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2009.10.27

『日本を貶めた10人の売国政治家』 小林よしのり編 (幻冬舎新書)

34498130 は憂いの季節。いろんな意味で病んでいる人がたくさんいますねえ。なんというか、覚悟ができていないのに自分と向き合わなければならない、そういうタイミングなのでしょう、秋は。
 基本自分にこだわりを持っていないワタクシには、そのような憂いはございません。ウチのカミさんもそうらしく、この季節、我が家は駆け込み寺のような、あるいは教会のような、無料生活相談所のような、そんな様相になります。
 この本で語られる「国家論」や「政治論」や「人間論」も、ワタクシからしますと、まったく同じ次元の憂いに思えますね。みな、「自分」に思いっきり縛られ、その結果とってもさみしがり屋なことになっている。
 この激熱(ゲキアツ)な本は、そういう意味でとても面白かった。みな、壮大な論を唱えているように見えて、実はとっても「パーソナル」な次元にいる。まあ、それは一種のフラクタル構造であって、別になんの不思議もないのですが、しかし、言葉という「フィクション」を通してその真理を見せられると、なんとも人間の所業の空しさというか、ちっぽけな所でちょこまかしてるなと、そんな風にさえ思えるのでした。
 こんなことを書くと、それこそ「売国の徒」だと指弾されそうですね。くわばらくわばら。
 しかし、相変わらずアマノジャクであるワタクシからしますと、「売国」というその言葉自体が、とってもパーソナルな感覚に則っているものに思われます。
 すなわち、日銭を稼ぐために自らを売っていいのか、「売春」は是か非か、というような次元に感じるのです。それも社会的な次元ではなく、自分自身の生理的感覚に依拠している。だから、激熱になるし、ヤクザ言葉になるし、仲間とは徒党を組むし、開き直るんですね。
 昔は逆の立場の人たちがそうでした。左翼活動家のノリです。今は右、いやいや「保守」だな、保守がこうしてブームになり、商売になる時代になったのですね。感慨深いものがあります。
 自分という一点に立ってモノゴトを見ますと、表と裏しかなくなる。見える部分と、見えない部分しかありません。ワタクシの「モノ・コト論」で申しますと、まさに「モノ(自己の外部)」と「コト(自己の内部」というデジタル的に世界を二分することになります。
 それが「憂い」の元凶なんですよね。自分、つまり「コト」にこだわりすぎ、そして、他者、つまり「モノ」を愛するのを忘れてしまう。
 しかし、世の中はそんなに単純ではありません。二分してすむような、そんな人間にやさしい構造にはなっていません。
 だから、右派と左派、保守と革新なんていう古びた区分も見事に通用しなくなっています。昔はそれが成り立ちましたけれど、世の中も言葉も人の心もエントロピー増大則(すなわちそれがお釈迦様の悟った無常であるわけですが)に逆らえず、再びカオスな様相に還っていきます。
 民主党を見れば、それがよく分かります。あそこはある意味健全な原初状態です。右も左も保守も革新も資本主義も社会主義もごっちゃです。それを憂えることもできれば、また、それを喜ばしいと思うことも、そして面白がることもできます。
 この本でやり玉に上がっている「売国政治家」の名前を見るだけでもよく分かりますよね。もう自分の生理に合わない人間だったら、それがどこに属そうと、何派であろうと、こうしてランキングしてしまう。その基準であるところの「自己」が既に崩壊してカオスになっている証拠です。
 それでも人は、こうして敵を作って、相対的に自己の立ち位置を確認して、また、仲間どうし慰めあって、初めて「憂い」を脱することできる、いやできたような気がするのです。
 まだまだ、日本人は、いや人類は「悟り」からほど遠いですね(苦笑)。
 と、こんなレビューも珍しいでしょうが、私も実はいろいろあるんですよ。立場やら何やらね。一般的な感想はAmazonのレビューをどうぞ。
 で、私は結局、人類みんなを敵に回して、こうして自己の優位性を保とうとしているんでしょうか(笑)。

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コメント

今晩は。

少しご無沙汰です(^-^)

今は山々がキレイですね♪
特に今年の赤はキレイじゃありませんか!

先生宅の辺りはもう散り始めているのでしょうか(^w^)

「憂い」か…

私はようやく…
少しづつゆっくりですが…

自分自身を見つめ直し…改善しつつあるような……♪…笑


話しは変わりますが、今日の折込広告!!


おめでとうございます♪
いよいよですね(^∀^)


あの文章は先生が書いたのですか?
何となくそう思える文章でした!

ではまた~☆

投稿: ノリ | 2009.10.28 22:19

ノリよ、元気かな?
そう、今年は久々にきれいだね。
紅葉も自然界の憂いの色なんだよ。
憂いも悪いものじゃないね。
人生の彩りというわけだ。

折込み、たしかに私の文です!
さすがよく分かったね。
いよいよっていう感じ。
頑張るよ。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.10.28 22:29

やっぱしッ(*^o^*)♪

先生著だったのですね!!

本当いよいよですね☆

素敵な学校を創って下さい☆☆

お蔭様で私は元気です(^∀^)
日々を大切にゆったりと生きていきます

投稿: ノリ | 2009.10.29 00:49

バレたか!ww
まあ、頑張るよ。
なかなかこういう機会はないもんね。
将来ぜひ入学を!

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.10.29 17:00

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