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2009.10.13

さかさま地図

20091014_102130 々の常識というのは、どうも胡散臭いものですね。しかし、その常識とやらにずいぶんと縛られて生きている私たちであります。
 今日、来年開校の中学の学校案内の最終校正などしていまして、ふと気づいたことがあります。それは地図です。
 私の学校は富士山の北側の麓にあります。左上のGoogleマップをご覧下さい。Aという印のあるところです。
 この地図はもちろん上が北になってますね。世界標準です。
 よく、南半球に行くと、地図は南が上だなんて言いますよね。実際はそんなことありません。修学旅行などで何回かオーストラリアに行きましたけど、やっぱり世界地図も国内地図も北が上でした。
Upsidedownmapjpg いや、土産物屋に行くと売ってるんですよ、さかさま地図。つまり、ネタなんです。北半球での都市伝説(?)ということになりますかね、南が上の地図なんてのは。
 でも、たしかにこうして見てみると、なんとなく見慣れた風景が新鮮に感じられますよね。違った発見もあったりする。ですから、教室ではけっこうこれを教材に使う先生も多い。小学校時代から散々洗脳されてきて、それでいきなりこういう発想、視点の転換を迫られるので、案外教育的効果は高いのです。
 ちなみに北が上の地図が一般的になってのは、中世ヨーロッパあたりからです。そこにはいろいろな背景があるんですが、それは今回は割愛します。ぜひ調べてみてください。
 歴史的に見ますと、世界中のいろいろな地方で、さかさま地図や、横向き地図というのが作られました。その土地の人たちの生活イメージに即した地図が作られていたんですね。当然です。
 今でも、たとえば駅の南口を出た正面にある観光地図なんか、絶対に南が上になっています。これも当然ですね。逆だったら混乱します。
 カーナビの表示もそうです。常に北を上に表示することもできるんですが、あんまりそうしている人いませんよね。私の知りあいにはいますが、彼には「お前も相当近代教育に洗脳されてるな(笑)」と言ってやってます。いや、実は単純に脳の空間認知にいろんなタイプがあるようなんですけどね。
27_23 南が上の地図ということに関しては、我が山梨県はけっこう面白い傾向があります。なにしろ、富士山がありますから。左の甲斐国の古地図は富士山が上に描かれている、つまり南が上の地図です。こういう絵地図は純粋な空間表現ではないので、微妙と言えば微妙ですけど、これを逆に富士山を下に描くと、人間の感性的にはかなり不自然になります。もちろん、それこそ山梨県民のイメージであって、世界標準では下に描いても全然問題ないのかもしれませんけど。どうなんでしょう。
 で、山梨県の中でも特にここ富士北麓地方は特別ですよ〜。南にドカンと富士山がそびえ立ってますからね。ですから、富士山の斜面に住んでいる当地の人間は、やっぱり富士山が上というイメージで空間認識しているわけですよ。実際、南を「上(かみ・うえ)」と言い、北を「下(しも・した)」と言います。そして、南に行くことを「のぼる」と言います。北に行くのは「くだる」。
Map それで、今日学校の場所を示す地図をデザインしていて、普通に南を上にして描いている自分に気づいたわけですよ。右の地図を見てください。ちゃんと北が下を差していますよね。でも、これが自然なんです。これを逆に描くと地元民には実に分かりにくい。この地図にはありませんが、上に富士山がドカンとあるわけです。これが下だとすごく不自然だし、なんとなく申し訳ないような気がする。富士山の上に人間の街があるなんて変です。
 こういう文化的背景には、標高の高低と平面上の上下という物理的空間イメージの合致もありますし、富士山を祭り上げる心理的なイメージというのもあるわけですね。実に面白い。
 この地図なんかは地元民しか対象にしていませんけど、もしこの地図を見て他の地方の方が本校を訪れるとなると、なんとなく妙な感覚に襲われると思いますよ。
 私、静岡の出身なので、最初この富士北麓に引っ越してきた時は、実は思いっきり混乱しました。静岡で富士山に向かうというのは、基本的に北に進んでいるイメージがあったものですから。それを逆転させるのは大変でした。まるで、北半球から南半球に移住したような感じでしたね。もう、すっかり慣れちゃいましたけど。
 富士北麓地方のほかに、南を上に描く習慣のある土地というのはあるんでしょうか。ぜひ知りたいですね。我が町もそうだという方はお知らせください。
 ちなみに、富士急行線、河口湖から大月に向けて、思いっきり500メートルくらい下るのに、「上り線」ですし、その逆、一生懸命上ってるのに「下り線」です。それもまた面白い矛盾ですよね。

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