『メイド・イン・ジャパンの命運』 (NHKスペシャル)
日本のメイドさんの話じゃありませんよ(笑)。そっちは順調です。
「日本は何を作るべきか」「日本で何を作るべきか」…日本のお家芸であったはずの「モノづくり」の危機のお話です。
ここでは日本のモノづくりの象徴「テレビ」が取り上げられていましたが、事情は自動車でもその他の家電でも全く同じです。
デジタル化、ソフト化、コンピュータ化によって、我々が培ってきた、そして得意としてきた「職人技」が通用しなくなってきているということですね。
そんな中、日本はどのように生き残っていかなくてはならないのか。東芝では100万円もするテレビの開発に奔走(迷走?)し、JVCではソフトの開発販売でなんとか窮地をしのごうとしていました。
いやあ、本当に大変だと思います。私の仕事(学校教育)のように、いまだにアナクロにアナログな業界は全然幸せですよ。おそらく100年後もほとんど事情は変わっていないでしょうから。「人づくり」の現場ですから。
「モノづくり」の現場の変化については、実は今日も実感しまして、生徒や先生方と呆れるやら、おかしいやら、思わず笑ってしまったことがありました。
職員室のコピー機の調子が悪かったんです。というか、生徒が何か縮小やら両面印刷やら、いかにもデジタルな技を駆使してコピーをしていたら、どうも写像が右だか左だかにずれていて、字が入りきらなくはみ出てしまうと。
で、だいたい機械やパソコンの不具合については、みんな私のところに来るんですね。なぜか、国語のセンセイが一番機械に強かったりする(…それこそ学校の変なところですな)。
で、状況を聞くと先ほど述べたような感じだといいます。なるほど、いろいろなデジタル技術を駆使した結果、こうなったんだなと、私は判断しました。生徒もそう思ったから私のところに来たのでしょう。
さあそれで、今までの経験を活かし、いろいろやってみたんですよ。最後の手段「再起動」はしませんでしたけど、考えられるいろいろな作業(操作だな)をしてみました。しかし、どうもうまく行かない。
で、小一時間からかったけれどもダメでして、「こりゃあきらめるしかないな」と言った途端、私はあることに気づいたんです。「もしかして!?まさか…」。
そしたら、まあ案の定というか、馬鹿馬鹿しいというか、情けないというか、やっぱりそうでした。
単にトレイの中のコピー用紙がちゃんとピッタリ入っておらず、ある方向にずれていたのです!
はあ?…でしょう(笑)。
そう、これが昔のコピー機や、普通の印刷機だったら、一番最初に疑うべき点でしょう。それが人間的な、機械的な、アナログ的な発想です。発想以前の常識ですよね。
それが、生徒も私も他の教員も、みんな「デジタル」的世界に冒されて、こんな子どもでも分かることが分からなくなってしまっていたんです。もう笑うしかないですよね。
つまり、機械のブラックボックス化が進んでいて、我々は日常的に「ソフト的な問題だ」、「これはどうしようもない」、「たたいても治らない」と思ってしまう習慣がついているようです。
正直私も情けなかった。私も少年時代はエンジニアを目指すような、いわゆる「モノづくり」人間でして、そういう目に見える機械的な構造やシステムをイメージするのに比較的長けていると思っていたものですから、こんな単純な、単純すぎることが分からなかったことに愕然とするというか、もう苦笑するしかなかったわけですよ。
と、これは笑い話でありますが、業界ではとても笑えません。東芝の技術者、それも世界をリードしてきた「職人」たちが、もう真っ暗な画面の前でただ茫然とするしかない姿、ケータイでソフト屋さんにおうかがいをたてる姿は、もうなんというか、残酷というか悲哀というか、とにかく辛いものがありましたね。
自動車なんかも、20年前までは、エンジンだろうがなんだろうが自分で修理調整しちゃってましたが、今は車屋さんでさえ、部品を注文してアッセンブルするのが仕事みたいになっちゃってます。
はたして、これは「モノづくり」と言えるのでしょうか。コンピュータのソフトというのは、疑似的な脳です。脳は私の言い方ですと「コト」です。そして「コトづくり」の末、そのコトが暴走すると、それはいきなり「モノ(モノノケ)」になります。手が付けられない「他者」になってしまうのです。恐ろしいことだと思うのですが…。
同僚が言っていました。これは第二のラッダイト運動が起きそうですねと。コンピュータ打ち壊し。
いや、そうした方がいいのかもしれませんよ。自分たちの脳よりも優秀で一途で根性のある別の「脳」を作り出してしまったことが、私たちを滅亡に追いやるかもしれないからです。
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コメント
前略 薀恥庵御亭主 様
愚僧も30年ぐらい・・・
「コンピューター」と御縁が
御座います。
富士通の「ファコム230-15」
だったでしょうか・・・
「紙テープ」と「アラビックヤマト」
で「データー」を作ってました。笑
あれが「16才」の頃でした。
結局薬局通信局・・・
「コンピューター」なんて・・・
人間の「オモチャ」に過ぎません。
職人の「指先」の藝術には・・・
到底 及びもしません。
単に「異常に計算が速い」だけです。
愚僧も「技術屋」ですが・・・
最も尊敬するのは・・・
「熟練工の指先の技」であります。
まさに「人間万歳」ですね。
合唱おじさん 拝
投稿: 合唱おじさん | 2010.01.28 19:49
合唱おじさん様、おはようございます。
ファコム!すごいですねえ。
穴の開いた紙テープに未来を感じましたよねえ。
私の子ども時代もよくその紙テープを拾ってきて、解読していましたっけ(笑)。
ある意味人間味のある世界でしたね。
まだまだアナログな感じです。
もう思い切って日本はアナログ路線で行くべきなんじゃないでしょうか。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.01.29 08:55
前略 薀恥庵御亭主 様
打弦楽器の「ピアノ」をデジタル
だとすると・・・・
モンゴルの「馬頭琴」がアナログ
なのでしょうか。笑
音階の切れ目のない「美学」ですね。
そういえば・・・
昔の「携帯」も「人情」のある・・・
「切れ目」でした。笑
「アナログ」の良さですね。
まぁぁぁぁ・・・
通信手段は・・・「手旗信号」や
「モールス信号」が最強ですが。笑
うぅぅぅぅん。
愚僧はあまり「大学」の必要性は
感じておりません。
「医者」か「弁護士」か「教授」
ぐらいしか必要はありません。笑
自分は・・・
小中高一貫して・・・「授業」に
「プラモデル」の作製と
「漫画」の描写の時間を設けるべき
だと進言してまいりました。笑
「日本全国総オタク化」計画です。
「プラモデル・漫画政策」によって
「技術大国日本」は蘇ります。
「ものをつくる」これこそが・・・
「人間の最大の知恵」だからです。
時間が出来たら・・・
愚僧も「職人」に戻ります。笑
職人おじさん 拝
投稿: 合唱おじさん | 2010.01.29 10:48
合唱おじさんさま、否、職人おじさん様、先ほど立派な職人ぶりを拝見いたしましたよ。
やっぱり男は全て職人であるべきでしょう。
プラモデルマニアだった私も、プラモ作製を必修科目にすることに大賛成です。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.01.30 14:03