『十二月八日』 太宰治
毎年この日を迎えると、ああまた1年経ったのだなと思います。それが元旦でもなく誕生日でもなく、12月8日だというのが面白いですね。
このブログを初めて、5回目の12月8日の記事になります。つまりもう何度も書いているわけですね、「歴史的特異日」だと。
とは言え、初めての方もいらっしゃると思いますので、ちょっと復習してみましょう。まず2004年にまとめて書いています。
ここにありますように、日本史的、いや世界史的にこの日は特別な日です。もちろん、暦の関係や時差の関係で、同日とは言い難いものがほとんどなのですが、しかし、12と8という数字の並びに何か意味があるのでしょうね、とにかくとんでもないことがたくさん起きています。宗教と戦争と平和、すなわち人間の「心」に関わる大きなことが、この日に起きています。
さて、翌年(2005年)は何を書いているかと言いますと、そのうちのジョン・レノンを取り上げていますね。
これも、案外知られていない事実(?)ですよね。とにかく、ジョンは日本と縁のあった人物です。そして仏教とも、大本の本拠地である亀岡とも。不思議ですね。
そして2006年。今度は新しいネタです。ワタクシ的にはこれも大事件ですね。力道山が刺された!
その後、力道山の息子さんである百田光雄さんともご縁がありましたっけ。今年(来年)こそ、力道山のお墓参りをしないと。
そして一昨年(2007年)は、ちょっと悟りを開いたようなことを書いています。ちょうど金星が見頃だったのですね。
ま、その後、結局また俗世間に舞い戻って、そして今に至る(笑)。
そして、昨年(2008年)は、歴史的特異日には触れず、次のような記事を書いていました。
しかし、ちょっと読んでみると、なかなかいいことを言っている(笑)。いや、1年前に書いたことなんか、全部忘れてるんですよ。だから、たまに自分の書いたものを読み直すと勉強になる(笑)。自分が先生みたいな感じですね。これはお得です。タダだし。お礼しなくていいし。
というわけで、今年の12月8日はどうしようかな、と思っていたわけですが、今年は生誕百年ですしね、やっぱりこの色男に登場してもらいましょう。太宰治くんです。
太宰治のその名も「十二月八日」という作品ご存知でしたか?奥様石原美知子さんの日記の体で書かれた散文です。今年の6月に(『回想の太宰治』)の記事の中で少し紹介しました。今日はそれを読んでいただくことにいたします。
またまた残念ながらうますぎる文章であります。いちおう「主人の批評に依れば、私の手紙やら日記やらの文章は、ただ真面目なばかりで、そうして感覚はひどく鈍いそうだ。センチメントというものが、まるで無いので、文章がちっとも美しくないそうだ」と書きながら、つまり、彼にしてはわざと自分らしくない文章を書いたにもかかわらず、しかし、皮肉なことに非常に「イケメン」な文になってしまっている。過度にセンチメントな文になってしまっている。
もちろん、開戦当時の庶民の感情を知るにも面白い内容ですし、あるいは戦争と小説(文学)との関係を考えるにも良い教材です。しかし、それ以上に、光と闇、生と死…いや死と生ですね、つまり光と死が、闇と生が連関している…のコントラストが見事です。そこには、太宰なりの戦争観が表れているような気もします。
そして、掉尾の「信仰」とはなんなのか。これは大問題です。彼一流の逃げ技を真に受けて、それを「尊皇心」とするのは簡単でしょう。そして、それに対して妻の筆を借りて「どこまで正気なのか」と言ってのけるのを、これまた一流の思想的なレトリックだと考えても面白い。
しかしまた、それを違った意味に穿ってみても、いくらでも泉のごとく解釈が湧き出てくるわけです。そこが時代を超えてますます光(と闇)を増す太宰治の魅力なのでしょう。おそるべし、天才。
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