本校の国語の入試問題は、オリジナルの文章を使います。つまり、せっかく受験してくれる子どもさんのために、メッセージ性のある文章を私自身が書きます。それをもとにシンプルな語句の問題と、情報処理的な問題、そして作文を課します。
 今日はその文章を紹介します。はたして私のメッセージは小学生に伝わったでしょうか。

    自然

 「自然」と書いてなんと読むでしょう。
 そう、「しぜん」ですね。
 そんなこと当たり前です。でも、実はこれがちょっと考え方を変えると、当たり前でなくなります。
 「自」はなんと読みますか? 
 「じ」ですよね。
 さっきは当たり前に「自然」を「しぜん」と読みました。「然」は「ぜん」に違いありませんから、この場合「自」を「し」と読んでいることになります。ところが、「自」だけでは、異口同音に「じ」だと答えます。
 「自然」以外に、「自」を「し」と読む例は、実を言うとないのです。だから、「自然」を「しぜん」と読むのは、ある意味「不自然」だということになります。
 このように、私たちの常識(それはたいがい学校で習うことなのですが)を疑ってみたり、その「不自然」な点に気づいたりすることが、「勉強」や「学問」の面白さを知る原点となるのです。
 ちなみに、仏教の用語としては、「自然」は「じねん」と読みます。「天然」のように、「然」を「ねん」と読むことは日常的にありますから、こちらの方が「しぜん」より「自然」かもしれませんね。
 皆さんもよく知っている「だるまさん」こと達磨大師の言葉にこういうものがあります。
 「結果自然成(けっかじねんになる)」
 一般には、「努力していれば、それ相応の結果が出るものだ」という意味だと言われています。なるほど、私たちはそう信じているからこそ、勉強にしてもスポーツにしても習い事にしても、日々がんばれるのですね。
 しかし、もともとの意味を考えてみますと、「結果」というのは、「果実を結ぶ」、すなわち「実がなる」ということですから、「結果は人間の意思を超えて、自然に出るものである」とも解釈できそうです。だるまさんは、座禅を通して「自分を捨てる」考えをきわめた人ですので、そういう意味でこの言葉を使ったのかもしれません。
 私はこの「結果自然成」という言葉が好きです。どちらの意味でとらえるとしても、全ての「結果」には意味があって、自分や世の中にとって最良なものであるのだと考えられるからです。そうだとすれば、いろいろな「結果」を素直に受け入れることができますね。
 さて、もう一つ、「自然」についての常識を覆してみましょう。
 みなさんは東京に行ったことがありますか? おそらく全員が「はい」と答えるでしょう。
 では、東京と山梨、どちらが「自然」に恵まれているでしょうか。
 そんなことは言うまでもない、山梨に決まってるでしょ。みんなそう考えますね。しかし、本当にそうなのでしょうか。実はこの答も、少し視点を変えるとちょっとあやしくなってくるのです。
 話を分かりやすくするために、私の経験を話させてください。
 私は毎年春と夏に、親戚のいる東北地方のある県に行きます。
 皆さんもテレビか何かで見たことがあるかもしれませんが、東北地方では、一面に美しい水田がひろがり、そして、その向こうにこれまた美しい里山の続く風景が、いたるところに見られます。
 私は最初この風景を見た時、なんとすばらしい自然なのだろうと思いました。
 その感想はある意味では正しかったと思いますが、しかし、あのきれいに区画された田んぼや、整然と杉の木が植林されている山々が、はたして「手付かず」の「自然」なのか、ある時そう考えはじめたら、ちょっと分からなくなってしまいました。少なくとも「多様」な「自然」とは言えないような気がしてきたのです。
 一面の稲穂ということは、そこには「イネ」という植物しかないことになりますね。水田では、雑草や虫はいろいろな農薬によって殺されてしまっています。同じことは杉だけが立ち並ぶ山にも言えます。
 あまりに画一的で単調な「不自然」さが、そこにはあるのです。
 逆に、東京には案外多様な自然が残っているのを知っていますか?
 東京には昔からたくさんの人が住んでいました。そのため、墓地やお寺、神社などがたくさんあります。そういうところは、手入れはされますが、なかなか簡単に木を切ったり、薬品をまいたりはできず、多様な雑木林が残ったり、樹齢何百年の古木が残ったりしているものです。東京の都心部にも、実はかなりの程度「手付かず」の「自然」が残っているのです。
 このように、私たちは視点を変えることによって、違う風景を見ることができるようになります。こういう話を聞くと、次に東京に行った時、電車の窓から見える風景が変わって見えるようになると思います。また、山梨の自然も今までと違った風に見えてくるかもしれません。
 先ほども書いたように、こうした視点の転換こそ、勉強や研究の面白さなのです。
 私たちには、「新発見」をすることは難しいかもしれませんが、「再発見」することはいくらでもできるのです。

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コメント

前略    薀恥庵御亭主   様 

素晴らしい「名文」です。

先ほどまでの「コメント野郎」
がいうのも「アレ」ですが・・・笑

愚僧が辿り着くべき・・・
目的地・・・「自然法爾」
の世界。

まずは・・・自分の・・・
「抹香臭さ」を消します。笑

自然外道おじさん       拝 
 

投稿: 合唱おじさん | 2010.01.10 13:15

こんにちは(^-^*)/


暖かいメッセージをありがとうございます。


先生のコメントをみたら涙が~…

やっぱし私の中で先生は1番の恩師だぁ ~(;_;)

↑またしても告白だゎ♪笑


ちなみに…スッポンは私もセレブで1回しか使った事はありません!ワラ


無事入試が終えれたようでお疲れ様です。

何事が起ころうと…

時は自然(じねん)と流れているのですね…☆☆


とても名文で勉強になりました。


手付かずの自然はきっと私は見たことがない。


緑の巨人伝(ドラえもん)のような光景なのかな?

あの映画もメッセージ性が高い映画だったな!


先生は根拠はないと言っても…
大体当ててましたよね………

投稿: ノリ | 2010.01.10 14:17

小学生には、難しいんじゃないかな。
と思いました

でも、良い文だと思います。

少しでも、伝わるといいですね。

投稿: N@be | 2010.01.10 19:45

素敵な文章に共感させて頂きました。

なるほど!自然が不自然と感じるのは、言わば、宇宙が誕生してからというもの、自然も人間や化学物質等で汚染されてきた形なんだという事実。庵主さんの言葉に言い換えれば、山梨の自然はありとあらゆる不純物質や人間の手によって創り上げられてきたものが目に付く。
しかし、東京には、宇宙がこの世に誕生してからのそのままの造形が今でも「ありのまま」の姿で残っている。という事なのですね。


そういう見方だと、自然が不自然という意味が私にも理解できます。

実は私は今年本厄になります。
先日、近くの神社へ家族と一緒に厄落しのお払いへ行ってきました。
その神社は、神様がこの世に誕生してから、人間の手や不純なものに犯されないで、ありのままの姿、
なにも手を入れていない姿で建っております。

色んな方がスピリチュアルスポットとして取り上げていらっしゃる神聖な神社です。

実際に、自然が創り上げた「自然」は、綺麗に整えられておりません。
本当に「素」の姿で、ありのままの姿でそこに「在る」

実際にその神社は、神様がいらっしゃるんです。

竜神様がいらっしゃいます。

そうなると、本物の自然の姿を「視る」心の目を養っていかなきゃなぁと、庵主さんの日記から感じました。

本題から少しずれましたが、本質はそうなのだと感じます。


投稿: 里沙  | 2010.01.11 19:40

みなさん、コメントありがとうございます。
なんだか忙しくてお返事が遅くなりすみません。

作文の問題は、
「本文には、常識を疑ったり視点を変えたりすることによって得られる「再発見」のことが書かれていますが、あなたはこれから、どんなことを、どんなふうに「再発見」していきたいと思いますか。三〇〇字以内で作文しなさい」
でした。

難しいでしょう(笑)。
でも、受験した小学生はけっこうちゃんと書いていましたよ。今どきの子どもはえらいですねえ。

入学してきた子どもたちには、時間をかけて、ものごとの本質を教えていきたいと思っています。
楽しみです。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.01.12 17:07

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