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2009.09.12

『よみがえるビートルズ THE BEATLES Reborn』 (NHK)

20090913_100618 日はビートルズ・デーでした。まずは、深夜に放映されたNHKの「よみがえるビートルズ」の録画をじっくり鑑賞。そして、夜はたまたま近くで合宿をしていた「東京クラシカルシンガーズ」の宴会にお呼びいただいて、私の即興ピアノに乗せてビートルズの名曲をみんなで合唱いたしました。楽譜がなかったので、なんだかメチャクチャな伴奏になってしまいました。ゴメンナサイ。ま、楽譜があっても私の演奏はあんなものですけど。
 この番組はBBCとアップルの共同制作「THE BEATLES IN THE STUDIO」にNHKがちょっと手を加えたもののようでした。主に彼らのレコーディング風景とインタビューからなる内容でした。素材的には特に目新しいものをなかったとは言え、こうして改めて彼らの業績を凝縮して観て聴きますと、またまた新鮮な発見があるものです。
 私自身、彼らの活動中に生まれ、彼らに音楽の世界に引き込まれ、今こうして様々なジャンルの音楽を演奏するようになりました。そうした自己の音楽経験を積めば積むほど、彼らの偉大さを知ることになるんですよね。
 特に最近は、ヨーロッパ近代音楽の集大成としてのビートルズと、民族音楽の継承者としてのビートルズという両面からの発見が多いですね。
 ここ数年、仕事上1920年、30年の音楽を勉強することが多かったんです。最近ではガーシュインやラヴェルですね。彼らの音楽を知るとまたビートルズが違って聴こえてきますよ。
 ビートルズの強みの一つはあのコーラス・ワークだと思いますが、そこにラヴェルらが具現化した和声構造が見え隠れします。初期からそういう傾向がありますから、単純にジョージ・マーティンの入れ知恵だけではないと思います。
 おそらく彼らはイギリスという風土の中で、自然に民族音楽的なものと近現代ヨーロッパ音楽的なもの両方を体にしみ込ませていたとは思います。それを若さという「実験性」と「自由さ」によって見事に昇華していったのが、彼らの業績なんですね。
 彼らがコンサートを離れ、スタジオにこもっていくのは、まさにビートルズが多くの歴史的なヨーロッパの作曲家と同列に「作曲家」であったことの証拠となります。それは、グレン・グールドがスタジオにこもるのとは本質的に意味が違うのです。
 この番組での4人(+1)は、ロック・バンドではなく、明らかに一人の(一つの)作曲家でしたね。総体としての一作曲家。それもまた、音楽史において革命的なことでした。革命的かつ奇跡的。なぜなら、そういう革命が起きたのち、それを同レベルで継ぐ者どもは出現していないからです。あの時期にあの4人があそこに集まったことが、すなわち奇跡だったのです。
 ところで、宴会ではほかにも美空ひばりやら松田聖子やら、それからビリー・ジョエルとかカーペンターズとか、イギリス歌曲とかバッハとか、いろいろな音楽が入り乱れていたんですよ。でもやはり、その中で際立っていたのは、ビートルズでしたね。それぞれ優れた天才的作曲家の音楽であったわけですが、ビートルズの、伝統に則った革命性というのは、これは孤高です。大衆性や商業性という、芸術にとっての敵さえも取り込んで巻き込んで成長してしまったのですからすごいですよね。
 そんなとんでもないことを、彼らは20代でやらかして、そしてやり終えてしまったんです。大変なことです。自分の20代なんて、な〜んもありませんでしたからね。すごすぎますよ、彼らは。
 おそらく彼らと同レベルでの音楽的革命は、この後1000年はないでしょう。いや、もうないかもしれない。音楽の進化の可能性はもうほとんどないと考えられているからです。我々、音楽を聴き、感じる側に革命が起きないかぎり、たしかにそれは難しいでしょう。しかし、こちら側の革命の可能性もほとんどありません。なぜなら、それはたとえばたった4人の中で起きても意味がないからです。芸術は発信者よりも受信者の方が圧倒的に多くて初めて成立するものですから。世界中の人々の音楽的感性が同時に革命的に進化する可能性はほとんどゼロでしょう。
 今月の9日にリマスターCDか発売になりましたね。これを機会に私ももう一度ビートルズを全部聴き直してみようかと思っています。
 ずっと前に一度書きましたが、無人島に、いやあの世にたった一つ「音楽」を持っていくことが許されるとしたら、私はビートルズを選びますね。彼らの音楽には、人類の音楽史のエッセンスがたっぷり入っているからです。少なくとも、私が親しみ愛してきた西洋音楽の全てが凝縮されていることはたしかですから。

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コメント

恐らく版権がらみだと思うのですが、そこらがクリアされたのか、今まで公開されていなかった映像や資料が、これからどんどん出てくるとか。(すみません、不確かな情報で)リマスター CD もその一環なのでしょうか。

>無人島に、いやあの世にたった一つ「音楽」を持っていくことが許されるとしたら、私はビートルズを選びますね。

私にとっては難しい問題ですね。多分一つに絞り込むことが出来ないと思います。

投稿: LUKE | 2009.09.13 11:04

LUKEさん、やっぱりビートルズはすごいですね。
記事にも書いたように、彼らの音楽にはいろんな音楽の歴史が蓄積されてますから、彼らを持っていけば、ほかも思い出せるんですよ、私の場合は。
というか、あの世に行けばビートルズの二人がいるわけですし、いずれはみんなあっちに行くわけですから、持ってかなくてもいいのかも(笑)。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.09.13 21:59

こんにちは!いつも御活躍に拍手です!!notes

そんなに夢中でなくても、音楽が好きならある程度の彼らの曲を知ってるでしょうね。
私は最後のアルバムを当時1年遅れぐらいで買いました。確か中2でした。特に夢中ではなかったです。

団塊世代の隣のお兄さんのギター練習が毎日聞こえてきて(小学生の頃)、彼らがビートルズ派だとかローリングストーンズ派だとかと必ず話してる様子を知り、私ら世代は恐れ多くてとてもじゃないけど入りきれないと感じたものでした。(笑)
でもLPを買った理由は明らかに隣のお兄さんの影響でしょう。時間はかかりましたけど。おそらく小学生の頃毎日聞いていた音をふっと思いだしたのでしょう。

なんだか遠慮もあって?遠くで見ていた(聴いていた)といった様子です^○^)
だからそのあと追いバンドに夢中になったものです。
それでも一番好きな曲は”THE LONG AND WINDING ROAD”
です。ポール自身はあまりこの録音を気に入っていないようですが、私はLPのが好きですわ。

やはり近代音楽のすべてなのでしょうね。
簡単に言い過ぎ!(^^ゞ

投稿: あんりまー | 2009.09.13 22:25

あんりまーさん、こんにちは!
私ももしリアルタイムに彼らを体験していたら、ちょっと引いていたかもしれません。
私は第2世代でしょうかね。
小学校5年生の時、姉の影響で聴き始めました。
その後、中学では追いバンドの10CCやELOにはまったんです。
そしてクラシック(バロック)の世界に入って、あらためて彼らの偉大さに驚いたという感じでしょうかね。
今では神格化されていますけど、当時はそれなりに毀誉褒貶にまみれてたと思います。
まあ、そんなところも歴史的な作曲家の皆さんと同じですね。
とにかくすごいです。
つくづくビートルズ以降に生まれて幸せだと思います。
バッハもモーツァルトもショパンもラヴェルも彼らを知らないんですからね!
ちなみに私もフィル・スペクター版ロング〜大好きですよ。
けっこう神アレンジだと思いますし、あれに影響を受けた音楽家、とっても多いと思います。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.09.14 18:36

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