『チャンス』 太宰治
↓弘前時代の太宰…カッコイイか?
来年開校の中学校の出願が始まりました。はたして何人の方が受験してくれるのでしょうか。やはりそれなりに緊張いたします。
そんなこんなで忙しい上に気持ちの余裕がないので、今日は太宰の作品を紹介いたします。
いや、実は今日、出願にいらしたお母さんの中に昔の教え子がいたんですよ。いよいよ私もそういう歳になったのだなあと不思議な気持ちになりました。
彼女は私が初めて担任を持ったクラスの女の子でした。それが、今受験生の保護者として目の前にいる不思議。お互い全然変わらないじゃん!と言いながら再会を喜んだのでした。
私学の良さはこういうところにありますね。卒業生が親になって、自分の子どもも自分が出た学校に入れたいと思う。そして、久々に(20年ぶりくらい?)に学校を訪れると、かつての恩師が変わらずそこにいる…。なんとなく、ようやく私も私学人になれたような気がしました。
それで、彼女と話しながらいろいろと若かりし頃を思い出したのですよ。今思えば本当に恥ずかしい過去ばかりですが、しかし、それはそれでいい思い出ですよねえ。当時24、5だった私は、全く生徒をコントロールできず、その担任も1年でクビになってしまったのでした(笑)。まあ学級崩壊の走りみたいなもんです。ある意味今の私からは想像できないでしょうね。でも、楽しかった。生徒と一緒にメチャクチャやってましたから。とても人に言えないようなことばかり(?)。
で、授業でも、まあ教科書なんてやっても誰もついてこないから、奴らの興味あることを教材にしようと思って、「恋愛論」をやったんですよ。いろんな文人の「恋愛」に関する論を比較しながら、「恋」と「愛」はどう違うのか、みたいなことをみんなで考えたような記憶があります。
私が選んだ文章(いちおう教材)の中に、この太宰の「チャンス」があったのです。彼女の顔を見て、それを思い出した。彼女、当時は本当に純真無垢な女子高生だったわけですが、それから、もちろんしっかり恋愛して、結婚して、親になって、こうしてここにいるわけです。ま、実際しゃべってみたら、あの頃のまんまで、娘さんの方がしっかりしているくらいだったんですけどね(笑)。
というわけで、私も久々に読んでみたのですが、これが実に面白い。いろいろな意味で面白い。もちろん、年をとってから読むその内容は、昨日の「人間失格裁判」じゃありませんが、全くもって無邪気な罪というか、文学の衣をまとった「自慢話」というか、「懺悔」にもなんにもなっていなくて面白い。
それにしても、イケメンは全く「生まれてすみません」だよな。「イケメンに生まれてすみません」なんて言われたら、我々非モテはどうすりゃいいのですか。
後半のお篠さんの話、性欲より食欲や睡眠欲の方が勝るなんていうのは、こりゃどう考えても「自慢話」ですよねえ。まったくぅ(笑)。笑って死刑宣告してやりますよ。
お篠さん、あんた寒雀に負けたんですよ。でも、こうして太宰の作品に登場して、あなたも寒雀も永遠の命を得たんですから、それはそれで幸せなことなのかもしれませんね。
「チャンス」=「もののはずみ」かあ…。この「もの」って、「もののあはれ」の「もの」と一緒なんですよ。それについても書きたいけれど、時間がないので、またいつか。
とにかく、太宰の「恋愛」の定義には、私は完全に同意します。もう、ホント太宰最高。
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