『Onaraはずかしくないよ』(テレビ東京 ピラメキーノ)
昨日の「詩」の世界からいきなりこっちの「詩」の世界に。いや、こっちは「詞」でしょうか。あるいはある種の「シュプレヒコール」でしょうか。
たしかに画期的であります。今までのタブーを破る革命ソングです。大いに思想的、ある意味反社会的な歌ですね。これは力がある。
ウチは変わった家庭でして、子どものテレビは、NHKとテレビ東京とBSデジタル各局(特にNHK3局)と、CSのプロレス専門局しか見せません。というより、娘たちがそれ以外を観たがりません。親の影響でしょう。
私もそれでいいと思っています。他の局、つまりテレ東以外の地上波民放はうるさいだけで観る気がしません。
テレ東のいいところは、低予算のおかげで、逆に内容が充実している、すなわちスタッフやタレントさんの実力がストレートに表現されているところです。派手な演出やネームバリューだけのタレントに頼らないわけですからね。
娘たちが好んで観ている「ピラメキーノ」も、なかなか面白い企画やアイデアに満ちており、私も好きな番組です。馬鹿馬鹿しさもあそこまで行けば、一つの芸になりますからね。徹底ぶりが良い。
この番組の中心的タレント(才能)は、はんにゃとフルーツポンチです。特にはんにゃの金田哲くんは、この番組で最も彼らしさを発揮していると思います。
そんな彼が女装をして(これが妙にカワイイ)歌って踊るのが、この「Onaraはずかしくないよ」です。
これがなかなかなのですよ。世の中には暗黙のルールというのがあって、それが常識化している、あるいは不文律化していることが多いわけです。我々は、そうした見えない力に呪縛されていることが多々あるわけですね。この「女の子のオナラ」というのも、実に微妙なタブーになっている。
これは一種のジェンダーとも言えるわけで、男女共同参画社会とか夫婦別姓とかバカなこと言う前に、こういう生理的な問題を解決すべきだと、私はまじめに思うのであります(笑)。
いや、実は私、この問題について、けっこう深く考えたことがあるんですよ。たとえば、ウチの夫婦というか家族なんかは、オナラ合戦で盛り上がったりするわけですが、反面、ごく最近、ある知り合いの女性が、おそらく私がそこにいることを知らなかったのでしょうね、けっこう豪快にオナラしちゃいまして、それで、私、自分の予想以上に引いちゃったというか、萎えちゃったというか、そういうこともあったりして、いったいこの気持ちの違いはなんなのだろう、ここのところの差というか、一線というか、そういうものが、いったいどこにどのように存するのか、ここ数十年考えてきたわけです。歴史的にどうなのか、世界的にどうなのかも含めて(笑)。
で、その結論というのがなかなか出なかったところへ、こうして「ブー」…じゃなくて「プー」…この音韻的な感覚というのも面白い研究対象です…と発砲して風穴を空けてくれたのが、この歌だったわけです。
ま、前にも、古くはサミー坊やの「ONARAソング」とか、近くはのだめの「おなら体操」とかありましたけど、「ONARAソング」はたしかオナラをしてしまった恥ずかしさを歌った歌だったし、「おなら体操」は、ジェンダーの生じる前の幼児を対象にしたものなので、実はなんの解決にもなっていなかったんです。
今回は小学生以上が対象ですから、革命的なわけです。作詞は構成作家のオークラさんですね。素晴らしいお仕事をしました。
ちょっと聴いてみてください。
「女の子だってみんな1日10や20のオナラするのよ だからダメダメルールでしばっちゃ」という一節が実にいいですね。男も女も基本消化器官の構造は一緒でしょうから、同量の発酵ガスが発生し、対外に排出されているはずです(1日約1リットルだそうです…これを全部ためこんだらたしかにSOSですね)。
しかし、現実には、その生理現象に対する社会的評価は、とてもとても男女平等とは言えない状況であるわけですね。それをこうして、女性の立場から(しかし、はんにゃの金田という男性が)明るくシュプレヒコールしてくれたのです。
はたして、我々「男女」という社会的言語に縛られた現代日本人は、その数千年(?)の呪縛から解き放たれるのでしょうか。たぶん、難しいとは思いますが…。でも、こういう暗黙のルールを茶化して、一種の緊張をほぐすという行為は、たぶんどの時代にも大切なことだと思います。
考えてみると、「おなら」というのも「お鳴ら」という意味の女房詞ですから、江戸時代の女性もある意味ギャグ化していたわけですね。ちなみに、「へ」を「ひる」という言葉ですが、奈良時代くらいまでハ行の音は「p」音でしたから、今風に表記すれば、「ぺ」を「ぴる」ということで、実際の音を模したものなのです。まさに「パペピプー」ですね(笑)。
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コメント
テレビの視聴傾向が我が家とそっくりで、また驚きました。CSを契約していないので、その代わりに古いアニメの東京MXTVが入ってきますけれど。
ピラメキーノは娘が大好きで、まずこの時間はニュースなど見られません。それに金田君の女装は家内にも評判がいいですし・・・・・。
投稿: 貧乏伯爵 | 2010.01.08 09:20
テレビ東京懐かしいです。静岡では映らないですが・・・。私も山梨に住んでいた時には、テレ東をよく見てました。
オナラは恥ずかしいものだって、3歳児の子どもたちも思うみたいです。私のクラスの子供たちは、よく透かしっ屁する子がいて、「うんこもれちゃったかな」と、心配する程です。
投稿: ナス | 2010.01.08 20:58
貧乏伯爵さま、今年もよろしくお願いします。
どうも、教育方針が同じようですね(笑)。
ウチもオタ道まっしぐらですよ。
喜ばしいことです。
また、娘どうしを遊ばせましょう。
ナスよ、どうも。元気かな。
すかしっぺっていうのは、あれは犯罪だね。
ある意味子どもが初めて犯す罪かもしれないね。
だまそうとする、隠そうとする意図が感じられる(笑)。
そう言えば、テレ東の静岡(&広島)進出の話はどうなったのかなあ?
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.01.10 08:14
前略 薀恥庵御亭主 様
「屁にもならない」コメントです。
「釈迦の説法屁ひとつ」
「百 の説法屁ひとつ」
とか申します。
これは「屁」がいかに
心裏・心理・真理を
指し示しているかを
あらわしていると感じて
います。笑
どんな「人」でも「屁」はします。
それを「人」は誤魔化します。
「屁」は人間の「正常化」の為の
「最上善」であります。
愚僧のように「沈香も焚かず・・・
屁も放らず」が一番の悪人です。笑
当然至極 どこでも そこでも
屁っちゃら「ブーブー」屁の河童。
そんな御方様こそが最上の「善人」
なのであります。
屁理屈おじさん 作用オナラ
投稿: 合唱おじさん | 2010.01.10 09:44
合唱おじさん様、まさに「釈迦の説法屁ひとつ」ですよ。
「ブッというは仏なりけり」ですからね。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.01.12 17:11