『独創力。−人間「桜庭和志」から何を学ぶのか』 桜庭和志 (創英社/三省堂書店)
いやあ勉強になった。これは新しい中学の保護者に必読本として読ませなきゃ。まじで。私の思っていることがたくさん書いてある。
一見草食系でありながら、実は…。昨日の記事の写真にもありましたけど、「ギャップ」というのは「萌え」や「燃え」にとって非常に重要な要素であります。
桜庭和志選手はまさにそれを体現しているプロレスラーです。ある意味勝ち負けが全てとも言える総合格闘技の世界で、40過ぎてもまだ多くのファンを惹きつけ続ける彼は、本当に特別な存在です。
一見、ぬ〜ぽ〜としていて恥ずかしがり屋…典型的な秋田男の彼が、リング上では獲物を狙う「マタギ」に変身する。たしかにぞくぞくします。10月の試合は、まだまだ彼がそういう意味で全く衰えていないことを証明していました。
そんな彼に、ウチのカミさんが突如はまったのが、あの3年前の大晦日。ヌルヌル事件(対秋山戦)の夜のことでした。
それからどういわけか、八郎神社のお導きまであって、この本にも重要な人物として登場する桜庭選手の御両親と懇意になり、さらに今年とうとう私もスネークピット・キャラパンで御本人とお会いしていろいろ勉強させてもらう機会を得ました。全く不思議なご縁であります。
今回、カミさんはもちろん出版記念サイン会に出かけていったわけでして、私が読んだこの本にもちゃんとサインが入っております。いったい何枚のサインがあるんだ?ウチには(笑)。
ほとんどストーカーのように追っかけしているウチのカミさん。まあ、私も大好きな選手ですから、全然いいんですけどね。そうじゃなかったら、ちょっと夫婦間に亀裂が入るよな(苦笑)。
なんだか桜庭選手、ウチの夫婦のことはしっかり覚えてしまっているようです。すみません。
今回はおみやげにまんさくの花を持っていきました。カミさんの郷里のお酒です。翌日の彼の日記に「飲みすぎた」みたいなことが書いてありましたが、もしかしてウチのせい?w
なんだかんだ、桜庭選手に日本酒差し入れするの3回目だもんな。格闘家に酒ばっかり送っていいんでしょうか(笑)。
さて、そんな話は置いておいて内容に行きましょう。
まず、彼の御両親や彼自身の「教育論」が素晴らしい。まさに現代の子育てに欠けているものが、そこにしっかりあります。
単純なことです。「やってはいけない」と「やってみたら」を言う勇気と責任です。すなわち「ダメなものはダメ」と言うことと、「やめとけ」と言わないことです。
これは私の仕事の上でも、案外難しいことです。適当に見て見ぬふりをしたり、(自分に降りかかる)リスクを想定して「やめとけ」と言うのは簡単なことであり、ある意味そういう先生になるのは楽です。しかし、それが本当の教育になるかというと、もちろんそんなことはありません。
実はこの楽な生き方は、ワタクシの「モノ・コト論」で言いますと、自己中心的で随意的な「コト」を判断基準とした考え方でして、そこからは何も創造されないんですね。
一方、その時の自分にとっては負担となる桜庭家流の考え方は、まさに他者本意で不如意的な「モノ」を判断基準とするものです。これにはまさに他者の未来や自己の未来に対する責任を負う勇気と覚悟が必要です。
彼の説く「独創力」は、実はそういう所から発しているように思えました。
雪国秋田の「何もない」自然の中で育った彼。ウチのカミさんと全く一緒のことを言っているので面白かった。何もないから、何でも遊び道具やおもちゃになり得る。実際、カミさんは今でも遊び道具や遊びを創造する天才だと思います。特に自然を相手にした時はすごい。私や娘たちはひたすら感心するばかりです。そして、それはゲームやテレビなんかに振り回されているよりも、ずっと楽しい時間を提供してくれます。
これもまた、「コト」より「モノ」なんですね。いつも言うように、私の言う「モノ」は世間一般に言う、物質や商品の「モノ」ではなく、自分の外部全体を表す語です。「コト」は内部。脳内。私から言うと、商品などは人間の脳内が作り上げる物ですから、「コト」に属します。
桜庭選手の書く、「最近の子どもは、問題を処理する能力は長けているが、問題を創造することが不得手」というには大納得です。それこそ今の子ども(大人も)「コト」にどっぷりつかっていて、「モノ」に触れていないからでしょう。
また、彼が、下積み時代の不条理なシゴキ(それはまさに不随意な「モノ」です)を、ある意味あっさり受け入れ、苦痛に思わないでこなしていくところなども、やはり自己の欲望や願望に強いこだわりを持っていないことを思わせます。そういう自分の思い通りにならないことをこなしていくうちに、いろいろな苦難やアクシデントという「想定外」に対処できるようになると。その通りだと思います。
今の教育界には、そういう「若い時の苦労」がないんですよ。子どもをお客様だと思って丁重に扱っている。そんな子どもが、忍耐力のある、そして創造力のある大人に育つわけがありません。ただ、不満を漏らし、現状から逃げてしまう人間に成り下がるだけです。
彼がいろいろなオファー…対戦相手であったり、ルールであったり…を、「いいですよ〜」と言ってどんどん受け入れ、そして、試合で想定外の展開にも焦らず対応し、さらに常に観客の反応を肌で感じながら観客のための試合をする、そんな姿はまさに「モノのふ」であります。
そう考えると、前田日明さんが桜庭選手を「武士(もののふ)の中の武士(もののふ)」と称したのは、実に本質を見極めた至言であったということが分かります。
私は来年度から新設なる中学の運営を担当します。私は生徒たちに、どんどん「想定外」な、「未知」な、ある場合には「不条理」な体験をさせていきたいと思っています。お仕着せや、単なる「コト」の暗記や、快適だけではいけません。中学までは「モノ」と戦うことが重要だと思っています。
それができていれば、高校では本人に全てまかせられます。そこで初めて「自主性」が活かされます。「独創力」がなければ「自主性」もクソもありません。単なる「自由奔放」なんて絶対に許しませんよ。
本当にいろいろ勉強になり、そして、自分の考えを強く支えてくれた良書でありました。皆さんもぜひ御一読を。
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