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2009.11.27

レミオロメン 『恋の予感から』

20091127_80029 白初出場おめでとう!
 正直、ちょっとびっくりしました。でも、考えてみれば、「粉雪」の大ヒットのあと、いろいろと悩みも抱えながらも一定のレベルの楽曲を作り続け、音楽界に不動の地位(位置かな)を築いてきましたからね。そうした一連のことが評価されたのでしょう。
 そうそう、この前、ウチの高校の野球部が21世紀枠で県推薦をいただきました。こちらもちょっと意外だったのですが、苦しい時を乗り越え地味ながらコツコツと積み重ねてきたことが評価されたのでしょう。ちょうどそんな感じではないでしょうか。
 地元山梨からの紅白は、ええと、「島唄」のTHE BOOM以来でしょうか。いやいや、出場42回を誇る森進一さんも甲府出身でしたね(笑)。
 とにかくおめでとう。やっぱり紅白はミュージシャンとしての一つの夢の舞台ですから。特に彼らを生んだ御坂の皆さんの喜びはひとしおでしょう。何度も書いてきたように、彼らの音楽には、御坂の自然、季節、風景、言葉、人がたくさんたくさん溢れていますからね。
 さっそく御祝のお電話をして喜びを共有いたしました。「ファンの皆さんのおかげです。皆さんによろしくお伝え下さい」とのことでした!
 さて、そんな素晴らしい知らせとともに、これまた素晴らしい新曲が届きました。紅白ではぜひこの曲をやってもらいたいですね。小林武史プロデュースからいったん離れ、セルフ&トーレ・ヨハンソンプロデュースということで、どんな新しい音楽を聴かせてくれるか楽しみにしておりました。
 「恋の予感から」、まずはYouTubeでお聴きください。PVは全く別の作品としてとらえた方がいいでしょう。純粋に音楽を聴いてもらいたいと思います。こういうストーリー性の高いPVは諸刃の剣なんですよねえ。

 さあ、いかがでしょう。私は「なるほど」という部分と「おっ、そう来たか!」という部分の両方とも、かなり気に入りました。紅白ではぜひこの曲を披露していただきたいですね。
 まず、「なるほど」部分から行きましょうか。ちょうど、以前紹介したフジファブリックのアルバム「CHRONICLE」と、おととい紹介したBUMP OF CHICKENの「R.I.P.」と深い関係が聴きとれます。というか、私の好みがそちら寄りなんでしょうかね。
 両者の記事で書いたとおり、ヨーロッパにしてヨーロッパにあらずの音楽、特に北欧は音楽史的に言えば、古くはグリークやシベリウス、最近ではラウタヴァーラなどに感じられるように、イタリアを原点とする近代ヨーロッパ音楽の潮流とはやや離れて、独特の響きを醸しています。
 ポピュラー音楽で言えばABBA、ビョークのような個性的かつ商業的にも成功する音楽家が出ていますね。
 彼らに共通するのは、おとといも書いた民族(民俗)音楽のファクターでしょう。それは、近代化以前の中世ヨーロッパに漂っていた空気でもあります。具体的には、近代ヨーロッパが自縄自縛に陥ったトニックやドミナント(まさに軍隊的な鼓舞やシステム的支配を象徴する和声や和音進行)から自由であったということです。
 で、いきなりレミオに戻しますが、「恋の予感から」もそうした支配から解き放たれているんですね。すなわち、曲の始まりがサブドミナント→トニックという進行になっているんです。具体的にはニ長調におけるG7→D7という進行ですね。
 サブドミナントというのはハ長調で言うところのファラドの和音なんですが、これって、近代ヨーロッパ音楽ではまさに「サブ」であって、あまりキャラクターがはっきりしないとされているものなのです。
 しかし、いわゆる「アーメン終止(たとえばF→C)」で、我々がなんとなく懐かしさを覚えるように、民俗音楽に和声という要素が合流したときに、自然に現れるのはサブドミナント→トニック(あるいはその逆)という進行なのです。
 それに対して、ルネサンスからバロックにかけて、ヨーロッパではある意味強引にドミナント→トニック(あるいはその逆)という進行を「高貴なもの」「高尚なもの」として一般化していこうという動きがありました。
 そして、それに縛られてウン百年。あのような「高尚な」クラシック音楽が完成しました(笑)。
 ですから、この東の果ての国日本の和声的音楽(もともとは和声的音楽なんてありませんでした)が、北欧やケルトの音楽にシンパシーを抱くのは、これはある意味当然のことなんです。
 ちなみに、その両者(+もう一つの流れであるブルース)をロックという舞台で見事に融合したのが、ビートルズの「LET IT BE」なんですよ。やっぱり彼らはすごいのでした。
 話を戻します。サブドミナント→トニックという進行。フジファブリックのニューアルバムにも同様な冒頭部を持つ曲が4曲ありました。おそらく無意識にそういう共感が発動したのでしょう。レミオの楽曲にもこのパターンはないではないのですが、今回は特にそういう色が濃くなったのは偶然ではないでしょう。ヨハンソンの、というより北欧の音楽の影響というのは大きいと思います。
 あと、サビに現れるコード進行も興味深いですね。ちょうどおとといの「R.I.P.」のAメロと同様に(チューニングの関係で半音違って聞こえますが)ベースラインが「F#→G→A(#)→B」と動きます。ただ、レミオの方はAに#が付いていますね。いわゆるプチ転調です。フジファブリックの「CHRONICLE」のところでさんざん書きました通り、これは「胸キュン」進行です。甘酸っぱい恋の切なさを表すのに適した進行ですね。これもまた北欧の得意とするところであります。
 もう一つ、藤巻君の曲の特徴として、「粉雪」のところでも書いたとおり、メロディーに非和声音を自由に使うというのがあります。結果としてそれは「不協和音」を生むのですが、それもまたある意味では非近代ヨーロッパ音楽を意味するのでした。だから、やっばり、彼は日本語で日本の音楽をやりつづけているわけです。日本の山梨の御坂の音楽が、ある意味必然的に北欧の音楽と結びついているのです。
 おっと長くなってしまった。でも、「おっ、そう来たか!」について。これはやっぱりサビの旋律でしょう。粉雪の時もそうでしたけれど、ああいうオクターヴの跳躍って、流れが生まれにくく、失敗作に終わることが多いんです。そこをあのようにまとめ上げる(というか、ほとんど無意識に生まれるのでしょう)のは、やはり才能としかいいようがありません。天才。
 歌詞もいいじゃないですか。当然バンプの藤原君とは違う日本語です。藤原君が文学なら、こちらは和歌の伝統です。前も書いたとおり、ある地区は昔から「歌」の伝統があるのです。まさにそれを受け継いだ「恋の歌」。いいじゃないですか。
 カップリングというか、あとの2曲もレミオらしくていいですね。それこそ、土臭いとでも言えそうな、複雑怪奇な(?)メロディーラインですよ。型にはまらない本来のレミオらしさ、ダサかっこいい日本の歌だと思います。不思議と懐かしい感じがするんですよねえ。
 最後に「オリオン」の歌詞について、一つとっても野暮な指摘をします(笑)。後半「オリオンが矢を射り」とありますね。12月中旬のふたご座流星群はまさにそういう感じですよね。山梨は星空がきれいですから。で、ロマンチックな情景に野暮な指摘でごめんない。えっと、「射り」についてです。「射る」は上一段活用ですから(「居る」と同じ)、連用形は「射(い)」、「いり」ではありません。なんちゃって、これもきっと甲州弁なんでしょうね(笑)。いや実際江戸語では五段活用でも使われていたようですから、江戸語の残存率の高い甲州弁なら可能性あります。どうでもいいこと指摘してごめんなさい。職業病だな。

Amazon 恋の予感から

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コメント

うーん、バンプとレミオのサビにそんな共通点があったとは!
それでも、一人は「怖い」と歌い、もう一人は「怖くない」と歌う・・・両者の性格(性質?)の違いが出ていて、ちょっと微笑ましかったです。

今回は「待ってました!」と言いたくなる、切なさ全開の曲で嬉しいばかりです。
紅白もこの曲を歌ってほしいけど・・・「sukura」になるような気配ですね。

投稿: mio | 2009.11.30 19:51

mioさん、おはようございます。
なるほど、「怖い」と「怖くない」ですねえ。
ある意味対照的な両者を楽しめますね。
そして、両方とも正しいんでしょう。
いろいろな「歌」を楽しめる我々は幸せですね。

季節柄Sakuraはどうなのかなあ…。
ちなみに私は3年生を送る会でSakuraを演奏することにしました!

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.12.01 08:11

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