『新版・現代ヤクザのウラ知識』 溝口敦 (講談社+α文庫)
昨日の総合格闘技の問題も、やっぱりこれに絡んでるんですよね。あるいは秋田行きの記事に書いた様々な昭和文化、地方文化も。
もちろん、プロレスや歌謡曲の世界は、こちらの世界抜きには語れませんね。
これまでもずいぶん「ヤクザ」関係の本を読ませていただきました。そして、それなりに自説を語ってきたと思います。
バブルがはじけ、構造改革が進行し、そして、民主党政権になりました。もう、あの古き良き(あるいは悪しきとも言えるが)時代は戻ってこないのでしょうか。
そのかわりに、また違った「悪」がはびこり始めています。日本を支えてきた「モノ」がなくなり、代わりに海の外から別の「モノ」が流入しています。
いや、今流入してきただけではありません。もしかすると、縄文時代からかもしれない。徐福よりも前に流れてきたかもしれない。
しかし、そうした渡来の強力な勢力も、縄文の神々の巧みな懐柔策により、そのエネルギーをいい具合にそがれてきたのです。その象徴が天皇家の存在でありました。
デジタル的に二分できない、不思議なマージナルが日本を覆っていました。それが、そのまま世界のアジールになっていたのです。
そうしたアナログ的な構造の隙間を埋める「モノ」、そして、聖と俗をぐるっとつなぐ「モノ」。近代的な常識や法では解決できない「モノ」を退治する「モノ」。我々が悪に手を染めないように、間接的に我々を守っていた必要悪としての「モノ」。ロジック(コト)を超えられるのはある種の暴力性(モノ)しかありません。
そんな神聖な役目を担った俗人たちが、今本当に消えかかっています。悪党のいない世の中では、我々一般人が悪に手を染めます。あるいは政治家や金持ちが悪の道を突っ走ります。理由は簡単で、「カネ」が全ての価値基準になるからです。「カネ」は「悪神」のイコンです。
そんなヤクザさん、いやヤクザ様たちが、近年、つまりバブル崩壊後どのような生活の変化を強いられたかを、具体的をふんだんに交えて解説してくれるのが、この本です。
これを読みますと、たしかに大変になっただろうなあと、正直同情の念を禁じ得ません。アメリカからの圧力なのか分かりませんが、暴力団対策法が施行されてからというもの、とにかくヤクザさんの生活は厳しくなりました。それまで、そうですねえ、長く考えて2000年くらい続いてきた日本の伝統文化が崩壊したんですね。ある意味バブルの崩壊やベルリンの壁の崩壊よりも大きな崩壊でした。
もともとが目に見えない存在価値でしたから、しばらくはその影響も目に見えませんでした。いや、今でも目に見えないのかもしれませんね。「モノ」や「もののけ」は、基本的に、我々の意識や思考や経験の外部にあります。我々はただその気配を感じるだけです。その気配はたしかに恐ろしいものです。それはそうですね、得体の知れないモノほど恐いものはない。
その気配が消えたわけですから、我々は一時期安心してしまったんですよ。それで、自らの「性悪(せいあく・しょうわる)」な部分が芽生え始めてしまった。また、そのもののけの気配に恐れおののいていた外国の悪神たちも、すんなりこの国に入ってこれるようになってしまった。
その結果が、こういう世の中です。そして、ついに民主党政権が樹立しました。そういう流れですよ。
鳩山内閣成立の記事にも書きましたね。これは明治維新ところではない、とんでもない霊権交代劇なのかもしれません。
決して私は右翼でも単純なヤクザファンでも昭和懐古主義者でもありません。ただ、基本的に、長年かけて作り上げられ、誰も手をつけられなかった「構造」は「改革」してはいけないと思っているだけです。そういう大切な「構造」こそ、目に見えず、また実にもろいものなのです。だからこそ、特別の任を得たモノだけが、それを守ることができた。私たちにとっては踏み込んではならない禁足地だったのです。
では、これからどうすればいいのか。歴史は逆戻りできません。復活の見込みのない「日本」の「構造」に見切りをつけて、全く新しい発想で、「世界」の「構造」を作り直さねばならないのでしょうか。
なんか話が壮大になってしまいました(笑)。実は今日、そちらの世界に近い方と、しみじみ語ってしまったんですよ。だからものすごくセンチメンタルになってるんです。仁義とは実にセンチメンタルなものなのでした。
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