BUMP OF CHICKEN 『R.I.P. / Merry Christmas』
今日はレミオロメンとBUMP OF CHICKENのニューシングル発売日。
どちらを書こうかと思いましたが、先に聴くことができたバンプから紹介しましょう。
orbital periodからもう2年ですか。その間、いろいろなことがありましたね。バンプファンはみんなそういう感慨をもってこのニューシングルを聴いていることでしょう。
そうですね、普通のロックファンですと、あの曲にはああいう思い出が詰まっているとか、この曲を聴くとあの光景やあの感情がよみがえるとか、そういう聴き方をしますけれど、バンプの場合はリリース間隔が異常にあくので、その空白の時間の記憶が駆け巡ってしまうんですね。面白いことです。
私はその間に、初めて彼らのライヴに行きまして、私なりに彼らの本質に触れたつもりでおりました。その後もギルドの歌詞を授業で使ったりして、また、ある意味独特の雰囲気を持ったファンたち(生徒たち)に接してきました。
そこには他のバンドのそれとは違う、本当に特別なコミュニティーが出来上がっていて、それが精神史的に見ると、ある意味現代日本的でもあり、しかしまた一方でどこか中世ヨーロッパ的でもあるんですよねえ。そのへんについて語ると長くなるので、またいつかということにして、新曲の印象に行きましょうか。
いちおう、両A面ということだそうです。まずはA面(っていうのかな)「R.I.P」からを曲はこちらから聴けます。ぜひどうぞ。
音楽的なことで言えば、実にバンプ節というか、藤原節ですね。のっけから、飛翔感あふれるメロディーが全開です。
この「R.I.P」って独特の浮遊感があるじゃないですか。私は気がついてしまいましたが、これって松田聖子の「ガラスの林檎」なんですよ(笑)。すなわち細野晴臣。
冒頭主音の固執(ドローン)があって、本体に入るとベースになかなか主音が現れないという、あのパターンです。チャマのベースは全体を通して、本当に一瞬しか主音(彼らは半音下げのバロック・チューニングですから、この曲ではDということになりましょうか)に着地しません。これは全く「ガラスの林檎」そのものです。
そして、細野さんはサイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」をイメージしてあれを作ったという。そう、藤原くんは全く意識していなかったと思いますけれど、これって、アメリカに渡ったがために近代化(クラシック化)しないで残った中世ヨーロッパのフォークロア的技法なんですよね。
藤原くんは、アメリカのカントリーやフォーク、そしてゴスペルに影響を受けているわけですから、当然と言えば当然ですが、たとえば昨日紹介したベートーヴェンなんかとは、全然違う道を歩んだ音楽の系譜がここ日本ではっきり聴いてとれて、私としては非常に興味深かった。
さて、そんな素性を持つ音楽に対して、これまたある特殊な系譜を持った日本語が輝いて聞こえてきます。
う〜ん、本当におじさんとしては悔しいほど(笑)藤原基央は天才詩人ですね。詩人というか、やっぱり作家なんでしょうかね。
何度もこのブログでは書いていますけれど、日本の小説はとっくに終わっています。ある意味その正しい系譜上にあるのはJ-ROCK(+一部のJ-POP)の歌詞やマンガ、アニメの言葉だと、私は真剣に思っているんです。
この「R.I.P」の歌詞を読んでみてください。こちらで読めます。いや、やっぱり「聴く」かな。文字になる以前の聴く言葉。それはそういう意味においても中世的です。日本で言えば、「和歌」であり、「語り」であるわけです。視覚文化、黙読文化なんていうのは、ここ数百年の話ですからね。
すなわち「語り」、そして「聴く」文化、いや文学は、この前紹介した太宰治で一旦終了してしまっているんです。
それが復活するのが、実はJ-ROCK世界だったのです。その中でも、私は私がよくとりあげる数人のアラサー(30歳前後)を高く評価しています。その一人がこの藤原基央くんというわけです。
長くなりそうなので、「Merry Christmas」も聴いてみましょう。
ちょうどこの前の女生徒のように、日常の風景を描いていながら、そこに見つけるある意味残酷な現実、たとえば「死」の存在をさりげなく開陳して見せる。しかし、それは残酷でありながら、また一方で微妙な温かさを持っている。なぜなら、我々全ての存在が唯一公平に共有するモノがそれだからです。それを愛情を持って、慈しみを以て表現し伝えるのが、私は作家の仕事だと思っています。だから、藤原くんは立派な作家さんなんですよ。
「Merry Christmas」の歌詞(こちら)にしても、ついつい陥りがちなムードだけのクリスマスソングにはならず、個人と社会とそれを結ぶモノを見つめた内容になっています。
こうして若い世代が、正しい言葉を、正しい文学を、正しい歌を継いでくれることに本当に安心します。ある意味私の世代はスカでしたからね(笑)。
Amazon R.I.P. / Merry Christmas
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コメント
待ってました!
バンプの新曲もなんですが、庵主さんの感想も!
私も「R.I.P」には着地点が分かりにくいなぁと思っていたんです。
なるほど、ベースの主音でしたか。
でもその浮遊感が自分の思い出をも巻き込んでくれるので、歌詞とトータルで心地良いです。
「ガラスの林檎」は分からなかったのですが、細野晴臣さんといえば、私ははっぴいえんどの「風をあつめて」です。
これも浮遊感があったような・・・
今年に入って彼らのレギュラーのラジオを聴くようになったのですが、あの馬鹿騒ぎからは想像できない素敵な曲です。(笑)
レミオのほうも、お待ちしております。
投稿: mio | 2009.11.28 00:17
mioさん、おひさしぶりです。
「風をあつめて」とは、またマニアックな(笑)。
たしかにあれもフワフワですな。
バンプもレミオも仲良し同級生バンドですね。
そういうのって、やっぱり音楽に重要な要素だと思います。
みんないつまでも仲良しだといいなあ。
男の「友愛」って、実はとっても深いんですよ〜。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.11.28 15:55
俺BUMPの大ファンですよ^^
2年って長かったな~
おもいではたくさんありますよねw
BUMPはとくにKが好きですねw
「鑑真のブログ」っていうので、
BUMPなど数多くの歌手を紹介してますので、
はじめたばかりですが見に来てください^^
投稿: 鑑真 | 2009.12.03 19:17
鑑真さん…すごい名前ですね(笑)…コメントありがとうございます。
Kもいいですねえ。
私は鑑真さんの3倍くらい生きているおじさんですが、世代を超えて藤原くんの歌と言葉は響きますね。
今後ともよろしくお願いします。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.12.04 08:40
はじめまして。いろいろブログを読ませていただきました。私も、BUMPファンなんです。藤君の世界観にはいつも感銘を受けます。BUMPの曲は、人間の核心に迫るというか…藤君の人間性がそうなのかも知れませんが、人間が持つ感情のとても些細なところまでつきつめてる感じがします…上手く言えませんが…。
ギルドについての記事も読ませていただきましたが、学校の授業でも取り上げたりするのですね。私もそんな授業をうけてみたかったなぁなんて思いました(笑)
また時々ブログを覗かせていただきます。
投稿: ちさ | 2009.12.25 23:49
ちささん,お礼が遅れてしまってすみませんでした。
いろいろあったものですから…。
ちょうどクリスマスにフジファブリックの志村くんが亡くなってしまい、
なんか、ある意味皮肉なことになってしまいました。
まさに『R.I.P. / Merry Christmas』でしたからね。
しばらくはこの曲たちも聴くことができませんでした。
だいぶ気持ちも落ち着いたので、祈りをこめて聴きなおしてみます。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.01.07 17:53