丹下健三+メンデルスゾーン=聖なる俗 その1
(ちょっと長くなるので2回に分けて書きますね)
すごい一日でした。ものすごい振幅。俗から聖へ。ものすごいカタルシスを味わいました。しかし、そこに存する聖なる俗の力にも感動。
今日はとにかく朝から異常に体調が悪く、めまいはするし、吐き気はするし、もうこれは絶対に霊的な何かです。病気ではありません。ここ数日ずっとそういう感じだったので、これは何かあるな(別に悪いことではありません)、と思っていたら、こういうオチだったとは…。
いろいろ忙しいさ中に、東京への出張が入ってしまいました。それもひょんなきっかけからでした。そして、それがこのオチを生むことになったわけで、やっぱり何か運命的なものがあったのでしょう。
実は今日10月2日の夜、メンデルスゾーンの演奏に誘われていたんです。東京カテドラルでの「パウロ」。これほど魅力的な機会はありません。しかし、仕事がてんやわんやしている上に平日ということで、涙をのんでお断りしました。
ところが、どういうわけか、ちょうどその日の夕方に新宿に出張になったじゃないですか(ちなみに「新宿に出張」という言葉、東京のビジネスマンには新鮮だそうな…笑)。というわけで、今回は演奏者としてではなく、聴衆としてカテドラルに行けることになったのです。
さあ、異常なめまいと悪寒に襲われながら、富士吉田駅のバスステーションから高速バスに乗りました。平日昼間の高速バスで東京に行くというのはなかなかない経験です。乗客はほんの数名。
なにしろ気分が悪いので、とにかく小一時間寝ていこうと思いましたが、その計画は全く予想外の展開に見事に打ち破られました。
私の後の後の席に若い男女4人組が座ったのですが、彼らの会話があまりに聞き捨てならない内容だったのです。寝ようにも眠れません。
というのはですね、ちょっと書くのも憚られるのですが、実はその4人さん、AVのお仕事をしているらしく、というか、富士吉田で撮影(?)があったようで、そのリアルな話をいろいろするんですよ〜。昨日のあれはこうだったとか、あれはこうでああやった方がいいのではとか、ビール飲みながら話してるんですよ。眠れるわけないじゃないですか!
いやあ、まいった。ますます体調は悪くなるし、なんとなく「俗」のエネルギーに気圧されちゃいまして、もうぐったり。いつもだったら、ちょっとラッキーとか思うのでしょうが(笑)、さすがにこういう体調の時はいけませんね。それこそ、昨日の話じゃないけど、まむしドリンクでも飲まないとダメです。
で、そんな具合の悪さ、妙な居心地の悪さにやられながら、新宿駅西口に到着しました。そして、まずは、医学部を目指して予備校に通っている教え子と落ち合って書類を渡したり、いろいろ進路について話したりしました。彼女も私の元気のなさに気づいたのではないでしょうか。
彼女と別れて、コンビニに寄り、リポビタンのちょっと高いヤツを飲みました。さすがにやばい。高層ビルが歪んで見える。
まず、2016年オリンピック開催地決定を今日に控えて緊張気味の都庁ビルへ。私はこちらに書いたとおり、この比較的新しい丹下健三作品のこと、結構好きなんです。特に第二本庁舎に入った瞬間のあの力学…いや気学的な混沌感というか、渦巻く感じが好きです。
私は建物というか、空間に体調を左右されやすい体質なので、ちょっとした期待も込めて都庁に入っていきました。めまいは止まりませんでしたが、しかし、その回転の質はたしかに変ったような気がしました。ま、それこそ「気」のせいなのでしょう。
都庁には15分ほどでお別れをしまして、お隣のNSビルの30階へ。先ほどいた都庁を眺めながらエレベーターで一気に昇ります。下から観ても、なんとなく愛嬌があるというか、威圧感のないデザインだと思いますが、横から観る都庁は、やっぱりカワイイかも。
30階の広大なスカイカンファレンスで研究会。前半は相変わらずの倦怠感でしたが、後半はお隣の都庁さんのおかげでしょうか、だいぶ調子がよくなってきました。
3時間近い勉強(実際ものすごく勉強になりました)を終え、急いで池袋経由で東京カテドラルへ。実は私初めてなんです。私と同い年のこの丹下作品に実際に会うのは。天候も悪かったので、到着した6時頃には、周囲はすっかり暗くなっていましたが、そのあまりに唐突な姿は、まさに東京の低い雲をつきさすようにそびえ立っていました。もうこの瞬間には、不思議なもので、体調の悪さも疲れもすっかり忘れてしまいました。
丹下健三を芸術家と呼ぶこと、あるいはそれ以前に建築を芸術と呼ぶことに抵抗のある方もいらっしゃるかもしれませんね。しかし、私は、こうしてその人の体や心や魂の調整を施してしまうモノこそ「芸」であり、「術」であると思うんですね。
都庁と東京カテドラル聖マリア大聖堂、とても同一人物の作品とは思えません。しかし、それは単に視覚的感覚であったり、そして、学術的な理論であったりするわけですね。今日の私は、そうした日常的な感覚が異常なほどに減退していたので、おかげで、本来の「芸術」的な部分を感じることができたのかもしれません。
そういう意味では、この出張、そしてAV関係の皆さん(笑)、全てが「運命」だったような気がします。
そして、この大聖堂の中で、もっとすごい経験が待っていたのでした。メンデルスゾーンのおかげで、私の魂は完全に浄化され、心身ともすこぶる元気になったのです。(その2につづく)
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